「ラブラブパラレル」  
−戯言遣いと弟子−  
 
 
ここは家賃一万円の安アパート。  
風呂無し、トイレ共同、まるで骨董品のようだ。府の条例により保護されるべきだろうとさえ思わせる。  
その一階の一室、今ぼくは紫木一姫の部屋にいる。  
「うー、こんなのわかんないですよ〜」  
姫ちゃんが唸る。  
「だいたいなんで、保健体育なんてテストするですか?まったく意味深です」  
意味深?ちょっと違うような気が……。  
「姫ちゃん…意味深なら良いんだけどね」  
そこは、意味不明が正しい。  
もっともこの言葉も正しい日本語なのかどうか、現代っ子のぼくには分からないけどね。(まったく戯言だ)。  
「姫ちゃんは五教科が悪いんだから、他のところで少しでも良い点取らないと」  
そのとおりだった、このままじゃ進級が危うい。  
「それは、分かってますけどですねー」  
不満そうに口を尖らす姫ちゃん。まったくこの娘は……。  
「はい、はい、分かってるならすぐやる!」家庭教師を気取って少し強めに言う。  
「はーいですよ」  
しぶしぶ机に向かって再び勉強を始める。そんな姫ちゃんを家庭教師のように見守るぼく。  
もうすっかりおなじみの光景だ。  
 
二時間後やっとテストの範囲が一通り終わったようだ。腕を伸ばし体をほぐす。  
「ふいーん。やっと終わったですよ…」  
憔悴しきった感じで言う姫ちゃん。  
「姫ちゃん、お疲れ」ぼくは、姫ちゃんの肩を揉む。  
その途端。  
「ひゃん!師匠!何してるですか!」  
びくっ、と体を跳ねさせ素早い動作で反転させる。まったく見事な体捌きだ。  
「何って…ただ肩を揉もうと…」  
「嘘です!絶対今、姫ちゃんに、いやらしいことしようとしたですよ」  
ひどい誤解だった。しかし姫ちゃん自分からはよく飛び付いてきたりするのに、他人に触られるのを極端に嫌うな。変なところで潔癖だった。  
「違うよ、ホントに肩を揉もうとしただけ」  
弁解するぼく  
「ホントにホントですか?」  
「ホントにホント」  
「ホントにホントでホントですか?」  
「ホントにホントでホント」  
「ホントにホントでホントがホントですか?」  
「ホントにホントでホントがホントはホントだよ」  
「一つ多いです」  
「うっ…」  
しつこいうえに細かい娘だった。  
「まあ、いいです。許してあげますよ」  
そう言って、椅子に座る姫ちゃん。教科書をパラパラとめくり最後の見直しを始めたようだ。  
ここでさっきの復讐を思い付く。  
 
「姫ちゃん、教科書はただ目で読むだけじゃなくて、声にだして読むとよく頭に入るよ」  
これは本当。  
「おおっ!これは良いこと聞いたですよ。早速やってみます」  
年頃の女子高生に保健体育の教科書を音読させる。それは立派なセクハラだった。  
「えーと、性的刺激を受けると、脳に性感がおこり陰茎は勃起する…って!!」  
おお、一文全部読み終えてから反応するか。姫ちゃん意外と鈍かったり。  
「師匠、陰茎って何のことですか?」  
「そっちかよ!」  
思わず声を出して突っ込んでしまった。  
「?」  
キョトンとする姫ちゃん。しかしこれは新たなセクハラを敢行するチャンスだ。  
「陰茎っていうのはね姫ちゃん、男の人のおちんちんのことなんだよ」  
姫ちゃんは一瞬虚空を見上げるようにしてから。  
「お、おちんちんですとー」  
と叫んだ。  
良し!狙い通り。  
「し、師匠はそんな八連コンボなものを、姫ちゃんに読ませたですか」  
痛そうだな、それは。「そうだよ、姫ちゃんはそんな破廉恥なものを声に出して読んじゃったんだよ。いやらしい娘だなー」  
姫ちゃんをいぢめるぼく。  
 
