春日井春日がかつての同僚と再会したのは、京の地を離れた後だった。  
いや、再会という言葉はこの場合当てはまらない。  
春日はその同僚、兎吊木垓輔とは顔をあわせたことはない。  
いや、それすらも当てはまらない。  
だが、春日にはどうでもいいことだ。  
兎吊木が生きていようが死んでいようが、自分の人生に関係しようがしまいが興味はない。  
だから、いつもと同じく、対応した。  
それだけのこと。  
が、兎吊木の方はそうでもなかったらしい。  
「そうだ、これから食事にでもいかないかい?」  
さも名案だといわんばかりにとても偽者臭い爽やかな笑顔で春日を食事に誘う。  
「それならこの先の『割烹・神無月』がいいよ」  
春日井春日は、いつもの調子で誘いをうけた。  
 
差し向かいで一組の男女が食事を取っていた。  
はたから見れば大人なカップルの優雅な食事にも見えなくもないが、会話に恋人同士の甘やかな雰囲気はない。  
かと言って事務的な話かと言われればそぐわない。  
食前酒に始まり、先附け、前菜、椀盛り、お造り、焼き物、強肴、蒸し物、酢の物、寿司、止め椀、水菓子。  
〆て1万5千円といったところか、2人は充分な量の食事を充分な時間をかけて、そしてそれ以上に無意味な会話に時間を費やした。  
無意味で無駄で無感動な話だと、お互いに認識しあいながらの会話だ。  
そこにかりそめでさえ生産性はない。  
「さて」  
コトリと湯飲みが机に置かれる。  
「突然ですが、兎吊木さん」  
春日は妙に神妙な表情になった。  
クールな無表情が春日のスタンダートな表情なのだから、『神妙な』表情でさえ表情があると言うだけでソコソコ珍しいのかもしれない。  
「おなかが一杯になったのでいやらしいことがしたくなりました」  
 

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