「兄ちゃん」  
「お兄ちゃん」  
僕が勉強していると妹二人が部屋に入ってきた。  
いつもなら『またか』と思うところだけども、やたら声が真面目なのが気になる。  
少し耳を傾けてみよう。  
「どうした、二人揃って」  
僕は促してみたけど、何やら言いにくそうでモジモジとしている。  
珍しい、というより不気味ですらあった。  
しばらくして月火が意を決したように言葉を発する。  
「今日、用があって隣町に出かけたの」  
いつもの正義ごっこか、と思ったけど僕は茶化さずに続きを待つ。  
火憐が言葉を繋ぐ。  
「そしたらあの男に会ったんだ。貝木ってやつ」  
「!」  
何だと!?  
確かにこの町は出てるけどさ!  
「何か……されたのか?」  
「ううん」  
二人ともかぶりを振ったのでとりあえず一安心しておく。  
「ちょっと……話を聞いただけ」  
一体何の話をだ?  
火憐の蜂のことか?  
月火の不死鳥のことか?  
それとも僕のことだろうか?  
まさか洗いざらい喋っちゃいないだろうが…………。  
「そこで洗いざらい話してもらった。怪異のこととかあたし達のこととか」  
貝木いいいぃぃぃ!!  
どこまで僕に迷惑なやつなんだお前は!  
「やっぱり……本当のことなんだね」  
月火が僕の顔色を窺ってため息のように台詞を吐く。  
仕方ない、覚悟を決めよう。  
「今まで黙ってて悪かった。でも僕はお前達を巻き込みたくなくて」  
「兄ちゃん、あたし達は別に怒ってるわけじゃないんだ」  
火憐が僕の言葉を遮る。  
「あたし達、兄ちゃんのことをちょっと軽く見ていた」  
「でも、お兄ちゃんはずっとずっと私たちを守っててくれてたんだよね」  
まあ、僕は兄だしな。  
妹を守るのは当然のことだ。  
「やっぱり……兄ちゃんは格好良いよ」  
「私たち、お兄ちゃんの妹で良かった」  
まさかこいつら妹にこんなことを言われる時が来ようとは。  
にやけそうになる顔を我慢して言葉を返す。  
「ありがとう。じゃ、僕は勉強の続きが……」  
「あたし達じゃこんなことくらいしか出来ないけど」  
「お礼くらいはさせて、お兄ちゃん」  
突然二人とも脱ぎ始めた。  
待て待て!  
お前達の思考回路はどうなっているんだ!?  
感謝の表し方なんていくらでもあるだろ!  
暴力を振るわないとか暴言を吐かないとか!  
だけど妹二人はあっという間に全裸になってしまった。  
一応大事なところは手で隠しているのが逆にエロい。  
「兄ちゃん……」  
「お兄ちゃん……」  
 
 
 
 

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