僕(病院坂黒猫)は渡された原稿を後部座席に投げ捨てた。本当なら窓から投げ捨てたいところだが、誰かに拾われたら面倒だから我慢する。
この世の中で僕がどうしても我慢できないは、だだひとつ。それは『わからないこと』だ。
どうして笛吹が自分の娘を小説に登場させることにして、しかもこんな描き方をしたのか僕にはまったく理解できないし、理解できないことがあると、いっそ死んでしまいたくなるが、こんな男のために死ぬのはごめんだ。
隣から感想を求める声が聞こえてくるが、勿論完全に黙殺する。
ここはロンドンではなく日本で、まだ僕が高校を卒業するまでまるまる1年あり、旅の同行者は笛吹だ。従妹の迷路ちゃんが中学に入学するので、お祝いを兼ねて遊びにきたのだが、その車中で暇潰しにと自作の原稿を渡された。
確かに暇は潰れたが、気分は悪い。
それとも、これは卒業までに好きな男を作ったら記念に海外旅行をプレゼントしてやろうという言外の意味が含まれているのか? いや、笛吹はそこまで気の利いた男でも父親でもない。
実のところ僕は迷路ちゃんが『静かなる人払い令』という二つ名は聞いていても、それがどんなものかは知らなかった。
あまり親戚付き合いに積極的な方でもないからな。わざわざ入学祝いを持って行くという笛吹と一緒に来たのは、それがどのようなものか確認するのが目的の大半だったが、客間に通されて笛吹が携帯電話より少し長めの箱を差し出したことにより判明した。
迷路ちゃんはとても表情が豊かだった。伯父様、どうもありがとうございます、というような嬉しそうな表情だった。
ところが中身を開けてみると表情が曇る。伯父様、ありがとうございます、とお礼を言うように笑って見せたが、さっきまでの喜んでいた顔が一変したのは誰の目にも明らかだった。
この場合、悪いのは笛吹とはっきり決まっている。中学生になったばかりの女の子に万年筆を送って感謝されるわけがない。しかも軸が太いオヤジ臭さ溢れる一品だ。
笛吹は無職の小説家志望だからか、万年筆が世界最高の文房具と信じているようだった。
だから、誰だって高級な万年筆を貰えば大喜びするはずだと疑わない。自分だって小説を書くときパソコンを使ってるのに。
しかし、世の中には本音と建前があって、親戚からお祝いをもらったときには内心どう思っていたとしても、感謝しているふりをしなければならない。どうも迷路ちゃんはあまりにも表情が豊か過ぎるせいで周囲の人間を遠ざけてしまっているようだ。
口で嘘をつくのは簡単。だが、表情で嘘をつこうとすれば、それは女優というひとつの職業になりうるほどの技術がいる。
さすがに笛吹も迷路ちゃんの表情を理解したようで、気まずい雰囲気になった。自分でやらかしたことなのだから、さっさと事態を収拾すべきなのに、それもできないでいる。
「迷路ちゃんと遊んでてもいいだろうか?」
部屋の中に漂う冷たい空気に耐え切れなくなって、僕は迷路ちゃんを誘ってみた。
それでは私の部屋にきましょう。迷路ちゃんはそんな意志を孕んだ視線を廊下の方に向けた。
「さて、遊ぼうと自分の方から誘っておいて、いかにも無責任だが中学生になったばかりの女の子と何をして遊んだらいいのだろうね。いやいや、この年齢で4歳の年の差は大きいよ。
それに僕は友達がいないから同年代の女の子と一緒に遊ぶ機会すらないしね」
迷路ちゃんの部屋は普通に女の子らしい部屋だった。もっとも、同年代の女の子の部屋に遊びにいくこともないのだから、あまり当てにはならないかもしれないが。
ただし壁にはハンガーでぶらさがっている学ランを除いてだ。しかも、その学ランが昭和の番長みたいな長ランなのだ。部屋に入ってすぐにそれに気づき、おいおい迷路ちゃん、まさかこんなものを着て学校にいくんじゃないだろうなと引きかけた。
いま着ている私服は白いセーターにデニムのミニスカートという、地味ではあるがそれなりに女の子らしい格好をしている。
友達がいないということなら私の方が上かもしれません。ですから、そんなお気遣いは無用にしてください。というような視線で迷路ちゃんは僕を見て、その目を学習机の脇にある将棋盤に向けた。
