「よし、オナニーでもするか。ああ、心配しなくていいぞ阿良々木先輩、ちゃんと自分の身体を慰める。私の身体なんだから問題なかろう」
「僕の身体を使おうとしてるのが問題なんだよ!」
神原(体は僕)が僕(体は神原)を押し倒す。
筋力では僕の操る神原の体のほうが上ではないかと思うのだが、不意打ちだったので簡単に上をとられてしまった。
そのまま神原は僕の服に手をかけ、一気に……
「っておい、まてまて!今はこの怪異への対処を話すシリアスなシーンだったはずだ!」
体が入れ替わってしまうなんて漫画や小説では使い古された設定だが、今の僕たちにとっては現在進行形で襲われている「怪異」なのである。
「そんなシーンは書き手の力不足により省略された、そして今の私にとってはこの体の疼きをどうにかすることがより重ヨゴフッ」
つい本気で顔面を殴ってしまった。
想像してみてほしい、ニヤニヤした自分の顔が目の前に迫ってくるのだ。この行為を誰が責められようか。
まあ、ダメージを受けるのは僕の体なわけだから許してほしい。
「ハッ、今の状態なら自分の体を傷つけずに痛みだけを楽しめる?どれ、火傷が残る温度じゃないと融けない蝋燭があったはずだ」
「やるなら自分の体でやれ!」
さすがに神原の一時の楽しみのためにそんな傷を負う気にはなれない。
「冗談だ、尊敬する阿良々木先輩の体に火傷させるなど私には出来ない。さて、話を戻すが」
「ふう、この程度の長さのギャグパートですんで良かった……」
「オナニーでもしよう」
「僕の見通しが甘かった!」
シリアスは省略されてるから戻れなかったのか?
僕は書き手を恨むぞ!
「やはりこういうことは雰囲気作りが大切だな、冗談ではなく本気でしたいのだという空気を作れば、空気を読むことにかけては右に出る者のいない阿良々木先輩だ、頑なに拒みはしないのだろう?」
「自分に襲われるのを許容できる空気なんてねえよ!」
「………」
「………?」
神原は急に黙ってしまった。見れば何やら神妙そうな顔をしている。
というか僕の顔で神妙そうな顔なんてできたのか。結構本気で驚きだ。
こ、これが神原の言う雰囲気作りという奴か、さすがは神原、エロの為なら僕の顔を表情筋だけでイケメンにすることなど容易だというのか!
「阿良々木先輩……」
神原はゆっくりと僕のことを抱きしめ