「……う」  
姫ちゃんは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしてる。  
「まったく…もうお嫁にはいけないね。きっと姫ちゃんの好きな人にも嫌われちゃうよ」  
さらに畳み掛ける。その言葉を聞いた瞬間、姫ちゃんはびくっと体を揺らした。  
「う、う、ううううう〜」  
あれ?  
これはまさか……。  
「う〜、う〜、うううう……えぐ、うぐっ」  
マジ泣きですか?  
「…………」  
まずい、少し調子に乗り過ぎたか。  
「えっと、あのー……わっ!」  
ぼくが謝罪の言葉を述べようとした時、姫ちゃんがいきなり抱き着いてきた。  
「うぐっ……うぐ、師匠、ちっ、違うですよ〜、姫ちゃんそんないやらしい娘じゃないですよ!だから…だから姫ちゃんのこと嫌いにならないでください」  
……どういうこと?つまり姫ちゃんが好きな人っていうのは…  
ここまではっきり言われちゃあ、いくら鈍感を決め込んでるぼくでも、気付かずにはいられない。  
「姫ちゃんが好きな人って…ぼくのことだったの?」  
姫ちゃんは縋り付くような目でぼくを見上げる。  
「そうですよ、姫ちゃんは……わたしは、師匠のこと、好きなんです。師匠のこと、本当に、すごく、好きです。だから…だからわたしのこと嫌いにならないでください。  
好きになってなんて言わないですから、付き合ってなんて言わないですから…このままでいいですから。お願いです、お願いです…………」  
姫ちゃんは泣きながら震えながら言葉を繰り返す。姫ちゃん…君は本当に。  
 
「姫ちゃん…ぼくも姫ちゃんのことすごく好きだよ」  
「本当ですか?」  
上目使いで震えながらぼくを見る姫ちゃん。  
本当にこの娘には何かしてあげたくなる。  
「本当だよ、その証拠に…」  
ぼくは姫ちゃんの唇にやさしくキスをした。「あっ…」  
驚く姫ちゃん。  
「嫌いならこんなことしないよ」  
「師匠〜、姫ちゃん嬉しいです」  
微笑む姫ちゃん。もう姫ちゃんってば可愛過ぎ!  
ぼくは、こんな姫ちゃんに何をしてあげられるだろうか?  
決まってる。単純だ。その答えはひどく簡単だ。  
しかしぼくにそれができるのか?  
どうしようもない欠陥製品であるこのぼくに……。  
でも今は、ぼくは姫ちゃんのことを……。  
「姫ちゃんが良いならこの続きもしてあげるよ」  
姫ちゃんは首を傾げる。  
「続きってどういうことですか?」  
「キスの続きだよ、姫ちゃんが気持ち良くなるようなこと」  
姫ちゃんは少し考えてから頬を紅くして答える。  
「えーと、それはつまりラブなことですですか」  
ちょっと難易度が高いな、まあそれでも通じるけど。  
「そうだよ、平たく言うとえろいこと。どう、してみない?それともぼくとじゃ嫌かい?」  
ぶんぶんと首を激しく横に振る姫ちゃん。  
「全然嫌じゃないですよ。姫ちゃん、師匠とえろいことしたいです」  
ぼくはそんな姫ちゃんの頭を撫でながら言う。  
「よし、よし。じゃあベッドに行こうか」  
姫ちゃんの軽い体を、お姫様だっこしてベッドへと運ぼうとする。  
「ひゃっ!」  
姫ちゃんは変な声を出した。  
可愛いぬいぐるみなどが配置された女の子らしいベッド。そこに姫ちゃんをゆっくりと降ろす。  
 
姫ちゃんは可愛い模様が付いた布団の上に肢体を広げている。その上に覆いかぶさるようにして、まずはキス。  
さっきとは違い、長く深いディープキス。  
「はぁん…んっ!あ、…ふぅ」  
姫ちゃんの甘い吐息が零れる。  
「じゃあ、まずその邪魔な制服を脱がしちゃおうかな」  
ぼくが姫ちゃんの上着をたくしあげようと手を伸ばす。  
姫ちゃんの体は震えていた。  
「どうしたの姫ちゃん?やっぱり嫌なの?」姫ちゃんは激しく首を振る。  
「嫌じゃないです、姫ちゃん、師匠とこんなことできるなんて夢のようですよ…」  
姫ちゃんの顔を見る。その瞳には涙が浮かんでいる。  
「でも……怖いんですよ」  
顔を背ける姫ちゃん。「怖い?姫ちゃんは初めてなのかな?大丈夫だよぼくがうまく…」  
「違うですよ!」  
ぼくの言葉を遮って叫ぶ。  
「初めてなら、どんなによかったか…姫ちゃん全然初めてなんかじゃないんですよ!」  
涙を流しながら怒鳴る。  
「ひ、め、ちゃん?」  
混乱するぼく。  
「潤さんから聞いてないですか?潤さんと遊馬さんが助けてくれるまで姫ちゃんが何をされていたか…」  
姫ちゃんがされていたこと、前頭葉の言語野にある後天的な障害の理由。  
「姫ちゃんは、姫ちゃんは…昔何回も、何回も犯されたんですよ!それも、好きでもない男に!しかも一人じゃなくて何人にもです」  
絶句するぼく。ある程度は予測していたが、やはり本人の口から聞くのは、ショックだった。悲痛な顔で続ける姫ちゃん。  
「ものすごく痛くて、全然気持ち良くなんてなくて、でも泣くと殴られて…すごく怖くて…怖くて…」  
「姫ちゃん!もういいよ!」  
堪え難くなってぼくは叫ぶ。  
「大丈夫だと思ってたですよ…大好きな師匠なら、でも…やっぱりいざとなったら怖くて、怖くて…」  
もう最後の方は言葉にもならなかった。  
「もういいって!」  
もう一度叫ぶ。  
「よくないです!姫ちゃんこんなに師匠のこと好きなのに、姫ちゃんの処女を捧げたいのに、それもできないんですよ…こんな、汚れて………それに、それに…」  
息も絶え絶えに言葉をつむぐ。  
 
