「ひっ」  
ゾンビが突然吠え、千石が僕の腕の中で身を竦める。  
それでも目を逸らさず、僕の腕を掴みながらじっと前を見ていた。  
今、僕たち二人は千石の部屋でホラー映画を鑑賞している。  
先程まで遊んでいたツイスターゲームも面白かったけど身体を動かし慣れていない千石がへばってしまい、今度は映画を見ようという話になったのだ。  
見てみたかった作品があるのだけれど怖いから一緒に見て欲しい、とのことで僕はそれを承諾した。  
胡座をかいてる僕の脚にストンと腰を下ろしてもたれかかってきた時にはさすがに驚いたけれども。  
まあ千石は一人っ子だし『兄』という存在に甘えてみたいのだろう。  
いいさ、僕なんかで良ければいくらでも兄代わりになってやるさ。  
頭を撫でてやると照れくさそうに顔を真っ赤にしている。  
が、いざ映画が始まると二人とも見入ってしまった。  
僕も緊迫するシーンでは思わず腕に力が入って千石をぎゅっと抱きしめたりしてしまう。  
そんなこんなでクライマックスを終え、スタッフロールが流れ始めると僕たちはほう、とため息をついた。  
「いや、結構面白かったね」  
「う、うん、すごくドキドキした」  
千石は顔を赤くさせながら答える。  
よっぽど映画に興奮したのだろう、キャミソールの隙間から見える肌が全体的に上気している。  
と。  
「ごめん、ちょっと御手洗い借りていいかな」  
緊張して喉が渇いてしまったのでジュース(例の強炭酸コーラである)を飲み過ぎたらしい。  
断りを入れてトイレに向かい、すっきりして千石の部屋に戻る。  
「………………」  
千石は寝ていた。  
さっきまであんなに興奮していたのに、ひょっとしたらはしゃぎすぎて疲れたのかな。  
とりあえずベッドに寝かせてあげようかと手を伸ばしたとき。  
「…………っ!」  
千石が寝返りを打つ。  
その際にミニスカートが捲れて下着が露わになり、キャミソールがはだけて小さな胸の突起が見え隠れした。  
一瞬ものすごいドキッとしたけど、妹的存在の千石に対して邪な感情を抱くわけにはいかない。  
乱れた服を直してやろうと僕は改めてそっと手を伸ばす。  
だけど。  
僕の手は。  
何故かその小さな膨らみに触れたのだった。  
ふにゅ、と柔らかい感触がキャミソールの上からでもわかる。  
「千石……」  
僕の声は明らかにいつもより熱を帯びていた。  
僕は  
 
 
「千石……」  
僕の声は明らかにいつもより熱を帯びていた。  
僕はどうかしてしまったのだろうか?  
今明らかに千石を『妹的存在』ではなく『女』として見てしまっている。  
ちょっとぼーっとした頭で考え、千石の顔を見つめた。  
頬がまるで酔っているみたいに赤くなって…………酔っている?  
僕はそこではたと思い当たり、傍らのウイスキーボンボンとコーラに目をやった。  
なるほどこれのせいか。  
ちょっと酔ってて変になっているようだ。  
原因を突き止めて安堵した僕は千石の紅潮した頬に触れた。  
酔ったからといって手を出すほど僕は鬼畜ではない(胸は触ってしまったが)。  
すべすべした肌が気持ちよく、頬を撫でる。  
「ん…………はむ」  
「!!」  
ビリッと電流みたいな快感が走った。  
指先が唇に触れた瞬間、その指を千石にくわえられたのだ。  
そのまま唾液を絡めて舌を這わせてくる。  
ぞくぞくっと僕の身体が快感に震え、声が出そうになるのを必死に堪えた。  
指を舐められるだけなのがこんなにも気持ちいいとは!  
僕は慌てて指を千石の口から引き抜く。  
だけど。  
僕はもうすっかり収まりがつかなくなっていた。  
唾液にまみれた指を口に含み、それを味わう。  
千石にまだ起きる気配は見られない。  
僕はキスをするように千石の顔にそっと自分の顔を寄せる。  
そのまま舌を突き出して千石の唇にちょんと触れると、すぐに口を開いて僕の舌をくわえてきた。  
唇で挟み込まれ、舌先をなぞられる。  
もっとしてもらいたくて僕は出来る限り舌を伸ばす。  
千石に対して何をしてるんだ僕はという思考があったが、与えられる快感がそれを打ち消した。  
くちゅくちゅと僕の舌が犯される音が響く。  
が、突然その音と動きが止む。  
「!」  
「…………」  
見ると千石が目を開けていた。  
慌てて顔を離して起き上がり、しどろもどろになりながら言葉を紡ぐ。  
「いや、千石、これは、その」  
「駄目だよ暦お兄ちゃん」  
千石は身体を起こして僕の言葉を遮る。  
「ちゃんと夢の中では『撫子』って呼んでくれないと」  
え?  
よく見ると千石の目がとろんとしている、いわゆる寝ぼけ眼というやつだ。  
「千ご」  
「撫子」  
「…………」  
「撫子」  
「……撫子」  
「うんっ! えへへ」  
名前を呼ぶと千石は破顔して僕に抱きついてくる。  
どうやらまだ夢の中にいると思ってるらしい。  
これは好都合だ、さっきのをごまかせる。  
 
