「おい、お前様よ、儂等はすでに一心同体も同然じゃな?」
「なんだよ突然。うんまあ、そうなんじゃないか? お前は言うまでもないし、僕だってお前がいなきゃどうにもならないことが何度もあったし」
「では儂の苦しみも共有してはくれぬか?」
「……苦しみ?」
「そうじゃ、実際に儂が見聞きしたことなのじゃが、聞いてくれ」
「ああ、聞くくらいなら構わないが」
僕がそう言うと忍は真剣な表情で語り始めた。
「まだ儂があの小僧と廃ビルに住んでおった頃じゃ……」
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「やあ忍ちゃん、今日もいい天気だねぇ。まだ初夏だってのに暑くなりそうだよ」
「…………」
「おっと、吸血鬼にはいい天気ではなく、良くない天気というべきかな?」
「…………」
「ははは、睨まないでくれよ、今日はミスドを買ってきたからさ、半分ずつ食べようじゃないか」
「…………」
「ところで聞いてくれ忍ちゃん。ミスドで女子高生の群れに囲まれたんだ。いやあ、どうして女の子はあんないい匂いがするんだろうねえ」
「…………」
「そんなに若くない僕もすっかり興奮しちゃったよ」
「…………」
「そんなわけで悪いけど忍ちゃん、今から僕は性欲処理をさせてもらうよ。ああ、心配ない、別に忍ちゃんに相手してもらおうってわけじゃないんだ。ただそこで見ていてくれればいい」
「…………!!」
「それが終わったらこのドーナツを半分ずつ食べようよ」
「…………っ!」
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「そ、そして、そしてあの小僧は自分のズボンを」
「待て待て待て! もういい、やめろ!」
「わかるかお前様よ!? ドーナツを食べるためにあんなむさ苦しい人間の自慰行為を眺めなければいけなかったこの儂の苦悩が!」
「わからん! わかりたくもねえよ!」
「む、ならば最後まで聞かせねばなるまいか。あの小僧は軽薄な外見や性格とは裏腹に結構立派ですごいものを持っておってな」
「もう何も喋るな!」