「姫ちゃんは…師匠が大嫌いな…」  
ぼくは姫ちゃんの言葉を遮るようにきつく抱き締めた。きつく、細い体が折れそうになるほど。  
「あっ………」  
ぼくがもし一言、姫ちゃんを傷つけることを言えば、この娘は簡単に壊れるだろう。  
こんな可憐な少女をぼくは壊すのか?  
六年前の玖渚のように壊すのか?  
なんだ、何を考えてるんだぼくは。  
やり直さなきゃ、もう一度、今度はうまく、しなくっちゃ。  
もう一度?今度?  
なんだ、何を考えてるんだぼくは。  
姫ちゃんは玖渚の代用品なんかじゃない。  
わかってる。  
わかってる。  
わかってる?  
ぼくは、ぼくは、姫ちゃんを……。  
「姫ちゃん。愛してるよ」  
その言葉を口にしてみた。感情は込めたつもり。  
「えっ!師匠、今なんて…」  
戸惑う姫ちゃん、当然だこのぼくが愛してるなんて言うとは。  
でも本当なんだよ姫ちゃん。ぼくは本当に君のことを………。  
「一姫、愛してる、この世界の誰よりも愛してる。」  
姫ちゃんはやっとここでにっこりと、あの笑顔を見せてくれた。  
「…わたしも師匠のこと愛してます」  
愛し合う二人、その前ではもう何も邪魔できない。  
「一姫、愛がないセックスなんてセックスなんかじゃない。だから一姫の処女はぼくがもらうよ」  
いったい何年前の少女漫画の台詞だよ。  
まったく戯言もいいところだ。  
でも、いいさ。たまにはぼくの戯言だって役に立つ……はず。  
 
制服に手をかけ、たくしあげる。ファンシーなブラジャーが見える。  
「一姫、絶対ぼくが気持ち良くしてあげるからね」  
姫ちゃんはコクンと、頷いた。  
「師匠〜、愛してますよ」  
姫ちゃんのブラジャーのホックをはずす。ちっちゃいけれど形の良い乳房、その上にはピンクの可愛い乳首かのっている。  
ぼくは姫ちゃんのおっぱいをやさしく揉みしだく。  
「あんっ!はぁ…」  
姫ちゃんの可愛い喘ぎ声。ぼくはたまらなくなり乳首にむしゃぶりつく。ぴちゃぴちゃと音をたて、いやらしく乳首を愛撫する。  
「ひゃんっ!師匠、おっぱい、気持ち良いですよ〜」  
姫ちゃんはくすぐったそうに身をよじる。  
ぼくは姫ちゃんの足へと愛撫の場所を移す。足首からふとももへと舌を這わせる。スカートをめくり姫ちゃんのパンティーに手をかける。  
「さあ一姫、これも脱いじゃおうか?」  
姫ちゃんは恥ずかしそうに頬を紅く染めている。  
「はい………師匠、脱がせてください」  
ぼくは姫ちゃんのパンティーをずりおろし、片足だけに掛かっている状態にする。  
姫ちゃんの秘部を観る。ほとんど毛は生えていない。一部のその手の趣味の人にはたまらないだろう。  
「一姫のここ、とっても綺麗だよ」  
本当に綺麗だった。処女のようなピンク色。  
 
