「どうした様刻くん、君の手番だよ」
「…………」
「まさか君ともあろうものがこの局面で悩んでいるわけではあるまい、ここはどうみても2二飛成か6五飛だろう。要は攻めるかかわすかだ」
動きの止まった僕を見ながら病院坂は訥々と話す。
「それともまさか様刻くんは飛車を捨ててまで新しい局面を産み出そうというのかい? 今この状況は捨て身に出るほどのものとは思えないが」
僕はため息をついた。
顔を上げて病院坂に向き直る。
「何で僕たちは保健室で将棋を指しているんだろうな…………」
「ん? 君が妹さんと下校時間を合わせるための暇つぶしではなかったか? まさかそれは嘘で僕に会いたかったとなれば喜びの極みだがそんなことはないのだろう?」
確かに委員の仕事がある夜月と一緒に帰ろうと思っていた。
暇つぶしにここに来たのも事実だ。
が、問題はそこではない。
「少しメタなことを言わせてもらうけど、どうして僕たちの日常がこのスレに書かれているのかってことさ」
「メタな質問にはメタな答を返させていただこう。刀語の七花×とがめがいまいち反応薄くて打ち切りになったからさ。自重中で化物語が書けない以上僕たちに焦点が当てられたというわけだ」
「……一応僕には琴原りりすという恋人がいるんだが」
結局僕は6五飛を選んだ。
まだ敵陣に切り込むには早過ぎる。
あっさり飛成を許すほど病院坂は弱くない、何かしら罠があると見ていいだろう。
「でも君は僕を好いてくれているのだろう? そして僕は君が好きだよ。今までの人生で出会った中で一番」
飛車の斜め前に先ほど交換した角を打ってくる。
しばらくはお互い読み切っていた展開なので淀みなく進む。
が、しばらくしてピシリ!と一際大きな音を立てて駒が置かれたとき、僕の動きが再び止まった。
「4五桂…………だと?」
まったく予想だにしなかった手に驚く。
そんな手があるのか?
その手の意図を読もうとしたとき病院坂は勝ち誇ったように言う。
「というわけで様刻くん、この勝負に僕が勝ったら僕を抱いてもらうよ」
「ある程度局面が進んだところでそんなことを言うのはどうかと思うぞ。僕が勝ったらどうするんだ?」
「ふむ…………その時は僕を好きに抱いてよい」
「おんなじじゃねえか」
平静を装ったものの、僕の目は盤面に釘付けになっていた。
完璧だ。
今のこの一手で決着がついた。
どう頑張っても負けるルートしかない。
僕は持ち駒を盤面に落とす。
「ありません、負けたよ」
「おや、随分諦めがいいな。まだ粘れるとは思うが」
「無駄だろうよ、ここは男らしく負けを認める」
「ふむ、いい心掛けだ」
病院坂は将棋盤を片付け、座り直す。
満面の笑顔を僕に向け、両腕を広げた。
「ならば男らしく僕を抱いてくれるのだろうね」
だから約束なんかしてねぇっての。
でもまあ。
夜月との待ち合わせまでまだまだ時間もあるし、僕もこいつが嫌いではない。
据え膳食わぬはなんとやらだしな。
決して体操着を押し上げる形のよい巨乳に惹かれたわけでもブルマから伸びるすらりとした白い脚に魅入られたわけでもないことをここに記しておこう。
僕は病院坂をベッドに押し倒して唇を合わせた。
そのまま覆い被さってむにゅむにゅと両胸を揉みしだく。
うん、やはり巨乳は素晴らしい。
琴原や夜月では絶対に味わうことのできない感触。
舌を絡め合いながら僕はその柔らかさを堪能する。
唇を離すと口周りの唾液をぺろりと舐めとった病院坂がくすくすと笑う。
「様刻くんは随分と僕のおっぱいがお気に入りのようだね」
「……前にも言ったろ。僕は大きい胸が好きなんだよ」
頬を上気させた病院坂にちょっとドキッとしながら僕は体操着を捲り上げる。
ぷるん、と擬音を発しそうなほど大きな胸が揺れた。
「んっ……」
その胸に触れようとする前に僕は呻き声をあげる。
病院坂がズボン越しに僕の股間に触れたのだ。
「これはこれは。僕のおっぱいだけでこんなにも興奮してくれたのかい? 実に嬉しいね」
そのまま内腿や尻の方まで撫で回してくる。
気持ちいいのだが中途半端でもどかしさを感じてしまう。
が、僕が何か言う前に病院坂が再び言葉を発する。
「よし、そんな様刻くんに大サービスだ。よければ挟んでやろうかい?」
「挟むって……何を?」
まさか。
「もちろん決まっているではないか、君のはちきれんばかりに大きくなったものを僕のおっぱいで挟んであげようというのだ。世間一般ではパイズリと呼ばれるプレイだな。どうだい?」
「え、あ、うん」
巨乳好きなら一度はやってみたいと思うが、ついぞ機会がなかった。
いざ機会に恵まれると戸惑ってしまい、言葉が上手く出てこない。
「感謝したまえよ、これは本来とても高い料金なのだから」
そういえばこいつは売春してるんだっけ。
もう充分な資金は貯まったとか言ってたから最近は控えてるらしいが、真相なんかどうでもいい。
結局僕が病院坂を好きなのに変わりはないからな。
「……ちなみにいくらなんだ?」
「知りたいかい?」
ふふっと病院坂は悪戯っぽく笑う。
そして口にしたその金額に僕は驚く。
「高すぎるぞ! 一介の高校生が払える金額じゃないぜ!」
「うむ、一番高い料金だからな。だから誰も僕のおっぱいでしたことはないのだよ」
「どうして……僕にはしてくれるんだ?」
「君が様刻くんだからだよ」
病院坂は僕の目をじっと見据えながら言う。
「君が僕の大好きな様刻くんだからしてあげたくなったのだ。僕の初めてのおっぱい、受け取ってくれるかい?」
そう言って病院坂はブラのホックを外す。
締め付けから解放された胸が揺れる。
僕は無言のまま病院坂にキスをし、すぐに離れてズボンのベルトに手をかけた。
やがてびん、とそそり立ったモノが晒される。
病院坂の腹の辺りをまたぐようにし、胸の間に差し入れようとするところで制止された。
「ちょっといいかい様刻くん?」
「何だよ」
「やっぱりタダというわけにはいかないな」
「病院坂…………」
いや、ここまで来てそれはないだろう。
僕の表情を見て病院坂はくすくすと笑う。
「いや、なにも金を払えと言っているんじゃない。ひとつ条件をつけたいのさ」
「条件?」
「なに、簡単なことさ。こういう時だけでいいから君には『くろね子さん』と呼んでほしいな」
「…………わかったよくろね子さん」
ふふっと病院坂ははにかむ。
僕のモノに合わせて身体を少し動かし、胸の間に来るよう調整する。
「では行くよ」
言うなり病院坂は左右から脇を締めるようにぎゅっと腕で胸を押さえつけ、僕のモノを柔らかな脂肪で包み込む。
「あっ、うわっ、わわっ」
「どうしたんだい様刻くん、変な声をあげて」
病院坂はニヤニヤしながらぎゅむぎゅむと胸を押し付け、リズムよく上下に擦りあげる。
意識がぶっ飛びそうなほどの快感が駆け巡った。
「気持ちいいならいいと言ってくれると僕としては嬉しいのだがどうだい?」
「い、いいっ……くろね子さんの胸、気持ちいいっ!」
「ふふ、なんならこのまま出してしまっても構わないよ」
「う、うあああっ! あっ! あっ!」