学ランほどではないが、これもあまり女の子の部屋に似つかわしいものではないな。
「迷路ちゃんは将棋を指せるのかい? しかし、頭を使うことで僕に勝てる人はまずいないから、遊ぶというより、いじめみたいな感じになってしまうかもしれないよ? 僕は手加減というものが苦手でね」
よほど自信があるんですね、しかし、ご心配なく。それほど下手ではありません、迷路ちゃんはそんなふうに自信ありげな表情を作った。
第一戦はなかなか接戦になり僅差で僕が勝った。もちろん、そうなるように演じたわけで、上手に年下の従妹と遊んであげることができたのだと思う。
しかし、せっかくの僕の気遣いもかえって逆効果だったようだ。迷路ちゃんは怒っていた。手抜きはいけませんと厳しい顔をする。自分が表情豊かなだけでなく、他人の表情を読むのも得意らしい。
「どうしたら納得してくれるのかな? 例えば勝者は何かもらえるとか、敗者には罰ゲームがあるとか、そういう形ならわかりやすいと思うのだが、あいにく景品にできそうなものはないな」
ここに高級万年筆がありますけど、と笛吹にさきほどもらった箱を差し出すことで、そう言うのに代えた。
「即座に却下させてもらう」
そうですね、せっかく伯父様からいただいたものですから、ゲームの景品にしては申し訳ありませんと言うように迷路ちゃんはちょっと頭を下げて箱を引っ込めた。
素直な娘なんだな。笛吹の万年筆は景品ではなく罰ゲームという意味だったのだが。それとも、一種の皮肉だったのか。
それなら罰ゲームにしましょう。負けた方が勝った方の言うことを一つだけきくということで、どうでしょうか? というような勝ち気な表情で迷路ちゃんは僕を見た。
「どうだろうね。僕が勝つとわかってるゲームで勝負するというのも躊躇われるが」
しかし、迷路ちゃんは将棋盤に駒を並べはじめた。次は負けませんよ、従姉どのの打ち筋は見切りましたと迷路ちゃんは首を振ることにより、そう主張した。
もちろん勝負の結果は、あっさり僕が勝ってしまったわけだが。
「さあ、どうしょうか? そうだな、くろね子さんには負けました、と口に出して言いたまえ。それで罰ゲームは完了だ」
くろね子さんには負けました、と表情だけで語る。
「それでは駄目だ。ちゃんと口に出したまえ。でないと・・・・・・」
親指で迷路ちゃんの唇をなぞる。しかし、表情だけで拒絶される。耳に息を吹きかける。耳たぶを舐めた。
「自分で罰ゲームありのルールで挑んできたのに、いざ負けたとなったら罰ゲームはやらないというのは、どうかと思うよ」
何をするんですか、と迷路ちゃんは眉を吊り上げることにより強く抗議する。でも、僕は許さない。
「罰ゲームだよ、動かないでくれたまえ」
迷路ちゃんの唇をぺろっと舐めてみる。やめてください、という表情で迷路ちゃんは身を引いたが、やめてあげない。
いくら体力に自信のない僕でも先月までランドセルを背負っていた娘よりか弱いわけがない。
逃げようとする迷路ちゃんを押し倒し、その上に乗った。キスの続きだ。唇で唇を愛撫するように、迷路ちゃんの上唇をやさしくくわえ引っ張った。
それから舌先で下唇をなぞる。
「どうする、迷路ちゃん?」
やめてください、と迷路ちゃんは眼差しだけで拒絶した。真っ赤になった顔がとってもかわいい。
かまわず服を脱がせた。てのひらにすっぽりおさまる、ふくらみかけの胸。男の胸と比較すると、少しだけ出ていて、柔らかみがあり、乳首も発達しかけている。
なにもかも発展途上であるが、これはこれで特殊な需要がいろいろありそうな胸ではある。
口を大きく開けてぱくっとくわえ、でっぱり分を全部吸い込む勢いで吸った。口いっぱいの迷路ちゃんの乳房だが、やっぱりボリュームが圧倒的に足らない。
舌先で乳首を転がしてみる。だんだんとかたくなってきたし、乳房も張ってきた。素直に反応してくれるのは嬉しい。なにしろ、
この年代は難しい、強く刺激を与えると痛がるし、やさしくするとくすぐったいと笑われる。だが、その点、僕は経験豊富だ。なにも保健室にくる客は男とは限らない。