「師匠〜、恥ずかしいですよ。………師匠も服脱いでください」  
ぼくは手早く着ていたものを脱ぐ。  
「わっ!師匠のすごくおっきぃですよ。姫ちゃんのにちゃんと挿入るですかねー」  
ぼくのはすでに大きく勃起しビクン、ビクンと脈を拍っている。  
「大丈夫だよ。こうしてしっかり濡らせば………」  
姫ちゃんの秘部に顔を近づけ愛撫する。  
「ああんっ!しっ、師匠〜はぁん、くっ、はぁ」  
舌でクリトリスを刺激し、指でワギナを掻き回す…が、なかなか指が入っていかない。人差し指一本でも、ギチギチだ。  
しかしもうワギナはぐしょぐしょに濡れていた。  
「ししょ〜、きて!姫ちゃんの膣内にきてくださいです〜」  
ぼくももう我慢の限界だった。  
「挿入れるよ、一姫!」  
ぼくは姫ちゃんのワギナを挿入れやすいように指で開き、ペニスを押し当てていく。  
「つぅっ!あくっ!…んんっ…んくっ!」  
姫ちゃんの痛そうな声。ペニスは姫ちゃんのワギナをミリミリと裂きながらゆっくりと入っていく。  
「くうっ!一姫、ちょっと力抜いて!ち、ちぎれそうだよ」  
姫ちゃんの膣内はすごい勢いでぼくのペニスを締め付ける。  
「そ、そんなこと言われても困るですよ〜、姫ちゃんも痛いんっ、で、ですから〜」  
姫ちゃんは大粒の涙を零している  
まずい!このままじゃセックスを楽しむどころじゃない。  
こういう時は基本に戻って、まず………。  
 
ぼくは姫ちゃんの唇を自分の唇で覆い、舌を入れようとする。  
姫ちゃんもそれに応じ口を開け舌を出してきた。二人の舌がいやらしく絡み合う。さらにちっちゃな胸を愛撫する。  
「ん…なっ、なんだかはぁん、あっ、あ!」  
だんだんと膣内のほうもぼくを受け入れ始めてきた。さらに愛液の分泌が増え、ぬるぬるとちょうどいい具合になってくる。  
それでも締め付けはきつく、まさに幼い名器といった感じだ。  
「はぁ…一姫の膣内すごく気持ち良いよ」  
本当に、本当にすごく気持ちが良かった。  
「はぁん…姫ちゃんも気持ち良くなってきたですよ」  
姫ちゃんはトロンとした目でぼくを見る。  
ぼくの加虐心がくすぐられる。  
「今、一姫のどこにぼくのナニが入ってるのかな?」  
意地悪な風に聞いてみる。  
「ふわっ!そ、それはですね〜」  
恥ずかしそうにする姫ちゃん。ぼくの背筋がゾクゾクした。  
「言わないと抜いちゃうよ」  
焦る姫ちゃん。  
「ちょっ!待ってくださいよ〜!今、言いますから…」  
急かすぼく。  
「ほら、早く」  
もじもじとしながら姫ちゃんは言う。  
「…姫ちゃんの、お…おまん、こに師匠の大きい、おちんちんが入ってるですよ〜」  
おお、ちゃんと言えたね。偉いぞ姫ちゃん。これはご褒美をあげないとね。  
 
姫ちゃんの頭を撫でる。  
「よし、よし。よく言えたね。ご褒美をあげるよ」  
ぼくは激しいピストン運動を開始する。  
「あっ!し、師匠〜。はぁん、激し過ぎますですよ〜」  
姫ちゃんの胸を鷲掴みにして激しく腰を振る。グチャグチャといっそういやらしい音が部屋中に響く。  
「一姫、気持ちいいだろ?」  
激しい動きで姫ちゃんのツインリボンがふさふさと揺れる。  
「ふわわっ〜、そ、そんな激しくされたら姫ちゃんもう………イッちゃいそうですよ〜」  
ぼくも限界がせまってきた。  
「くぅっ!もう射精そうだ。抜くよ」  
ぼくはペニスを抜こうと腰を引く。  
…………あれ。  
おかしいな……抜けない。  
ふと見ると、ぼく達の周りにキラキラとひかる極細の糸が巻き付いている。  
「…って、姫ちゃん!」  
あわてて叫ぶぼく。  
まずい、もう射精てしまいそうだ。  
「ぬ、抜いたらやーですよ師匠〜。んっ!姫ちゃんの膣内に、いっぱいだ、射精してくださいです、よ…」  
おい、おい。ちょっと待てよ。そんなことしたら……。  
「赤ちゃんできちゃうって!ほら早くほどいて」  
やばい!マジで射精ます。正気が…  
「はぁんっ、いいんですよ。ひ、姫ちゃん師匠の赤ちゃんほしいです。ほら早く射精してください!も、もう姫ちゃんもイキそうですよっ…あっ!」  
ええい!もうどうにでもなれ。  
ぼくは姫ちゃんの奥へとペニスを進めた。  
姫ちゃんの体がビクッ、ビクッと痙攣したようになる。  
「あぁん!姫ちゃんもうイクですよ〜、イクッ!」  
ぼくも限界だった。  
「射精すよ!一姫!」  
ぼくのペニスは姫ちゃんの膣内で勢い良く跳ね回り、彼女の膣内を白い液体で埋めてゆく。  
それと同時に姫ちゃんは潮を吹いた。  
 
