旅も終わりが見えてきました。  
刀集めも終わりが見えてきました。  
終わったあと二人はどうするのでしょうか?  
二人とはもちろんこの二人。  
奇策士とがめ。  
虚刀流鑢七花。  
今回の相手は一味違う!  
対戦札は七花×とがめ! 違う意味ならとがめ×七花!  
そして己の中にある理性と本能!  
今夜、今までにない激しい闘いが二人の間に繰り広げられる。  
とまあ今回のあらすじはそんな感じで!  
対戦格刀剣絵巻!  
見たい聞きたい時代劇?  
誰得俺得大荒らし。  
刀語、番外編前編♪  
 
 
「うーん…………ん?」  
ごろんと寝返りを打ったとがめはふと視線を感じて目を覚ます。  
わずかに差し込む月明かりを頼りに横を見ると、布団に胡座をかいた七花がこちらを見ていた。  
「ん、起きたのかとがめ」  
「そなたこそ起きたのか…………いや、まだ寝ていなかったのか」  
七花の布団に乱れがないのを確認して訂正する。  
とがめは起き上がって布団に座り直した。  
「ん、あんたの可愛い寝顔を見ていたら時間が経っていた」  
「………………」  
ぶしゅううぅぅ。  
この時代にはまだ新しい擬音と表現でとがめの顔が真っ赤になった。  
が、そこは胆力と頭脳を持ち合わせる奇策士、すぐに真顔に戻る。  
「馬鹿なことを言ってないで早く寝るが良い。明日も早いのだぞ」  
こほんとわざとらしい咳払いをしながら七花に注意した。  
が、七花は事も無げに答える。  
「大丈夫だよおれは一晩二晩寝なくても。それよりとがめの顔を見ている方が楽しいし心休まる。何よりやる気が出るしな」  
ぼんっ!!  
またもや新しい擬音を発するとがめの顔。  
どうして。  
どうしてこの男はそんな言葉をはいて平然としているのだ。  
わたしはこんなにも恥ずかしい思いをしているというのに不公平ではないか!  
ここはひとつ主従関係というのをはっきりさせておかねば!  
さて、どうしてくれようか。  
「……………………」  
何も思い浮かばない。  
もともと主従関係ははっきりしているので今更何かしようとしてもそれこそまさに今更なのであった。  
「どうしたんだとがめ、突然黙って」  
七花がとがめをじっと見る。  
これっぽっちも疑いのない純粋な瞳で。  
権謀術数を駆使し、疑えるもの全てを疑ってきた奇策士を。  
ふっととがめの肩から力が抜ける。  
本当に今更であるが。  
とがめはいつの間にか七花に惚れているのだった。  
頭の中から策や考えを抜いた時、とがめは自然と七花ににじり寄っていた。  
そのまま顔を寄せて。  
「ちゅう」  
……………………。  
しばらくして唇を離す。  
七花の表情が締まりなく崩れていた。  
くすくすととがめが笑う。  
「ん、嬉しかったか?」  
「あ、ああ」  
「そういえばこれだけの長旅に突き合わせているのに褒美を全然やってなかったな」  
「いや、おれはおれの意志でやってるんだから」  
「そなたの方からしてよいぞ」  
途中で言葉を遮り、目を瞑るとがめに思わず七花は息を呑んだ。  
慌てて唇を押し付け、がつんと歯がぶつかり合う。  
「何をするこのたわけが!」  
 