取り繕い方を考えていると千石の口からとんでもない言葉が飛び出てきた。  
「じゃあ……いつもみたいに気持ちよくなろ、暦お兄ちゃん」  
「え……んむっ!?」  
千石が唇を押し付けてきた。  
そのまま抵抗する間もなく僕の口がこじ開けられ、口内に千石の舌が侵入してくる。  
歯茎や頬の内側を蹂躙していき、溢れ出る唾液を啜っていく。  
な、何だ?  
ものすごく上手いぞ?  
夢の中の僕はいつもこんな気持ちいいことをされてるのか、ちくしょう!!  
的外れな嫉妬をしていると千石が唇を離し、訝しげになる。  
「暦お兄ちゃん……どうして今日は暦お兄ちゃんの方からしてくれないの……?」  
どうやら千石の夢の中では僕の方からも積極的らしい。  
今この状況が夢じゃないとバレないためには仕方ない!  
そう言い訳をして僕は千石を抱き寄せて唇を合わせた。  
「ん……っ」  
千石はそれに逆らわず僕に抱き付き、軽く口を開けて僕の舌を誘う。  
僕は千石の望むままに口内を陵辱していった。  
先ほど僕がされたように歯茎や頬の内側を舐め、唾液を掬い取ってじっくりと味わう。  
僕の頭の中がじんじんと痺れ、理性が利かなくなっている。  
僕はキャミソールの裾から両手を突っ込み、千石の小さな膨らみをむにむにと揉み始めた。  
「ん……んふぅっ」  
艶っぽい声を上げ、千石の身体がびくんと震える。  
だけど僕の首に巻き付けた腕は離さず、口を僕に犯され続けていた。  
ん、あれ?  
僕の首に巻き付いているのはいつの間にか左腕だけになっている。  
右手はどうしたのだろうと視線を向けると僕は言葉を失った。  
千石の右手は自分のミニスカートの中に伸びていたのだ。  
その手はもそもそと艶めかしく動き、ガクガクと腰が震えている。  
僕が何か言おうとした矢先に千石が唇を離して悲鳴のように叫んだ。  
「もっと! もっと弄って! 暦お兄ちゃんの手、気持ちいい!」  
すぐに再び唇を押し付けてきて、舌を絡めてくる。  
僕はリクエストに応え、千石の舌をしゃぶりながら両の胸の突起を指できゅっと摘む。  
「ん、んんっ、んっ……ん……んんんんんんぅっ!」  
千石が一際大きな声を上げ、身体をびくんびくんと痙攣させた。  
どうやら絶頂に達したらしい。  
唇を離すとそのままぱったりと僕に倒れかかってくる。  
僕はそれを受け止め、背中に手を回して抱き締めてやった。  
しばらくして千石が嬉しそうに言う。  
 
