――学習塾跡。
「一つ質問があります」
「何や。鬼畜な兄ちゃん」
「その『鬼畜』ってなんですか?」
「あんさん鬼やろ? だから鬼畜や」
「じゃあ鬼でいいじゃないですか。わざわざ印象の悪い言葉を使うことはないでしょう」
「兄ちゃんは鬼畜や。それは事実やないか」
「どこがですか!?」
「出てくるヒロイン全部たぶらかしよって。妹にも手を出す男を鬼畜以外に呼ぼうとも思わん」
「影縫さん、交渉しましょう」
「話しぶった切って何言うてんねん。そんなもんなしでおどれの妹を滅ぼすだけやわ」
「まあ、そう言わないでください。僕と斧乃木ちゃんで勝負をして勝ったほうが何でも言うことを聞くというルールでどうでしょう」
「そんなん受けるいわれはないやろ? 面倒くさいわ」
「人間もどきの僕に怪異の斧乃木ちゃんが勝てないと言うわけですか。じゃあしょうがないですね」
「ちょい待ちい。こいつはそんなに弱ないぞ。そういや鬼畜な兄ちゃん、いっぺんこいつの力見てびびっとったやろ」
「じゃあ勝負を受けてもらえるということでいいんですね?」
「そやな、もしも兄さんが勝ったらなんでも言うこと聞いたる。あれを狙わんといてくれっていう要求でも呑むわ」
「わかりました。では勝負の方法を説明します」
「なんや、闘うだけちゃうんか。まあええわ。好きにせい」
「ありがとうございます。先に相手を五回イカせたら勝ちということで」
「な、何言うとんや!?」
「この日の為に日夜忍に鍛えてもらってきたんだ! だから勝負してもらいます!!」
「単に二人でエロいことしとっただけやろ! 無理矢理美化しようとすな!!」
「『この日の為に』頑張って努力してきた僕らに向かってなんてことを言うんですか!」
「えらい『この日の為に』って言葉を強調しとるけどな、おまえら、ただ毎晩のようにさかっとるだけのことやろが!!」
って感じで斧乃木ちゃんとエロ勝負することに…
でもエロにいかずに話を続けたら、
「何てことを言うんですか!! 忍を成長させる危険を犯して毎日鍛錬してきたというのに!!」
「……あんさん、やっぱりただの鬼畜やわ。元ハートアンダーブレードと殺り合ったって聞いた時にはどんな奴かって興味があったんやけど……」
「ありがとうございます。僕のことを認めてくれていたんですね。ってことは僕をいじめるのは好意の裏返しということなんでしょうか」
「違うわ!」
「赤くなるところを見ると図星のようですね。斧乃木ちゃんと勝負をさせようとしないのは嫉妬からですか」
「そんなわけあるか!!」
「ますます顔が赤くなりましたよ。もしかして自分で気付いていないだけかもしれませんね」