「神原駿河だ」
「………」
「小学生の頃のあだ名は『タンバラー』だ」
「いや、お前のあだ名とかは正直どうでもいいよ」
「その私を魅了してやまないソプラノボイスは、阿良々木先輩だな」
「そんなに高くねぇよ!」
「身長がか?」
「神原、次にそんな感じの事を言ったら、僕は泣く」
「しn…」
「てめぇなんの淀みも無く!!」
「阿良々木先輩の泣き声!」
「主語しか出ないほど興奮してるのかお前」
「…いや、失敬。私らしくもない」
「すごいお前らしかった」
「そう言ってもらえて光栄だ」
「そうかい。で、どうしたんだ、お前から電話をかけてくるなんて」
「いや、特に深い意味はなかったのだがな」
「ふんふん」
「強いて言うなら阿良々木先輩の御声が聞きたかっただけだ」
「そうか。お前の目的が達せられて何よりだ」
「あ、いや、失敬。阿良々木先輩の喘ぎ声が聞きたかっただけだ」
「言い直してんじゃねぇよ! 喘がねぇよ!」
「そうか、悲しい限りだ…」
「本気で落ち込むなよ…」
「まぁ、こうして阿良々木先輩と話せてるだけでも良しとしよう」
「そうしてくれ」
「いやしかし、この距離で阿良々木先輩の声を聞くのは実に良い」
「…考えてみりゃ、聞こえるのは耳元だもんな」
「ああ。先程から息継ぎついでにキスしている」
「電話にか!?」
「電話にだ。さすがに本物にするわけにもいくまい」
「そ、そうか…」
「いやしかし、無事に阿良々木先輩にかかってよかった」
「え? お前電話帳機能とかは?」
「ははは、おかしなことを言う。電話に電話帳なぞ入るまい」
「…お前、かけた相手が僕じゃなかったらどうしたんだ」
「女性だったらまず口説いた」
「うるせぇよ、もう…」