では下は? スカートの中に手を入れると下着越しに恥丘を撫でる。そしてショーツに進んで指先を潜らせると、薄く生えかけているようだった。こっちも発展途上。
「膨らみかけで、生えかけだね。一部に熱狂的支持層がいそうだから、写真を撮ったら儲かりそうだな。いやいや、安心したまえ。いくら僕でも鬼畜にはなれない」
思い切ってスカートの中に顔を突っ込んだ。自分で言うのも何だが、かなり変態な光景だろう。迷路ちゃんは足をばたつかせるが、その太股を抱え込んで放さない。
ショーツを脱がすと、産毛にしては濃く、かといって恥毛というには弱々しい、柔毛が現れた。割れ目を押し開く。
そして肉襞の上端にある包皮をめくる。クリトリスがあらわになった。
「恥垢がたまってるね。1日3回オナニーするので恥垢が溜まる暇がないという中学生がいたら、それはそれでひくだろうが、女の子の嗜みとして、いつどこでどんなことがあってもいいようにしておくべきだと思うがね。
ふむ、指でさわると痛いのだね。敏感すぎるのだ。では舐めてあげよう」
ツンツンと舌先で突いてみたが、指で触ってときほどの拒絶反応はなかった。ゆっくり丁寧に舐めていく。クリトリスを舐めてながら、中指を割れ目の中に差し込んでみる。キュッと締まる。すぐに処女膜に侵入を阻まれた。
甘酸っぱい発酵臭が強く漂う。このまま迷路ちゃんの処女を奪ってしまいたい誘惑に狩られる匂いだ。
それでは尿道口を舐めてみよう。迷路ちゃんの体がピクリとした。感じるようだ。手はお尻を撫でまわしている。柔らかいお尻だ。てのひらが気持ちいい。
舌をできるだけ長く伸ばしピンクの粘膜を押し入った。無理矢理だと、そうそう濡れるものではないはずだが、迷路ちゃんの股間は愛液が少しずつあふれて、僕の唾液と混ざって、びしゃびしゃに濡れていく。
もう抵抗らしい抵抗もしなくなっているから、少しは気持ちよく感じてくれているということだろうか。顔が見えないとよくわからないのは不便だな。
ふたたび膣内に中指を入れる。狭いが奥まで入らないことはなさそうだ。ねじ込むように捻りながら進入させていく。さらに人差し指も。
二本の指で膣内を攻めながら、舌でクリトリスへの刺激を続ける。
どうして無理に私を喋らせようとしたのですか? 迷路ちゃんは質問というより、詰問するような表情を作った。
「さあ? たとえば人生が推理小説だとすると、迷路ちゃんはそもそも出すべきでないキャラなんだろうね。証言できないキャラは探偵役はもちろん、犯人すら、いや目撃者にも証人にもなれない。
唯一なれるのが被害者だ。死人はしゃべる必要がない」
だから? 別に人生が推理小説というわけではないでしょうという表情で迷路ちゃんに睨まれた。
「僕なりに従妹のことを心配したのだが、あんまり通じてないようだな。まあ、いい。ところで最後にひとつだけ教えてもらえないかな。迷路ちゃんは何に怒ってるんだい? 将棋に負けたからかな?
それとも・・・・・・最初は嫌がっていたのに結局いかされてしまったからだろうか?」
馬鹿。最低。外道。変態。最悪。気持ち悪いから早く死んだ方がいいと思う。全力で罵倒してくる。表情だけで罵倒されたのは初めての経験だ。
「そんなに腹が立つなら今度は別の勝負をしよう。何かひとつぐらいは僕に勝てそうなものを今度会うときまでに考えておいてくれたまえ。どんな勝負でもかまわないよ? 言っておくが僕を負かすのは大変だよ。
あ、そうだ。勝負の内容はあくまで頭を使ったものにしてもらえないかね。
前言を翻すようだが体力には自信がないんだ。もし迷路ちゃんが勝ったら何でも要求したまえ。なんなら僕の処女だってかまわないんだよ」
迷路ちゃんは二度とあんたなんかと勝負はしない、要求したいこともないと顔でなく、それこそ全身で表現した。
「ふむ、それは重畳。なにしろ言ってみたものの僕の処女はとっくに売り切れでね。なにしろいままで10回は売っている」
それはどういう意味ですか、と首をかしげたままの迷路ちゃんを残し、僕は彼女の部屋をあとにした。