場所――自宅の風呂! 
 登場人物――僕、月火! 
 概略――全裸の僕と全裸の月火ちゃん! 
 
 へた暗喩陽喩を使って状況をつたえるよりも、よっぽどわかりやすいと自負する。わかったよね、今の状況。 
 
「本当、お兄ちゃんの趣味って特殊だよね。変態って言葉が陳腐にきこえるくらい、変態だよね」 
 
 月火はためいき交じりにそういって、握っていた僕の局部を指先ですりあげる。阿良々木家のお風呂場で繰り広げられている変態行為といえば、まあある程度事実を示している。僕は全裸で座高の低いお風呂イスに座り、月火は僕の股の間にひざまずいていた。 
 
 もちろん全裸で。 
 
 髪をあらったわけではないので、しっとりと濡れた月火の黒髪は、いまつきあいのある女の子のなかで一番長い。月火は自覚していない「しでのとり」の特性から、あっという間に髪が伸びてしまう。具体的には肩胛骨と腰の中間に毛先がくるくらいまで伸びている、月火の髪。昔の戦場ヶ原と同じくらい。 
 
 火憐のリクエストなのか、まわりのファイヤーシスターズ・ファンの要望によるものなのかはわからないが、月火は伸びた髪をアップにしたり、ポニーテイルにしたりすることが多くなった。 
 これがまた月火の着る和服と相性が良く、なまっちろくも色っぽいうなじのおかげで、ファイヤーシスターズのファンが増えたとか、増えなかったとか。 
 ともかく三ヶ月ほどのスパンを経てファイヤーシスターズにポニーテイルが復活していた。 
 
 だけど、これからはじめてもらう行為を欲したのは僕だが、実行する権限は月火にあることだけは、あらかじめ明らかにしておきたい。 
 
 誰に対しての弁明なのか、僕自身もわからないけれども、月火はそんな言い訳の間にも僕の局部を刺激するのをわすれない。 
 
「実の妹にこんなことをさせるんだからさ。変態暦ってよばれても文句はいえないよねー」 
「実の兄にクンニされてよがってたのはおまえだろ……やってることは五十歩百歩だ」 
「まあこっちも好きでやってるんだし、文句はいわないけどさ。エッチしたい気分じゃないし」 
「そのあたりの感覚は、中学生が持つ感覚じゃないんだけどな……」 
 
 今日は気分がむかないからエッチしない――とかさ。 
 どれだけ情事に慣れてきてんだよ。大人の女性の、さらにその先にあってしかるべき感覚だと思うんだけど……。 
 
「んじゃ、はじめるね……お兄ちゃん……」 
 
 局部から十センチくらい手前で顔をとめた月火は、 
 月火は背中にはりついていた髪をすくい上げ、毛筆の先のようにまとめあげる。その先端を僕の局部に近づける。 
 先走りの液とお湯で濡れたカサに――髪の毛がふれた。 
 
「うおっ……」 
 
 いままで経験のない感触に、おもわず腰が浮いた。 
 舌や指とは全くちがう。なで回される感覚とでもいうのか。 
 月火は目をまるくした。 
 
「お兄ちゃん。やっぱりエッチだよね。妹の髪の毛で感じちゃうなんて……」 
「つ、月火ちゃんだってさっきお尻で感じてたろ! おあいこだ、おあいこ」 
「口ではなにをいってもいいけどねー」 
「お前のその余裕はどこからくるんだ」 
「だっていまは、こっちの番だし、せっかくやるなら気持ちよくなってもらいたいしね」 
 
 今度は毛先を尿道に沿って上下させる。固く膨らんだ尿道はそのわずかなにさえも反応する。想像以上の心地よさだ。ふれるか、ふれないかの刺激。期待する部分に刺激はこなくて、まったく予想していなかった部分が刺激されたりする。特に裏スジのあたりに毛先があたると、僕の意志とは関係なく、局部がびくびくと反応し、尿道口から透明な液を分泌させた。 
 口では余裕ぶっている月火でも、初めての試みには緊張するらしい。 
 さっきよりも顔が前のめりに、すなわち僕の局部に顔をよせてしまっている。局部を倒せば、月火の顔にあたってしまうくらい、近くに。 
 興奮気味の息づかいが局部に当たった。 
 