とりあえず終わったので、姫ちゃんに糸をほどいてもらいペニスを引き抜き、ベッドの縁に腰掛ける。  
「はぁ、はぁ、…姫ちゃん師匠にイかされちゃったです」  
疲れきった様子で言う姫ちゃん  
「ぼくも、姫ちゃんの膣内で射精しちゃった…」  
激しい後悔の念が襲ってくる。  
膣内射精…学生にとっては禁忌中の禁忌。しかも相手は女子高生……これってひょっとして犯罪ですか?  
いや大丈夫。ぼくまだ未成年だし、金銭の伴わない互いの了承あっての性行為だから………。  
たしか民法によれば…いや刑法かな?十三歳以上の………。  
「師匠?」  
姫ちゃんの声でぼくの現実逃避は終わりをむかえた。  
「な、何かな姫ちゃん」  
ぎぎぎぎっ。  
堅い首を姫ちゃんの方へと捻る。  
いったい今、ぼくはどんな顔をしているだろうか?  
「ひょっとして姫ちゃんとしたこと後悔してるですか?」  
ぼくは手を振って否定する。  
「いや…違うんだ。姫ちゃんが、とかそういうんじゃなくてね。膣内射精した自分が、ちょっとね…」  
姫ちゃんは微笑を浮かべた。  
「師匠…姫ちゃんの、こと大事に思ってくれてるんですね」  
「そりゃ…可愛い弟子だからね」  
今さっき性交わった娘に言う言葉ではないよな。それでも姫ちゃんは今度は満面の笑みを浮かべて  
「いいですよ、今は弟子でも。いつか師匠のこと姫ちゃんの農奴にしてあげます」  
そう、そう。ぼくは姫ちゃんの畑を必死に耕す、しがない農奴でございます………。  
まずいな、まだショックから立ち直れていないらしい。  
「姫ちゃん、種類が違うよ。恋奴隷ね」  
突っ込む声にも力が無い。性奴隷の方が的確だったかな?まあどっちにせよ酷い話だ。  
 
「とにかく今日はここまでで終わりね。また何かあると困るから、ぼくは自分の部屋に戻るよ」  
ベッドから起き上がりそそくさと服を着る。  
「んじゃあ…」  
「待ってください」  
部屋から出ようとした時、声をかけられた。  
「何?」  
振り向くと姫ちゃんは上半身だけ起こし、こっちを見ていた。  
ちょっと姫ちゃん早く服を着なさい。ちっちゃな膨らみが見えてるって。  
「最後に…キスして欲しいですよ」  
これまた女の子らしい発言で。  
ぼくは姫ちゃんに近づいて行き、そっとキスをした。  
やわらかなほっぺたに  
「…ほっぺですか」  
姫ちゃんちょっと不満そう。  
「口にしたらキスだけじゃすまなそうだし」  
「むむっ!作戦失敗です。舌をいれて掻き回してさらに縛り上げて、そのまま二回戦に突入するプランだったんですけどねー。案外勘の良いやつです」  
本当に悔しそうだ。  
「まあね、ぼくは十枚の籤の中の二枚の当たり籤を、連続で引けば四十五回に一回は両方当たりをひくからね」  
「おおっ!それはたいした勘の良さです」  
……姫ちゃん、明日は数学を勉強しようね。  
「じゃあまた明日」  
ぼくは姫ちゃんの部屋から自分の部屋までの短い道程を、重い足を引きずって歩くのでした。  
部屋の前まで来てふぅーっと息を吐く。  
取りあえず少しは気分も落ち着いた。  
今日はもう寝てしまおう。そう思い部屋のドアを開けた。  
 
