民倉荘についた僕は自転車から降りる。  
周りに誰もいないのを確認して、自分の影に話し掛けた。  
「頼むよ忍」  
眠そうな目を擦りながら金髪の吸血鬼が現れる。  
「まったく、二度と魅了はいらんと言いながら舌の根の乾かぬうちにとはな」  
「仕方ないだろ、下手したら僕殺されちゃうよ……」  
「まあそれは儂も望むところではないからな。ほれ、首を出せ」  
かぷっと噛み付かれ、ちょっとだけ血を吸われる。  
そのあと目を合わせて魅了を受け入れた。  
「効果は少し後に表れる。儂はもう寝るから決して起こすでないぞ」  
「わかった」  
その方が僕としてもありがたい。  
「あと注意しておくことはないか?」  
「そうじゃな、そう言えば」  
忍はちょっと思い出す仕草をする。  
「魅了の副作用は相手への好意が大きいほど効果が強いというのを聞いたことがあるの」  
「え?」  
「どうやらお前様は儂のことも随分憎からず思ってくれてるようじゃの」  
「……からかうなよ」  
忍はかかかっと快活に笑った。  
「じゃあの、効果が出たら儂が襲われかねんからな」  
そう言って影の中にすっと姿を消す。  
「さて、と」  
僕は戦場ヶ原の部屋の前まで来て、ドアをノックした。  
すぐに返答がくる。  
「どちら様かしら?」  
「僕だよ、戦場ヶ原ひたぎの最愛の恋人、阿良々木暦だ」  
「犬畜生が何をうぬぼれているのよ、恋人なんて対等な存在だと思っているの?」  
ちょっとからかってみようとしたら物凄い返しを喰らった!  
「それが忠犬よろしく暑い中やって来た相手にかける言葉か!」  
「忠犬だったら犬畜生で合ってるじゃないの、自覚があるのはないよりいいことだわ」  
「ぐ、う」  
「鍵は開いてるから入ってきていいわよ、犬々木くん」  
「その漢字の並びでどうやって『いぬらぎ』って読むんだよ!? 僕の名前は阿良々木だ!」  
最近周りで八九寺っぽい語りが流行っている。  
そのうち『八九寺語』なんて作品も出るんじゃないだろうか?  
僕はドアを開けた。  
「お……」  
部屋内はカーテンが閉められ、電気も点いてないので薄暗い。  
 
今の僕にははっきり見えるけど、肝心の戦場ヶ原が見当たらない。  
「戦場ヶ原?」  
ドアを閉めて靴を脱いで上がった。  
その時。  
「うわっ!」  
死角に隠れていた何かに突き飛ばされた。  
いや、間違いなく戦場ヶ原だろうけど。  
僕はバランスを崩して部屋中央に敷いてあった布団の上に倒れ込む。  
起き上がる間もなくその影、戦場ヶ原が覆い被さってきた。  
そのまま思いっきり抱き締められる。  
「せ、戦場ヶ原、お前……なんて格好を」  
戦場ヶ原はその身に何も纏っていなかった。  
ひょっとして僕が待ちきれなかったのだろうか?  
胸に顔をうずめている姿を見てすごく愛おしくなり、僕も戦場ヶ原の背中に手を回して抱きしめ返す。  
が、その手がはたかれた。  
「なに勝手なことしようとしてるのよ。遅刻して私を待たせるような甲斐性なしにそんな権利があると思ってるのかしら?」  
「遅刻って……」  
五分も遅れてないぞ?  
むしろシャワー浴びたりとかしておきながらあの距離をこの時間で来た僕を褒めて欲しいくらいだ。  
「でも今回は命だけは助けてあげるわ」  
「……ありがとう」  
一方的に要求しておきながら実に我が儘な女である。  
まあ可愛いといえば可愛い……のか?  
「何ぼーっとしてるのよ、早く服を脱ぎなさい」  
「いや、抱き付かれてたら脱げないんだけど」  
「破ればいいじゃない、そんなセンスの欠片もない服」  
何気なく酷い事を言われた!  
「帰り道どうすんだよ!」  
「下着だけは残してもいいけど……私の服を借りる?」  
「破る前提で話すな! ちょっとでいいから離れてくれ!」  
本当に渋々といった感じで身体が離れる。  
少し久々に見る戦場ヶ原の身体。  
自分の服を脱ぎながらもそのスタイルに見とれる。  
が、トランクスも脱いだ瞬間。  
「か、はぁっ!」  
「あ、阿良々木くん?」  
突然うずくまった僕に珍しく動揺した戦場ヶ原が声をかける。  
が、それを気にする余裕が今の僕にはない。  
胸が、苦しい。  
全身が、熱い。  
身体の奥から衝動が湧き上がってくる。  
「ぐ、う」  
駄目だ。抑えきれない!  
「せ、戦場ヶ原っ!」  
「あっ……!」  
僕は戦場ヶ原を押し倒し、力いっぱい抱き締める。  
「戦場ヶ原っ、好きだ!」  
反射的に抵抗しようとしていた戦場ヶ原の手の動きが止まる。  
「好きだ、戦場ヶ原! 戦場ヶ原! 僕の戦場ヶ原!」  
「……私は別に阿良々木くんのものじゃないわよ」  
戦場ヶ原はそう言って僕の背中に手を回し、僕らはきつく抱きしめ合う。  
 