「わ、悪かった、つい」  
ぺこぺこと平謝りする七花。  
これが今現在日本最強の剣士だとは傍目にはとても見えなかった。  
「まったく、そなたは女の扱いはからきしであるな」  
「島育ちのおれに言われてもな…………」  
少し開き直り気味な七花にとがめはやれやれというため息をつく。  
そしておもむろにすっと立ち上がった。  
「寝るぞ、七花」  
「ん、ああ、お休み」  
「ちぇりおっ!!」  
とがめは座ってる七花の胸板に前蹴りを放つ。  
さすがに予想外の蹴りだったのでよろめいた。  
「何すんだよとがめ!」  
「意味が違うわ! ただ『寝る』のではない!」  
もちろん島育ちの七花に男女の遠回しの比喩がわかるはずもない。  
が、平静を装ってはいるもののかなり勇気を振り絞った言葉をあっさりと流されては前蹴りのひとつもしたくなるものである。  
「わたしを抱けと言っておるのだ!」  
「ん、ああ、抱っこか。いいぜ、ほら」  
両腕を広げてとがめを迎え入れようとする七花。  
が、そこに飛び込んできたのはとがめの再びの前蹴りであった。  
「それはそれでしてほしいが今は違う!」  
「何なんだよいったい、頭使うの苦手なんだって」  
とがめはため息をつき、するりと寝間着を脱ぐ。  
月明かりに照らし出されるとがめの裸身。  
全体的に小振りとはいえ出るところはしっかり出ており、その白い肌は夜目の利く七花には眩しくすら見えた。  
「この身体を見てどう思う? 何も感じんのかそなたは」  
「どうって…………綺麗だなあって」  
直截的な物言いにまた少しだけうろたえるが、とがめはすぐに言葉を続ける。  
「何かしたいとは思わんのか? その……触ったりとか」  
「思うよ」  
「…………」  
即答する七花に言葉を失うとがめ。  
七花は続ける。  
「とがめといるといつも思ってる。とがめに触れたい、とがめの匂いを嗅ぎたい、とがめを見ていたい、とがめを味わいたい、とがめの声を聞きたい、とがめを」  
一気に言葉を吐き出したあと、一旦間を空けた。  
じっととがめを見つめながらさらに続ける。  
「離したくない、ずっとそばに置いておきたい」  
本来の主従関係から見れば最後は逆の立場なのだが。  
とがめにはそんな考えはちらりとも浮かばなかった。  
七花に名前を呼ばれるたびに身体の芯が熱くなるのがわかる。  
「…………良いぞ」  
とがめは布団に横になり、七花を見る。  
両腕を広げながら七花を誘う。  
「今は主従関係など忘れてしまえ。そなたの好きにするがいい」  
 
「い、いいのか?」  
「わたしがいいと言っておる」  
「で、でも昔姉ちゃんが『女の身体にむやみに触ってはいけない』って」  
「ちぇりおっ!」  
寝たままの姿勢で蹴りが飛んできた。  
もう三度目である。  
「こんなときに他の女の話をするでない!」  
「女って…………姉ちゃんだぞ」  
あんたの嫉妬深さは異常だ。  
七花は呆れる。  
「いいから早くせんか! 主人のいうことは素直に聞け!」  
「主従関係は忘れろって言ったばかりなんだが…………」  
それでも七花はとがめの身体に手を伸ばす。  
そっと手を這わせながら上から覆い被さった。  
が、無言でとがめに押し返される。  
何かと思ったら七花の寝間着をくいくいと引っ張った。  
どうやら脱げと言ってるようだ。  
七花は鍛え抜かれたその肉体を晒し、再びとがめに覆い被さる。  
そのまま背中に手を回してぎゅっと抱き締めた。  
「とがめの身体柔らかいな。それに温かい」  
「そ、そうか」  
まずい。  
まだ七花に何かされているわけでもないのに下腹部がどんどん熱くなってる。  
濡れているのが自分でもわかるくらいだ。  
だけど隠そうにも脚の間に七花が割って入っているので脚を閉じることができない。  
どころか七花の身体が一部触れている。  
「ん、あれ? なんか濡れてるぞ」  
案の定すぐに気付かれた。  
七花は飛び起きてぐいっととがめの脚を掴んで広げさせる。  
「だ、大丈夫かとがめ! これ何か病気とかじゃないよな!?」  
「ちっ、違う! 違うからそんなに見るなっ!」  
「え、でも…………」  
「説明してやる! 説明してやるからその手を離せ!」  
「あ、ああ」  
結局。  
そこから半時くらいかけてとがめは七花に性教育を施した。  
身体が火照って仕方なかったがやむを得ない。  
「どうだ、理解したか?」  
「んー……だいたいは。人間の身体って意外と複雑なんだな」  
「よし、ならば実戦といこう。わたしの身体を好きにするがいい」  
七花は改めて横になったとがめにのしかかる。  
先ほど習ったことを思い出しながら七花はとがめの身体をまさぐり始めた。  
 
 
 

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