・するがローズ エピローグ
国道沿いのミスタードーナツ。
「ふん…やはりアロエヨーグルト味かの…いや抹茶も捨て難いの…」
「いいから話を聞け、忍。何のためにドーナツを奢ってやったと思ってるんだ」
「もへもへ…ふまむも…」
「食べてから喋れ!」
右頬にはフロッキーシュー。
左頬にはD-ポップ×3。
さらに、口にチュロス(シナモン)を咥える。
何だか、冬眠前のリスみたいで微笑ましい。
「…ぬし、今笑ったじゃろ」
「え!?いや全然!滅相もない!」
「本当かや……。して、何の話じゃったかの」
「昨日の神原の話だよ!さっき言ったばっかだろ!」
コイツ、歳くってとうとうボケたのか。
「…聞こえておるぞ…」
「嘘だっ!」
「前にも言ったじゃろう、儂とお主の感覚は共有されておると」
「ああ…そういやそうだったな」
「じゃから、主様が絶頂に達した時は色々破裂しそうで大変だったわ」
「どこが!?」
「…れでぃーの口からそれを言わせるのかや」
「あ、いや…そんなつもりは」
「脳幹じゃ」
「どうしてそんなところっ!?」
「頭の使いすぎじゃ」
「使いすぎで破裂するモノなのか!?」
やっぱり、リアルにボケてきてるんじゃないか。
見かけは子供、頭脳は痴呆!
その名も吸血鬼シノブ!
「…全部聞こえておるぞ」
「…悪かったよ。で忍、あのまま神原を放置してたら一体どうなったんだ?」
「どうもこうも…薔薇は知らんが、藤や蔦なら知っておるぞ、まあ同じ植物だか
ら、結末も同じじゃろう」
「そんなものなのか、で?」
「主が体験したように、大概植物の怪異は人を糧とする、人を喰ろうたり取り込
んだりして成長していくのじゃ」
「ええと…つまり?」
「あのまま放っておけば、小娘は怪異に取り込まれ、ぬしらも喰われていた、と
いうことかの」
「…結構恐ろしい怪異だったんだな…」
「安心せい、街中を覆うような大樹になるには数ヶ月はかかる、その間に、燃や
してしまえばいい話じゃ」
「でも、それじゃあ神原が…」
「うむ、確実に助からんの」
「そうか…よかった」
薔薇とは違うが、蔦などの植物は他の木に巻き付いて成長する。
そして、成長するにつれていつの間にか巻き付いていた木を締め上げ、枯らして
しまうそうだ。
それを考えると、巻き付かれた神原はあの時点でかなり危険だったのかもしれな
い。
決して解けない蔓。
締め上げられる幹。
まさに、「絞め殺し植物」に相応しい諸行といえよう。
「あーっ!」
「どうした忍!?」
「アップルパイ…落とした…」
「…もう買わないぞ」
サイフ(マジックテープ)残金 残り437円
するがローズ こんどこそ 完