「火憐ちゃん、今からキスするぞ」
囲い火蜂の毒を緩和させるため、忍から聞いた方法を火憐に提案した。
「…………は?」
火憐は何言ってんだこのバカ兄貴は?みたいな表情をする。
ああ、そうか。そんなんで解決するわけがないと思っているのか。
僕も信じがたいものがあるけどものは試しだ、ダメだったとしても減るものないし。
僕は火憐の頬を両手でそっと包み込む。
そこからものすごい熱が伝わってきた。
「に、兄ちゃん?」
火憐が不安そうに見てくる。
「すぐ楽にしてやるから」
ぐっと僕は火憐に自分の唇を押し付けた。
「んむっ」
熱を、毒を吸い出すように、僕は唇を吸う。
抵抗しようと暴れていた火憐の力が抜けていった。
そのまましばらく吸い続け、唇を離して様子を窺う。
「どうだ、火憐ちゃん?」
だけど返事はなかった。
火憐ははぁはぁと肩で息をしながら頬を上気させている。
あれ、やっぱり効果ないのかな?
それとももっとちゃんとしないといけないのだろうか。
僕はもう一度火憐と唇を合わせた。
口をこじ開け、舌を強引に侵入させる。
「ん、むうっ」
歯茎をなぞり、頬の内側に舌を這わすとびくんと身体が跳ねた。
火憐の舌を絡めて引っ張り出し、口に含んでじっくりとしゃぶる。
味がなくなるくらい火憐の口内を舐め、唾液を啜った。
さあ、これでどうだ。
唇を離すとつうっと唾液の糸が引く。
「に、兄ちゃん……」
火憐は虚ろな目で僕を見つめた。
息が荒いのは変わらず、むしろさっきより熱にうかされている気がする。
「くそ、全然効かないじゃないか」
念のためもう一回……と思ったところで影の中から声がかかる。
『おい待てお前様、どう見てもそれは毒によるものではなかろうが』
(あ……)
そ、そうか、ちょっと情熱的なキスっぽくなっちゃったものな。
段々火憐の息が整ってくる。
僕は先ほど身体を拭いてやったタオルを持ってそっと退散した。
部屋を出てドアをしめた直後に叫び声がする。
『初ちゅーが! 瑞鳥くんに捧げるはずだったあたしの初ちゅーが!』
泣かしちゃったかな……ざまーみろ。