「……阿良々木くん……」  
 
また夢を見た。  
あの時――体育倉庫の中で二人きりになった時に抱かれている夢。  
だけれど現実の阿良々木くんは私に何もしなかった。  
私はどうしてほしかったのかな。  
抱いて欲しかったのかな?  
 
抱いてもらって、それで――  
 
一緒にいたかった。  
隣にいたかったんだ。  
 
あの時は自分の気持ちに気付いてなかったの?  
もし気付いていても言えなかっただろうな。  
恥ずかしくて言えなかった、と思う。  
 
ゆっくりと時間を掛けて距離を縮めていきたかった。  
出会い方は普通じゃなかったけど、その後も普通じゃなかった。  
 
私が吸血鬼の話をしたせいで阿良々木くんはあの怪異に出会って  
吸血鬼になった阿良々木くんは命を賭けて闘って、死にそうになって、私もやられちゃって、助けてもらって、励まして……。  
 
大切な友人だった。  
だけど違ったんだ。  
私は阿良々木くんに惹かれていた。  
 
阿良々木くんの隣には戦場ヶ原さんがいた。  
あっという間だった。  
 
ゴールデンウィーク明けに阿良々木くんは戦場ヶ原さんのことを気にしていた。  
その時からなのかな?  
珍しく他人に興味を持ってたから。  
 
私が阿良々木くんに気持ちを伝える前にもう戦場ヶ原さんがいて、  
公園で八九寺ちゃんと一緒にいた阿良々木くんが戦場ヶ原さんのことを頼っていて、  
今は阿良々木くんと付き合っていて……。  
 
もう…どうしようもなかった。  
遅かった。  
 
……私は……。  
 
痛っ。  
 
最近、時々だけど頭が痛む。  
大したことじゃないけど、頭の奥に鈍い痛みが走る。  
 
私が阿良々木くんのことを考えている時によくそういう症状に襲われる。  
 
……勉強しよう。  
そうしたらよくなるから……。  
 
 

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