僕は夜中にふと目を覚ました。
何か気配がするなと思って身体を起こし、部屋を見渡すと忍がこそこそとしているのが目に入る。
「忍?」
呼び掛けるとびくっと身体を震わせてはじかれたように忍はこちらを振り向く。
僕はそれを見て驚いた。
服を着ていなかったとか突然飛びかかってきたことにではない、その唇の端から赤い筋が流れていたことにだ。
まさか誰かの血を吸ったのか!?
が、問い質す間も無く僕はベッドに押し倒される。
このまま僕も血を吸われるのかと身構えたがそれは杞憂だった。
いや、本当に杞憂かどうかはわからないが。
なにしろ身体が折れそうなほど力強く抱き締められたからだ。
いくら忍が細腕で身体が柔らかかったとしてもそこは怪異の王である吸血鬼、物凄いパワーだった。
「し、忍っ、ギブギブ、ギブアップ!……んむっ」
思わず叫んだ僕の口が忍の唇によって防がれる。
すぐにぬるんとした舌が入ってきて僕のに絡みついた。
「ん……?」
この味は……。
僕は力づくで忍を引き剥がし、先ほどまで忍がいたところに置いてあるものを確認する。
「お前、ワインなんてどこから…………むぐっ」
隙を突かれてまた唇が塞がれた。
本来吸血鬼は酒にも強いはずだが、小さな身体の影響か明らかに忍は酔っている。
忍の口内に残っていたワインが唾液ごと流し込まれ、僕は思わずそれを飲み込んでしまう。
吸血鬼は酒に強くとも僕自身は酒に強くない、未成年だから当たり前といえば当たり前なのだが。
すぐに身体中がかっと熱くなり、変な気分になってくる。
僕は忍の背中に手を回して抱き締め、もそもそと服を脱いで忍の身体をまさぐりだした。
「んふっ……んうう」
舌を絡ませたまま忍はとろんとした目で声を漏らし、その幼い身体をこすりつけてくる。
・
・
・
「ん…………」
窓から日が差してきて僕は目覚めた。
何だか頭がガンガンする。風邪でもひいただろうか?
起きようとすると、僕はいつの間にか裸になっており、忍が抱きついているのに気付く。
昨夜の記憶は全くないが、察するに忍が勝手に僕のベッドに侵入したのだろう。
そういえば身体が少し気だるい感じもするし、どうやら何かされたらしい。
やれやれ、とため息をつきながら僕は忍を起こさぬようそっとベッドから抜け出す。
傍らのワインの瓶を見て僕は寝ている忍に呟いた。
「酒は呑んでも飲まれるな、だぞ」