「…………」  
目が覚めてしまった。  
というか元々あまり眠くないのにうとうとしていただけだった。  
寝る直前自分の身体に巻き付いていた腕は、寝返りでもうったか解かれている。  
儂はゆっくりと身体を起こしてすぐ隣で寝ている男を見つめた。  
不本意ではあるが我が主人である、かつては下僕だった人間。  
儂のような化け物を傍らに置いておきながら随分と不用心に寝ている。  
その無防備にさらけ出された首筋にかぶりついて血を吸い尽くしてやろうかと時々思う。  
儂はかがんで顔を寄せる。  
首筋に唇を近付け。  
噛み跡にそっとキスをして離れた。  
無論この人間を殺す気など毛頭ない。  
今のこの生活もそれなりに気に入っているからだ。  
「ん……忍」  
む、起こしてしまったか?  
と思ったがただの寝言のようだ。  
もし今一緒に寝ているのが儂でなく、あのツンデレ娘とかだったら非道い目に遭わされておるぞ。  
指を伸ばして鼻の頭をちょんとつつき、唇をなぞる。  
「……!」  
その指がくわえられて、ぺろりと舌が這った。  
思わず反射的に引いて様子を窺ったが、特に目が覚めたわけではないようだ。  
儂は自分の指を見つめる。  
我があるじ様の唾液で濡れた指を。  
「…………」  
気が付くとその指が視界から消えていた。  
何も指が吹っ飛んだとか非常識なことが起きたわけではない。  
その指は自分の口の中に収まっていただけのことだった。  
無意識だったが特に疑問に思わず、指に付着した唾液を啜る。  
「んぅ……」  
かっと下腹が熱くなるのがわかった。  
股間をまさぐると自分でも驚くくらい濡れている。  
もう収まりがつかない。  
儂はそっと横になってあるじ様の手を取り、腰の位置に巻き付かせる。  
「んー……」  
するとあるじ様はごろんと寝返りをうち、儂の背中が密着した。  
きゅっと抱き締められて体臭が鼻腔をくすぐると、それだけで脳がとろけそうになる。  
まったく。  
儂はどうしてしまったのじゃろうな。  
 
儂は自分の服を消し、指をしゃぶりながら股間を弄る。  
気取られぬよう極力身体は動かさないように。  
「ん……っ……ぅ……っ」  
気持ちいい。  
影の中で時々慰めることもあったが、同じようなことをしている今の方がずっとよかった。  
もう味なんて残ってないのに指を夢中でしゃぶり続ける。  
秘口の入口と陰核を交互に刺激して高みへと向かう。  
だから。  
気付かなかった。  
気が弱いくせに時々凄い攻めっ気をみせる我が主人が目を覚ましたことに。  
突然儂の腰辺りに巻かれていたあるじの手が素早く移動し、秘口に触れる。  
「なっ! あっ!」  
いきなりのことに驚きの声を上げ、後ろを振り向こうとした。  
が、密着状態で顔をわずかにひねっただけである。  
その手は愛液にまみれた内腿をすっと撫で、性器周辺をいじり出す。  
「ふぁっ!……あ……あっ」  
反射的にあるじ様の腕を掴んだが、抵抗らしい抵抗はいっさいしない。  
それどころかもっとしてほしくて無意識に少し足を開いてしまう。  
が、そこで突然動きが止まる。  
もっと。  
もっといじってもらいたい。  
儂は懇願するようにあるじ様の顔を見上げる。  
が、返ってきた言葉は。  
「忍、何をしていたの?」  
「…………っ!!」  
これだった。  
いつから目を覚ましていたかはしらないがそれくらいはわかるはずなのに。  
儂は目を逸らし、そっぽを向く。  
するとあるじ様は儂の耳元に口を寄せる。  
「もしオナニーをしていたんだったら手伝ってあげようか?」  
「!!」  
気持ちよくなりたかったら足を上げて、と囁いてくる。  
してほしい。  
その指で儂の感じるところをいじってほしい。  
儂はゆっくりと足を上げた。  
あるじ様はくすくすと笑いながら儂の太ももを撫で回す。  
「やっぱりオナニーしてたんだね」  
「…………っっ」  
わかってるくせに!  
わかってたくせに!  
儂はさらに首を捻り、顔をうつ伏せ状態にベッドに埋めた。  
が、あるじ様は構わず濡れた指を秘口に押し当ててくる。  
そのままぬるっと儂の中に入ってきた。  
もう一方の手の指が敏感な陰核をこすると、全身が溶けるような感覚に陥る。  
指が出し入れされて肉襞が刺激されると、とうとう儂は堪えきれず顔を上げて身体を仰け反らし、声を上げ始めた。  
「んあっ! あ、あっ! あっ!」  
だけど。  
あるじ様はそこでまた動きを止めて囁く。  
「僕は手伝ってるだけなんだから忍も自分でちゃんとしないと」  
こ、この人間が!  
調子に乗るな!  
 
だけど文句は言えなかった。  
口を開けば何かとんでもないことを口走ってしまいそうで。  
儂は余計なことを言わないよう手を口元に持っていき、指をしゃぶりながら口内をかき回す。  
もう片方の手で胸を揉み、指で突起をいじる。  
そして。  
あるじ様の舌が儂の耳を這った。  
びくんと儂の身体が震える。  
悦楽の波が耳から全身に広がっていく。  
耳穴に舌が突っ込まれてぐちゃぐちゃと音を立てられ、快感の電流を流し込まれているようだった。  
「んっ! んむっ! むぅっ!」  
ぴん、とつま先が伸び、絶頂が迫っている。  
「忍、イっていいよ、イくとこ見せて」  
耳元で囁かれ、指の動きが速くなり、陰核が摘まれ、耳をたっぷりと攻められる。  
儂はもう我慢ができなかった。  
身体がぐううっと仰け反り出す。  
そして。  
儂は達してしまった。  
「んうっ! ううっ! んううううううううっ!」  
びくんびくんと身体を痙攣させ、快楽の波に翻弄される。  
やがてそれも収まっていき、儂は肩で大きく息をした。  
あるじ様は何も言わず両手を秘所から離し、再び儂の腰辺りに手を回して抱き締める。  
儂もその腕にそっと手を添えた。  
そのまま儂はいつの間にか、再び心地良い眠りについていた…………  
 
 
 

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