「よお、八九寺」
「ああ、兎吊木さんですか」
「僕は<<害悪細菌>>じゃないし、<<死線の青>>と知り合いでもない!
硬い言葉で難しい話を一方的に十ページ以上も喋ったこともないぞ!」
「あれはすごかったですね。すごく楽しみにしていて、家で読もうと本を開いたら一瞬で読む気を奪われました。ある種の怪異です。
まあそれは置いておいて、良く考えてみてください。阿良々木さんに関わった女性は皆さん阿良々木さんに好意を持っています。
行為をもっている方もいらっしゃるでしょう? それも可愛い女性ばかりです。
これは他の男性からしたら害悪でしかありませんし、細菌のようにフラグが繁殖していってます。
まさに<<害悪細菌>>ではないでしょうか」
「何のこと言ってんだ? 僕が害悪なわけないだろ?」
「無自覚ですか? それはなおのこと性質が悪いですね。
一話話が進むたびに一人の女性を惚れさせるていますし、実の妹にまで手を出しているのに無自覚ですか」
「ん〜〜、ああ、そうか。今日は抱き締めて、胸揉んで、頬ずりして、キスして、パンツを脱がせようとしなかったから物足りなかったんだな。
『一人の女性を惚れさせる』っていうのはお前のことで、一話進むごとにお前が僕のことを好きになっていったってことか。
素直に僕のことが大好きだって言えばいいものを。
いじらしいヤツだな、八九寺は」
「勘違いしないでください! 私はそんなことを言っていません!」
「お前がツンデレになっていたとは気が付かなかった。デレた戦場ヶ原の代わりをやってくれるのか?
そんな冒険するヤツだとは思わなかったな。劇薬入りの毒舌だからな。
あいつのマネをするのはかなり難しいと思うけど頑張れよ。
それと初めの返しはこう言ってほしかったんだよな?
『きみは阿良々木暦のことが本当は嫌いなんじゃないのかな?』って」
「私はツンデレじゃありませんし、戦場ヶ原さんのマネなんてしません! それにその台詞はまるパクリじゃないですか!」
「まあ、あんまり気にするな。『兎吊木』なんて言ったんだから、ちゃんと責任とって『大好きだ!』って叫んで僕を抱き締めてベロチューしなきゃこの話は終われない」
「その展開は全く違います! なんでエロいエロを入れるんですか! せめて健全なエロにしてください!
「健全だったらエロいことしてくれるんだな?」
「そんなわけありません!
そういえば『大好きだ!』なんて台詞、いーちゃんさんは言いましたっけ?」
「あんまり覚えていないな。お前なりに解釈した性格でもいいぞ。他の誰が認めなくても僕が認めてやるから」
「……わかりました。では言ってみましょうか。『私は阿良々木さんのことが大好きです。嘘だけど』」
「『嘘だけど』ってなんだよ!!」
「あ、間違えました。『戯言だけど』ですかね。
ですがこんな台詞ありましたっけ? 自分で言っておいてなんですけど、『好きだ』みたいな台詞もあったかどうか……。
読んだのが随分と前ですから、もうすっかり忘れてしまっていますね」
「僕もうろ覚えだからな。はっきりとは言えないけど……たぶん大丈夫だ」
「そうですか、では大丈夫だということで。
じゃあもう一度言ってみましょうか?」
「そうだな。しっかりと気持ちを込めて言ってくれよ」
「わかりました。
では。
私は阿良々木さんのことが大好きです。愛しています」
戯言ですけどね。
「そのモノローグはいらねえよ!!」