「えへへ……暦お兄ちゃんの、気持ちよかった」  
僕は何と言ったらいいのかわからず、黙って頭を軽く撫でる。  
しばらく嬉しそうにしていたが、またもやとんでもないことを千石は言った。  
「今度は撫子がしてあげるね」  
僕は突然の言葉に抵抗できず、千石はあっという間に僕のズボンから勃起したものを晒した。  
きゅ、とそれが軽く握られ、僕は声が出そうになる。  
その時はなんとか堪えたけども、暖かい濡れた感触に包まれた瞬間僕は声をあげてしまった。  
「んくうっ!」  
これは。  
これが。  
千石の口内の感触。  
僕の肉棒は千石の口の中に収まっていた。  
その柔らかい唇の感触にいつイってもおかしくない状況にある。  
「…………?」  
だけど千石はそのままじっと僕を見つめるだけだった。  
様子を見てると、す、と千石の唇が離れ、僕に訊いてくる。  
「暦お兄ちゃん……どうしたの? ね、いつもみたいに……」  
いつもって何さ!?  
そう言いたいのをこらえ、僕は千石の頭を撫でる。  
「どうしてほしいのか撫子から言ってごらん」  
「……暦お兄ちゃん……夢の中でも意地悪」  
ちょっとだけ千石はむくれた顔をした。  
僕の両手を自分の頭に添えさせ、肉棒の前で大きく口を開く。  
「撫子のお口……暦お兄ちゃんの好きなようにいっぱい犯して…………」  
僕の理性とやらはその言葉でぶっ飛んだ。  
ぐいっと頭を押し付け、喉の奥までくわえさせる。  
頭と顎を掴み、激しく上下させながら僕も腰を揺すった。  
「撫子っ! 撫子の口、気持ちいいよ! 撫子ぉっ!」  
じゅぷじゅぷと卑猥な音が部屋に響く。  
僕はもうイきそうになったので千石に指示を出しながらスパートをかけた。  
「いくよ、撫子の口の中に出すからね! 全部飲んで!」  
舌が敏感なところを這い、唇がぎゅうっと締め付けられる。  
上目遣いでこちらを見る千石の表情に僕はもう我慢が利かなかった。  
「あ……出る……出るよっ…………ああっ!」  
びゅるっ、と先端から精液が噴射された。  
一瞬千石が顔を離そうとしたけど僕はそれを押し止める。  
それどころかより深くくわえさせ、喉の奥に直接注ぐように何度も射精した。  
やがていき終わってからも僕はしばらくくわえさせて余韻を楽しんでいる。  
充分堪能したところで千石の頭を離すと千石は身体を起こし、喉を鳴らして口内の精液を飲み込んでいく。  
「全部飲んだよ、暦お兄ちゃん」  
あー、と口を開け、口内を見せてくる。  
「……ご褒美くれる?」  
「じゃあ僕の  
 
 
 
プルルルルル!  
「ひゃっ!?」  
突然の音に思わず飛び上がってしまった。  
居間の電話が鳴っているのだ。  
「び、びっくりした……」  
そう呟いて居間に駆け寄る。  
今日はお父さんもお母さんもいなくて自分一人しかいないから自分が出るしかない。  
変な妄想とかあまりするものじゃないよね……暦お兄ちゃんがうちに一人で遊びに来てくれるわけないし、あんなにいやらしくないだろうし。  
そう思って受話器を取ろうとした時、ディスプレイに表示されたナンバーに驚く。  
それはもうすっかり暗記してしまった馴染みのナンバー。  
暦お兄ちゃんの携帯番号!  
慌てて受話器を取る。  
「も……もひもひっ!? 千石れふっ!」  
噛んじゃった!  
でもなんとかフォローして会話を紡ぐ。  
そして。  
暦お兄ちゃんが今からうちに遊びに来ることになった。  
まさかさっきの妄想が現実に!?  
「な、撫子頑張るっ!」  
以前ネット通販で手に入れた強炭酸コーラとウィスキーボンボンを用意する。  
そして着替えを済まし、カチューシャをつけた。  
丁度そこで来客を告げるチャイムが鳴る。  
「暦お兄ちゃん……撫子、行きますっ!」  
 
 
 
 

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