…………。  
今日はもう寝れないかもしれない。  
むしろ永遠の眠りに就けるかもしれない。  
狂ったように真っ赤なスーツに身をつつんだ人類最強の請負人が、そこにいた。  
 
「よう、いーたん」  
哀川さんは例のシニカルな笑みを浮かべて、部屋の真ん中に鎮座していた。  
「来てたんですか、哀川さん」  
どうやって鍵が掛かっている部屋に?などと野暮なことは聞かない。  
「あたしのことは名字で呼ぶな。あたしを名字で呼ぶのは《敵》だけだ。もっとも……」  
ここで哀川さんはいやらしい笑みを浮かべた。  
「あたしの可愛い一姫を犯したお前は、もはや敵か?」  
ゾクリとした。  
「潤、さん…」  
まるで銃口を頭に突き付けられているような重圧、背中には気持ち悪い汗が流れる。  
「…………」  
「あっはっは!そんな顔すんなよ。冗談だ、冗談。どうやら一姫の方が望んだみたいだしな」  
「趣味悪いですよ……って、聞いてたんですか!」  
盗み聞きとは、本当に趣味が悪い。まったくこの人は……。  
「おい、おい。盗み聞きなんて人聞きの悪いことを言うなよ」  
あれ?  
それは言ったっけか?  
「たまたま姫っちの部屋に行ったら、お前らの声が聞こえてきてさ。んで、そのまま終わるまで聞いてた」  
「やっぱ盗み聞きじゃねーかよ!」  
「こんな壁が薄い安アパートで、大声を出すお前らが悪い。……しかしお前が一姫を抱くとはな、驚いた」  
 
「ぼくもあそこまでやるつもりは、無かったんですけどね。姫ちゃんの昔の話とか聞いてたらなんとなくね……」  
「ああ、あの何人もの男に犯されたってやつか。ありゃ……」  
「嘘、でしょ」  
「なんだ知ってたのか。いやでも、酷い虐待をされてたのは本当なんだけどな。あたし達が助けてなきゃ性的虐待も受けてたかもな」  
「初めはあの演技力に騙されましたけどね。姫ちゃんの反応は思いっきり処女のそれでしたからね」  
いくらなんでも処女でなければ、あの締め付けはありえない。ちなみに姫ちゃんの演技に騙されるのは二回目。まったくこのぼくは進歩が無い。  
「しかし分かっていても抱くとはな…いーたん一姫に惚れでもしたのか?うにー、いーちゃん浮気するとは非道いんだなー」  
得意の声帯模写。  
「やめてください。別に玖渚とは、そんなんじゃないですよ……それに姫ちゃんも、ぼくはただ彼女の望みに応えてあげただけです」  
「卑怯だな」  
「自覚してます」  
「ふーん……どうだかね」  
ここでぼくはある疑問を口にしてみる。  
「しかし姫ちゃんはなんで、そんなすぐばれる嘘をついたんですかね?」  
「あん?それはお前が一番よく解ってんだろ」  
姫ちゃんが嘘をついた理由。ばれると分かっている嘘をついた理由。  
それは………。  
「解りませんよ……」  
「嘘つき」  
「それも自覚してます」  
 
「……まあいいや。じゃ、今度はあたしとやるか?」  
「へっ!」  
「セックスだよ」  
「それは解ってますけど……冗談ですよね?」  
「いや割と本気」  
「勘弁して下さい」  
本当に勘弁して欲しかった。  
「わ!いっくんてば女の子に恥かかせる気!《据え膳食わぬは男の恥、ただし相手は人類最強》みたいなっ!」  
「ネタになってねーよ!」  
巫女子ちゃんに謝れ。  
「ははっ。まあ今日のところはいーたんも疲れてるだろうから、見逃してやるよ」  
「……ありがとうございます」  
「それに一姫に避妊処置してやらにゃーなんねーしな。ん、じゃあねーん」  
哀川さんは好き勝手言うと出て行ってしまった。ていうか避妊処置って……そこまで守備範囲か請負人。ぼくとしてはラッキーな事だけど。  
しかし不吉な事に「今日のところは」とか言ってたな………。  
 
ぼくの運命はいったいどうなるのだろう。  
 
 
《ZigZag Love》 is HAPPY END?  
 

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