――ある日、少年は埃を被った大きな箱を見つけた。  
 
楓で作られたその箱には杢が綺麗に現れており、見る角度を変えるとそれに合わせて動いているように見える。  
表面を保護するためだけに軽く塗られたニスは楓本来の良さを引き出していた。  
その楓で出来た箱は厳重に管理され、高級感のある上質な紙が張ってある。  
 
紙には  
―――絶対に開けてはいけない―――  
と書いてあった。  
お世辞にも達筆とは言いがたく、雰囲気は出ないが、これから物語を始めようとする時によくある手順。  
これを開けると何かが始まる、気がする。  
でも開けてはいけない。  
開けたら全てを投げ捨ててしまいそうになる感覚があり、その感情を恐れている。  
 
意を決した少年が恐る恐るその箱を開けると――さらに小さな箱が八個入っていた。  
今度の箱は桐で出来ていた。  
さっきよりも高級な木を使っているところをみると余程大切なものなんだろう。  
桐の箱に傷は小さな傷さえ付いていない。  
 
マトリョーシカのように箱を開けるとまた箱というわけではなさそうだ。  
それら箱には一箱につき、一人の名前が書いてあった。  
戦場ヶ原ひたぎ  
羽川翼  
八九寺真宵  
神原駿河  
千石撫子  
阿良々木火憐  
阿良々木月火  
忍野忍  
先ほどとは違い、綺麗な字だった。  
書いた人物の誠実さや公平さ、優しさや聡明さが滲み出てくるような美しい字。  
 
少年は『羽川翼』と書かれた箱を手に取った。  
名前の他に『四月七日』という日付らしい文字と『体育倉庫にて』とメモらしい文字が書かれている。  
年号は記されていない。  
厳重に封印されたその箱を開けると、一対の女性用下着が入っていた。  
可愛らしい装飾が施されたブラジャーのカップは大きい。  
パンツの方は控えめで精緻な模様だ。  
丁寧に畳まれている下着に手をつけることはできなかった。  
蓋を閉め元通りにしてから次の箱に手を伸ばす。  
『忍野 忍』  
箱の中にはブラジャーはなく、小さなパンツだけが入っていた。  
先ほどの下着とは真逆な印象を受ける、豪奢な刺繍を施してある。  
普通の人間なら引くところだろう。  
しかし少年は胸がいっぱいになっていた。  
 
自分と同じ性癖の先祖がいた。  
 
その事実は少年の存在を全肯定し、大きな自信を植えつけるものだった。  
少年は桐の箱に深く頭を下げ、先祖に感謝し、大切に封印を施し、元の場所に戻しておく。  
その後、自信をつけた少年は早熟した人格者として世に名を馳せるが、  
身近の人間は、幼女から熟女まで落とせる男として彼を恐れていた。  
 
おわり  
 

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