「ん、ちょっと難しい、かも……大丈夫? 気持ちいい?」 
「あ、ああ……大丈夫。気持ちいいよ、月火ちゃん……」 
 
 正直、答えるのが精一杯だ。 
 僕の反応に気をよくしたのか、月火は空いた手を玉袋にのばしてくる。皺だらけの玉袋を月火の手のひらが優しく包む。中の精巣をほぐすように揉まれる。 
 男性として大切すぎるところを犯されている快感に僕の背筋が震えた。 
 
「お兄ちゃん……予想外にかわいい……」 
 
 上目遣いの月火がなにか萌えるものを見つけたかのように、目をとろけさせていた。 
 忘れていた。 
 月火はドSだった。そして今の目は獲物を見つけたときの目に違いない。 
 
「この辺りとか、どうなのかな……」 
 
 一度髪をつかみ直した月火は、今度は局部の先端で毛先を動かしはじめる。 
 
「う、あ……」 
 
 これは決定打だ。性感帯が集中する先端を毛先の柔らかさをもってなで回される。痛いほどの性感を亀頭に感じた。未だになで回されている玉袋の内側――海面帯に一気に血がそそがれ、局部の最大値を更新しはじめる。 
 
「髪の先がお兄ちゃんので、べとべとだよ……」 
 
 月火の言うとおり。局部を愛でていた毛先は水なんかよりもよっぽど粘性を帯びた液体で濡れ、月火が指でおさえていなくても、まるで墨汁をすった毛筆のようにまとまっている。 
 月火の一部が僕を犯している。背徳感を上回る、快感につられ――。 
 
「つ、月火ちゃん……お願いが……」 
「んぁ?」 
「舌も……使ってくれるとうれしいな」 
「……」 
 
 月火が唇をとがらせた。 
 
「あのね、お兄ちゃん。お兄ちゃんが髪の毛で犯してほしいって、泣いて頼むから、やってんのにさぁ――それじゃあァ、ただのフェラチオだよね?」 
 
 切れる一歩手前のテンションが、口調に現れていた。 
 最近おとなしいからわすれていた。 
 阿良々木月火は、ヒステリッカーだったということを。 
 いきなり険を増す月火の声音にびびり、ここは下手にでることにする。 
 
「あ、いや、もちろん月火がよければの話だけど――髪の毛も十分、こそばゆくって気持ちいいんだけど」 
 
 なにせ、男性のなによりも大切な部位は月火の手のひらの中にある。つぶされでもしたら大変だ。 
 すると下手にでたのが聞いたのか、ぶうたれたまま、月火は、 
 
「……まあいいけど」 
 
 と言った。 
 
 いいのかよ。 
 まさかの逆転無罪――。 
 やわらかい感触が裏スジのあたりに押しつけられた。 
 ちゅるっ、と吸われる。 
 童顔の月火がそれをしてくれる禁忌感と背徳感はすさまじく、悲鳴をあげるところだった。 
 
「ちゅ……フェラチオしながら、髪の毛もつかってあげる……。お兄ちゃんをうそつきにさせたくないからねー」 
「ど、どうやって……」 
「ん、と……こうかな」 
 
 月火は髪の一房を局部にまきつけはじめた。つりに使うリールのようにくるくると巻き付け、それを握った。 
 月火の髪が巻き付いている――。 
 月火の一部で、普段は決してよごれない髪――。女の命ともよばれる美しく、普段はふれがたい神聖さすらかんじさせるものが。僕の局部に巻きついて汚れている。 
 
 汚れさせてはいけないものを、汚してしまえる、快感。 
 普段汚せないものを、大切にされているものを汚す、子供のいたずらにも似た、でも幼いときから身につけている、完成したものを汚す快感は――。 
 
 じょり、じょり、じょり。 
 
 音をさせながら月火は指を上下させた。 
 あっというまに、先走りの液とまざりあい、髪全体がぬめりけを帯びててらてら光る。局部をつつむ髪は指以上に、細かく、性感をなでまわす。 
 月火はまるでとどめをさすかのように、亀頭を桜色の唇の中に含んだ。 
 
