「というわけでトリをつけてみました、ちゃんと出来ていますか?」
「…………」
「どうしたんですか阿良々木さん、そんな恍惚の表情をして」
「してねえよ! むしろ憮然とした表情だよ! 絵がないんだからそういうのはやめろ!」
「失礼、噛みました」
「嘘だ、わざとだ」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「買いました」
「コミケで随分散財したよな……」
いつものやりとりを済ませ、僕はふう、と息をつく。
「僕たちさ、確か部屋で一線を越えようとしてた気がするんだけど」
「はい? ついに妄想と想像の区別がつかなくなりましたか?」
「いや、その二つはだいたい同じ意味だろ、それを言うなら妄想と現実な」
「いやですね、阿良々木さんには現実なんてありません。あるのはその二つだけです。せっかく二つあるものを一つにしてどうするんですか」
「お前も大概ひどいことを言うよな……」
残念ながら戦場ヶ原には及ばない。
あいつに比べれば八九寺の悪口なんて月とすっぽんだ。
「月のモノにすっぽんぽん? 頭の中がピンクなのにも程がありますよ」
「そんな聞き間違いが有り得るか!」
「ちなみに私はまだ月のモノはきていません」
「……………………」
そんなことを言われても反応に困る。
「ですのでこんな私との情事など需要もありませんのであれはなかったことに」
「あるよ! 少なくとも僕が求めてる! 早くベッドシーンに取りかかるぞ! 今回のこれはNGだ!」
「じゃあちょっとやり直してみますか」
「え?」
八九寺はこほんと咳払いをし、僕を睨むような表情をする。
『話しかけないでください、あなたのことが嫌いです』
「そこからかよ! 今まで築き上げてきた僕たちの関係もリセットされてしまうだろうが!」
「吹けば飛ぶような薄っぺらい関係など必要ないでしょう?」
「八九寺…………僕はお前のことをマジで好きなんだ、そんなこと言われたら悲しくなっちまう」
「泣きそうな顔してマジ告白しないでください」
八九寺ははぁ、とため息をつく。
「わかりました、ベッドシーンに移りましょう。確か私の服を脱がすところからでしたっけ?」
え? マジで?
僕は思わず伏せた顔を上げる。
「ただし、作者の気が向いたら、です」
「なんだよそれ……」
「まあ気まぐれで荒らしですからね、鬱陶しい方はNG登録することをお勧めします」