今日、久しぶりに阿良々木さんの姿を見かけました。
いつものお返しをしてみましょう。
「阿良々木さ―――――――――――――んっ!!!」
そう言って私は阿良々木さんの身体に抱きついた。
はずでした。
私の身体は阿良々木さんの身体を通り抜け、ボディアタックをかまそうとしたせいでコンクリートの路上に叩きつけられました。
「…ぐすっ……痛いです……」
これが私が負った大きなハンデ。
阿良々木さんの日常になんの問題もなく、事情を抱えることのない状態では私のことは見えないし触れられない。
私から触ることもできない。
だから私は後の先をとらなければなりません。
ですが吸血鬼の力で強化された(と言い訳をしておきましょう)阿良々木さんに私の力では叶うはずはありませんでした。
私が阿良々木さんを見つけた時はいつもそうでした。
私は阿良々木さんにセクハラされるのを待たなければいけない。
それはもうどうしようもないことでした。
セクハラを待つ日々っていうのは……さすがにちょっと……。
小学生相手にセクハラをする阿良々木さんの頭は大丈夫なのでしょうか?
『ロリコンという言葉が出来たのが先か、阿良々木さんという存在が現れたのが先か』という思考のスパイラルに陥ります。
羽川さん。
あの方との出会い方はほとんど阿良々木さんと一緒です。
羽川さんが私を見つけると、
「はちくじちゃ―――――――――んっ!!!」
と大声を出しながら駆け寄ってきて私を後ろから抱き締め、頬をすりすりし、両腕は拘束されます。
阿良々木さんと比べると大分マシですが、それでもセクハラにはかわりありません。
その上、私が抗議しようとすると「暴力を振るう時はちゃんと相手に納得がいくように説明しなきゃダメだよ」とお説教をされます。
十分に理由は示されていると思うのですが……。
お二人の間ではあるブームが巻き起こっているようです。
『八九寺を見つけるとその日は良いことがある』
はた迷惑この上ない。
だけど。
だけれど。
ここ十年間でこんなにも楽しい日々はありませんでした。
ずっと迷子をやって、色んな人に話しかけられましたが無愛想に『あなたのことが嫌いです』と一言いえば嫌な顔してどこかへ行ってしまう。
それが普通。
なのにあのお二人は嫌がる私をまったく無視して自分の欲求だけを満たしていきます。
まったく迷惑な人たちですね。