「――! ――! ――!」 
 
 気持ちよすぎて声にならない。物理的にも、精神的にも犯されている感じ。 
 
「う、ひ、あ――!?」 
「じゅるっ、じゅるっ……お兄ちゃんの、どんどん出てくる……」 
 
 唾液の糸をひかせ、先端から口をはなす月火は、今度は顔を斜めにして、尿道の膨らみに舌をはわせる。 
 髪のぬめりに、月火の唾液も混ざる。 
 
 
 
 僕の反応を見ていた月火は、いつのまにか目をうるませていた。呼吸もさっきより甘く、激しい。 
 興奮している。 
 
「はぁ、はぁ、はぁ、お兄ちゃん……」 
 
 耐えきれない、といった風情で玉袋においていた手を離した月火は、その手を自分の股に導いていく。 
 月火の下半身から、ちゅく……と音が聞こえた。 
 角度のせいでよく見えないけど今の音から察するに、自慰行為におよび始めたらしい。 
 
「んっ、おっ、お兄ちゃん、かわいすぎ……なんでそんなに欲しそうな顔、んぁっ、してるのかな……?」 
「月火ちゃん、んっ、お前、自分で……?」 
「だ、だってしかたない! お兄ちゃんがあんまり気持ちよさそうだったから……や、ん……」 
 
 頬がとろけ、目がとろけ、月火の顔がとろけだした。 
 エロかった。果てしなく、エロかった。 
 だが、徐々に自分のほうに夢中になってしまった月火の手と、舌の動きがじれったいものになる。 
 
「月火ちゃん……だ、だんだん、動きが……」 
「あっ……ごめんなさい」 
 
 そんなふうに謝ってから、月火は元のペースで手と舌の動きを再開する。 
 
「んちゅ、あぁっ、んっ! ぺろ……」 
 
 が、やはりしばらくすると、ペースが落ちる。自慰の方に夢中になってしまう。 
 射精したいのに、後一歩が足りない感じ――。生殺しだった。 
 しかもときどき正気にもどって、僕を刺激しだすから始末に負えない。 
 そんなことが何度もつづき、射精への焦燥感ばかりが募ってしまって、 
 
「月火ちゃん、ごめん!」 
 
 そう言って僕はおもわず、片手で月火ちゃんの髪と手をつつみこんでいた。 
 
「はへっ!?」 
 
 おどろくのも、当たり前。だが、僕の暴挙 
はそれだけではおさまらず、目をみはる月火の後頭部をむりやり局部によせ、局部を口にふくませた――。 
 
 もう、鬼畜っていわれても、なにも反論できないよ。 
 
 ただ、もう鬼畜でもいいかなとか思っている僕もいた。 
 
「むふっ!?」 
 
 無理矢理ふくまされ、非難の目線を浴びせてくる月火の口から、毒舌や文句が出てくることはなかった。 
 小さな唇には僕の大きな局部がものの見事にはまっている――。 
 
「ごめんっ、月火ちゃん、ごめんっ」 
「むふっ、むふぅ――!?」 
 
 月火の手と髪をまきこんだまま、僕は局部をしごく。亀頭しゃぶってもらっているだけで気持ちよかった。 
 
「んんぅ――、んんぅ――、んんぅ――!」 
 
 いきぐるしさか、局部を口からおしだそうとする月火の舌がつっつくように刺激を与えてくる。 
 
「もうちょっと、もうちょっとだから――」 
「ん、んんっ! んっ!」 
 
 涙目で首を横にふるう月火の顔は羞恥でまっかだった。 
 心のそこから月火にあやまりながら、気持ちよさにまかせて、月火の手汗と唾液と僕の体液がからみに絡んだ髪をまきこみ、局部をしごく。 
 
「んんっ、んっ、んん――――!」 
「出すよ――月火ちゃんっ!」 
「んんっ――――!?」 
 
 限界はあっという間だった。 
 局部が勝手にはねあがり、精液を尿道口から吐き出す。 
 口中射精――。局部を引き抜いている暇はなかった。 
 
 ごぷぅ、ごぷぅ、ごぷぅ! 
 