戦場ヶ原の柔らかい肌が密着し、弾力のある双丘が二人の間で潰れる。  
「戦場ヶ原、戦場ヶ原」  
僕は肌を擦り付けるように身体を揺らす。  
ただし、触れ合ってるのは上半身だけだ。  
恥ずかしながら下半身はギンギンに屹立しており、いつ発射してもおかしくない状態にある。  
「どうしたのよ阿良々木くん、普段からなのは知ってるけどいつもより変よ?」  
僕はそれに答えず唇を塞ぐ。  
「んっ……」  
戦場ヶ原は特に抵抗することなくそれを受け入れてくれた。  
本当は舌を突っ込んでめちゃくちゃにかき回したり吸ったりしたかったけど、ぎりぎり自制がきいて触れ合うだけに留める。  
だけど股間の方はもう自制がきかなくなりそうだ。  
「ごめん……戦場ヶ原、僕もう……出したい」  
「本当にどうしたのよ、いつもより全然早いわよ?」  
「仕方ないよっ……だって」  
戦場ヶ原が目に写る。  
戦場ヶ原の声が聞こえる。  
戦場ヶ原の匂いがする。  
戦場ヶ原を味わい、戦場ヶ原と触れ合った。  
五感すべてで戦場ヶ原を感じている。  
「我慢なんか……できないよっ……」  
戦場ヶ原は溜め息をつく。  
「しょうがないわね、入れていいわよ」  
「え……?」  
まだ前戯も何もしていない。  
絶対口とかではしてくれないからとりあえず手でしてもらおうかと思っていたのだが。  
「大丈夫よ、ほら」  
戦場ヶ原は僕の手を取り、自分の秘所に触れさせる。  
「あ……」  
ぐちゅり、と粘液が指に絡む。  
そこはもう洪水状態だった。  
「な、何でもうこんなに……?」  
「阿良々木くんが来るまでガマンできなくて一人でしちゃってたの☆」  
てへって感じに舌を出す戦場ヶ原。  
もちろんそんなキャラでないのはわかってるからこれっぽっちも萌えないし蕩れない。  
そんなに僕を欲しかったのかといっても全然くるものがない。  
一見いつもの表情に見えていながらほんのわずかに頬を赤くして恥ずかしがっているからってのせられるものか。  
胸の動悸がすごいのもあくまで魅了のせいだしな。  
ましてやその言葉を聞くだけでいきそうになったなんてまったく魅了とは厄介なものだ。  
「じゃ、じゃあ入れちゃうけど……あれはつけたほうがいいかな?」  
あれとはもちろん避妊具のことである。  
戦場ヶ原はそういうことにも基本的には計算高いが、万一に備えて持ち歩いてはいる。  
「いらないわ、だから早く……入れなさい……っ」  
潤んだ目で僕を見る。  
「うん……入れるよ」  
 
僕は自分のものを戦場ヶ原の秘口にあてがった。  
熱く濡れた感触にそれだけでいきそうになったが、唇を血が滲むくらいに噛んで耐える。  
ぐっと腰を進めると、充分に濡れているせいかあっさりと入っていった。  
が、奥の方まで侵入するとぎゅううっと突如締め付けがきつくなる。  
そのきつさと熱さと柔らかさに僕は早くも限界を感じた。  
「ご……めん……もう、駄目……出したい……っ」  
僕はなんとか出るのを堪えながら声を絞り出す。  
「いいわよ」  
戦場ヶ原は僕の首に手を回し、足を僕の身体に巻き付けた。  
「好きな時に好きなだけ出しなさい、いくらでも受け止めてあげるから」  
そう囁いて僕を力いっぱい抱き締める。  
「うんっ……出すよ! 戦場ヶ原の中に! いっぱい!」  
「ええ、出して。阿良々木くんの、私のお腹の中であっためてあげる」  
「あ、あ、いくよ、いくよ!」  
「きて……きてっ!」  
「せっ……戦場ヶ原あぁっ!!」  
僕は夢中になって腰を振り、あっという間に登りつめた。  
「あっ! あっ! ああっ!」  
びゅるっびゅるっと大量の精液が放たれる。  
僕は最奥まで突き入れ、先端をぐりぐりと子宮口に押し付けながら戦場ヶ原の中に流し込んだ。  
「あっ! ちょっと! それは駄目っ! 奥は! あっ! あっ!」  
戦場ヶ原が悲鳴をあげるが、構わず僕は腰を振って精液を出し続ける。  
最後の一突きを思い切り突くと戦場ヶ原が大きく反り返った。  
「あ! あっ、あああああっ!」  
びくんびくんと身体を痙攣させ、戦場ヶ原も達する。  
暴れる戦場ヶ原を抱きしめ、唇を合わせるとすぐに舌が僕の中に侵入してきた。  
僕はそれを受け入れ、舌を絡め合う。  
「んっ、んっ……ん……っ」  
余韻も消えて落ち着き、ようやく僕らは唇を離した。  
「すごいたくさん出たわね……そんなにたまってたの?」  
「だって……戦場ヶ原が気持ち良すぎて……」  
「そう、嬉しいわ」  
もう一度、今度は軽くキスしてくる。  
「私も阿良々木くんの良かったわ、ちょっと激しかったけど」  
「うん……で、その……また、いいかな?」  
戦場ヶ原の中で僕のものは固さと大きさを保ったまま萎えていない。  
「さっきも言った筈よ、いくらでも受け止めてあげるって」  
その言葉を聞いて僕はゆっくりと腰を動かし始める。  
 
 
 
 
 

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