「こんな偽者だらけの世界なんて滅んじゃっていいと思うんだよね。お兄ちゃん――僕はキメ顔でそう言った」
「滅ぼすのはやることやってからにしようか。斧乃木ちゃん」
「鬼畜なお兄ちゃん。なんでお酒を用意しているの?――僕はキメ顔でそう言った」
「滅ぼすって言ったら酒は身を滅ぼすって言葉が浮かんだからな。世界を滅ぼす前にお酒で身を滅ぼしてみたいんだ」
「うん、わかったよ。しょうがないから付き合ってあげる。
でも鬼畜なお兄ちゃんの場合はお酒で身を滅ぼすんじゃなくて、彼女で身を滅ぼすんだよね――僕はキメ顔でそう言った」
「僕の周囲の人間のことを調べたのか? 戦場ヶ原のことを知ってても最近のあいつはもう普通の女の子だから身を滅ぼされるなんてことはないと思うけど……」
「甘いよ、鬼畜なお兄ちゃん。鬼畜っていう言葉が似合わないフリをするのもやめようよ。
人間なんてそう簡単に変わるものじゃないんだよ。あの毒舌が作られたものだなんて本当に思っているの?――僕はキメ顔でそう言った」
「なんで戦場ヶ原のことに詳しいのかは知らないけれど、あいつは元々優秀で明るいやつだったんだぞ」
「でも自分にとって大切な後輩を変態に仕立て上げる人だよ。平気でエッチな言葉を教えて仕込んだ時はまだ怪異に憑かれていなかったってことを忘れてるんじゃないかな?――僕はキメ顔でそう言った」
「まあそうかもしれないけど、今は大丈夫、なはずだ」
「そんなわけはないよ。毒舌なんてなろうと思ってなれる人は少ないと思うよ。
本来持って生まれた性質なんだろうね。例えば今、鬼畜なお兄ちゃんが毒舌になったとしても大した毒は入らないと思うんだ。
その毒に上乗せして自分の持っていきたい方向に話を進められるのはやっぱり頭が良いからなんだろうけどね――僕はキメ顔でそう言った」
「僕は戦場ヶ原に翻弄されっぱなしだからな。少しくらい――