(ん……)  
何か面妖な気配を感じて僕の意識は目覚めた。  
瞼は開かずに眠りにつく直前のことを思い出してみる。  
確か忍に耳掻きをしてやって僕が忍にしてもらって、そのあと忍を抱き枕代わりにしながらベッドに入ったんだっけ。  
ああそうか、今僕が腕を回してる柔らかいものは忍の身体か。  
背中側から抱き抱えるように腰に巻いていたのだが、時折その身体がぴくんと震えるせいで僕は目を覚ましたらしい。  
薄く目を開けて、何をしているのかそっと窺うと僕は思わず声をあげそうになった。  
忍は全裸だったが、それはまだいい。  
驚いたのはその小さな両の手でやはり小さな自分の体躯をまさぐっていたことだ。  
簡単に言うと忍は自慰をしていたのである。  
よりにもよって寝ている僕の腕の中で。  
右手は脚の付け根に伸びてかすかな水音をさせながら弄り、左手は声が漏れそうになる口を押さえて時折指をしゃぶっている。  
身体自体は殆ど動かないので気付くのが遅れたが、指のふやけ具合からして始めたばかりというわけではなさそうだ。  
(…………)  
これはどうしたものだろう。  
やはりこういうシーンは見られたくないのだろうか、それともわざわざ僕の腕の中でしていることから別の意味があるのか。  
だけど僕は考えるのをやめた。  
どうせ目を覚ましたことはすぐにバレるだろう。  
ならば。  
僕は忍のお腹辺りに巻かれている自分の手を素早く移動させ、秘口に触れる。  
「なっ! あっ!」  
忍が驚いたように身体をびくっとさせ、こちらを振り向こうとした。  
だけど密着状態で抱き抱えているので顔がわずかにこっちを向くだけである。  
僕は愛液にまみれた内腿をすっと撫で、性器周辺をいじり出す。  
「ふぁっ!……あ……あっ」  
反射的に忍は僕の腕を掴んだが、抵抗らしい抵抗はせずにされるがままになっている。  
むしろ少し足を開き、積極的に誘う姿勢だった。  
僕が動きをぴたりと止めると忍はせつなそうな表情でこちらを見、それが僕の中の何かを刺激する。  
「忍、何をしていたの?」  
「…………っ!!」  
忍はばっと目を逸らし、そっぽを向いてしまった。  
僕は忍の耳元に口を寄せる。  
「もしオナニーをしていたんだったら手伝ってあげようか?」  
気持ちよくなりたかったら足を上げて、と囁く。  
 
忍はしばらく逡巡していたようだが、やがてゆっくりと足が上がり始める。  
僕はくすくすと笑いながら太ももを撫で回す。  
「やっぱりオナニーしてたんだね」  
「…………っっ」  
忍はさらに首を捻り、顔をうつ伏せ状態にベッドに埋めてしまった。  
僕たちは基本的に忍がメインで攻めてくるが、ふとしたことからこのように攻守が逆転する。  
いや、この場合攻受かな?  
まああまり苛めるのも何なので、僕は内腿の愛液で濡れた指を秘口に押し当てる。  
すると、ぬるっと何の抵抗もなくあっさりと僕の中指は付け根近くまで飲み込まれてしまった。  
だけど次の瞬間、ぎゅうううっとその指が痛いほどの膣圧で締め付けられる。  
もう一方の手の指で敏感な陰核をこすってやると、じゅくじゅくと愛液がさらに分泌されて僕の指や手をふやかしていく。  
少しずつ指を出し入れしてやるととうとう忍は顔を上げて身体を仰け反らし、声を上げ始めた。  
「んあっ! あ、あっ! あっ!」  
僕の腕をぎゅっと掴み、身体を震わす。  
いったん僕はそこで動きを止めて、また忍に囁く。  
「僕は手伝ってるだけなんだから忍も自分でちゃんとしないと」  
忍は少し戸惑っていたが、やがておずおずと腕を動かし始めた。  
殆ど膨らみのない胸を自分で揉み、指がくりくりと突起をいじる。  
もう片方の手は口元に持っていき、指をしゃぶりながら口内をかき回す。  
なるほど、どうやら忍は口内にも性感帯があるらしい、機会があったら攻めてみよう。  
そして僕の舌は忍の最も敏感なところのひとつ、耳に向かう。  
れろ、と耳たぶを舐めただけで忍の身体が跳ねて暴れる。  
僕は一気に忍の耳穴に舌を突っ込んでぐちゃぐちゃと音を立ててかき回した。  
「んっ! んむっ! むぅっ!」  
ぴん、と忍のつま先が伸びるのがわかる。  
もう絶頂が近いようだ。  
「忍、イっていいよ、イくとこ見せて」  
僕は出し入れする指の動きを速め、陰核をきゅっと摘み、耳をたっぷりと攻めながら忍を導いていく。  
忍の身体がぐううっと仰け反り出す。  
そして。  
忍は達した。  
「んうっ! ううっ! んううううううううっ!」  
びくんびくんと身体を痙攣させ、快楽の波に翻弄されている。  
やがてそれも収まっていき、忍が肩で大きく息をした。  
僕は何も言わず両手を秘所から離し、再び忍の腰辺りに手を回して抱き締める。  
忍もその腕にそっと手を添えただけで動かなくなった。  
そのまま僕たちは何も語らず、再び眠りについたのだった。  
 

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