「ん、んっ、ぷは――!」 
 
 耐えかねた月火が口をはなす。精気はものすごい勢いで吹き出し続けた。自然、発射口のすぐ近くにいた月火は、白濁液をもろにかぶってしまった。 
 
 ごふぅ、ごぶぅ、ごぶぅ 
  
 顔に、髪に、局部をにぎっている手に、幼い乳房に、白いものがふりかかっていく。 
 生殺しにされ、たまりにたまったそれらは、自分でもおどろくほど長く、吐き出されつづけた。 
 
「ごほっ、ごほっ……。すごい……」 
 
 ごふぅ、ごふぅ、ごふぅ…… 
 せき込みつつ、月火が素直に言った。 
 たしかにすごいの一言だ。すごい――えろい。 
 体のあちこちに白濁液――精液をはりつかせた月火の姿はなんというか、すごかった。 
 月火が局部から手を離し、巻き付いていた髪をほどいた。 
 巻き付いていた部分はなんだかすごいことになっていた。すくなくとも月火の唾液、僕の体液が絡みつき、まだらになった髪をみた月火は、 
 
「ふう」 
 
 と、本日二回目のため息をはいた。 
 そして月火は、体にひっついた液体を指先でさらいながらこう言った。 
 
「さあ、お兄ちゃん。罪の数をかぞえようか」 
 
 死刑判決どころか必殺判決でした。 
 それ食らって生きていられる自信はないわ。 
  
「……ごめん」 
「お兄ちゃん。こっちは罪の数をかぞえろって言ってるんだけど。このまま全裸でコンビニまで行って、ガイアメモリ買ってきちゃうけどいいかな?」 
「いや、本当、マジでごめんなさい!」 
 
 コンビニにガイアメモリなんて売ってね絵よというツッコミは封印した(実際は食玩として売っているかもしれないけど)。 
 そんな格好で外なんてでられたら、阿良々木暦は社会的に殺される――。 
 本当にそのまま風呂ドアを開けはなちかねないいきおいの月火を抱きしめた。 
 生臭い、臭い。 
 そして生臭くしてしまったのは、僕だった! 
 
「わるかった、本当にごめん」 
「はぁ……あやまればなんでも許されるとおもっちゃってるよね、お兄ちゃんは。そんな風に育てたつもりないんだけどな。髪だけじゃなくておっぱいにも……無理矢理、口とか……口の中ァ苦くって夕飯たべられなくなっちゃうよ……」 
 
 うるせえよ。 
 こんな場面でもなければぶっとばしてるぞ、おい。 
 とはいえ、今回は全面的に僕が悪い――。だまって月火を抱きしめ続ける。 
 
「それにお兄ちゃん。ごめんなさいっていうのは、言葉だけじゃなくて、行動でもしめさないといけないと思わない?」 
「ぐ、具体的には……」 
 
 月火はにやりと、唇をゆがませる。 
 
「自慰が、途中だから……いいたいこと、わかるかな」 
「……はい」 
 
 僕は月火を風呂マットに押し倒して、月火への愛撫をはじめた。 
 唾液と精液と汗で汚れた指先で、淫核にふれた。 
 
 
 
 
 
 
 
 ちゃん、ちゃん――。 
 
 
 
「髪、ちゃんと洗ってよねー。ちょっとでも残ってるとべたべただから」 
「はいはい」 
 
 完全に主導権をもって行かれた僕は、いつぞやの忍のように月火の髪をあらっていた。 
 月火に風呂イスを譲って、両手で髪をはさみ、シャンプーを泡立てる。 
 これだけの長さと量があると、一度あらうのにもずいぶん大変そうだ。 
 でも月火の髪はこれからも伸び続ける。 
 月火が怪異を内包する以上、これは一生つきまとう問題なんだろうけど。 
 
「そういえば月火ちゃん。なんでいきなり髪をのばしてんだ? いつもこまめに変えてたけど、ここまでのばしたのは初めてじゃない?」 
「ん? お兄ちゃんが好きそうだったから」 
「はっ?」 
 
 あんまりにもさらっと言われたので聞き返してしまう。 
 
「お兄ちゃんの財布の中の写真、火憐ちゃんと見ちゃったから、さ」 
 
 火憐ちゃんがすぅごく後悔してたよ――。髪きっちゃったこと――。 
 言ったきり、月火は黙ってしまった。 
 
 そんな妹の心中がよくわからず、首をかしげながら僕は月火の髪を洗いつづけた。 
 
 
 
 
 
 僕の新しい財布には、髪の長かった頃の戦場ヶ原の写真が挟まっている――。 
 
 
 
 え――? 

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