−ドラマツルギーは完全に降参のようだった。ならばあとは約束を果たしてくれればいい。
「……キスショットの右脚。返してくれるんだろうな」
「ああ」
ドラマツルギーは頷き、そして。
両手の大剣を元に戻し………って!?
「え、え、ええっ!?」
僕は思わず驚きの声をあげた。見上げるほど巨漢だったドラマツルギーの身体がみるみるしぼんでいき、十三歳くらいの少女に変身した。
「変身ではない。これが私の本来の姿だ」
声まで女性のものになっている。
「ナンバーワンとしては嘗められない外見をとってないといかんからな」
口調は変わらないが、そのギャップはすでにキスショットで経験済みなのでそこまで違和感はない。
「ちなみにこの姿をまともに見せたのはお前が初めてだ」
可愛い、と思える仕草でこちらをのぞき込むように見上げてくる。何となくドキッとして慌てて目を逸らした。
「な、何で僕に見せたりしたんだ?」
ドラマツルギーはジーンズにシャツにカチューシャといった服装は元のままだったが、少し大きいのかシャツの中身(つまりは裸)が首元からチラチラと見えてしまう。
「私に勝った相手に敬意を表してだ。それが気に入った男なら尚更だ」
「き、気に入ったって?…………!!」
不意にドラマツルギーの口元が僕の首筋に当てられる。血を吸われる!と思ったが、軽くキスをされただけですぐに離れた。
「ハートアンダーブレードの眷属よ」
「……なんだ」
「もう一度誘おう。私達の仲間になってはくれまいか」
「無理だ」
僕はきっぱりと言った。
「私の身体を好きにして良いと言ってもか」
「!!………………………っっっ!!」
「私は変身能力には優れているからな、どんな好みの外見にもなれるぞ」
「っっ……!! な、なっ、何度聞かれても、答えは、変わらない!」
何故か上手く舌が回らない。
「そ、そんなことに、何の、魅力も、感じない」
「…………」
僕の台詞に返しはなかった。
そのまま闇に溶けていったようだ。
もう二度と会うことはないと思うけど……何だか脈絡もなくまたふらりと現れるキャラのような気がしてならない。