「下巻という文字は、とてもエッチだと思う」
「わかった!どうせ『下』だからとか言うつもりだろ!」
そんなもの僕にはお見落としだ。
残念だったな、神原。
「いや、残念ながら違うのだ。まあ確かに全てを『下』から繋げるという発想が
あるにはあったのだが、とてもエロマンガ大王を自称する私の口からは言えなか
った。そんなことをホイホイと意も解さず言ってくるとは阿良々木先輩の愚鈍な
までの正直さと『志村後ろー!』レベルにはただただ驚くばかりだ」
「どんな空耳ケーキだよ!」
そして、少し馬鹿にされてないか僕。
『志村後ろー!』とか、いつの世代だよ。
「つまり、『下巻』を遠目で見ると、『下着』に見えてくる、というカラクリだ
。阿良々木先輩も感じたことはないだろうか」
「お前の感受性豊かなやましい心に感服するよ!」
まさに見落とし。
「聞くところによると、阿良々木先輩はパンツに大分深い造詣をお持ちのようで
はないか、ぜひとも私にそのパンツに懸ける情熱を一字一句漏らさずに伝えきっ
てほしい。まあ私は穿いてないからあまり意味は無いのだがな」
「最後の一言が問題発言だよ!」
「そもそもどうしてあんな布切れを穿かなければならないのか、私には理解しか
ねるのだ。いっそ消えて無くなってしまえばいい」
「…お前、今僕を含めた全宇宙百億人のパンツ野郎を敵に回したぞ」
パンツは芸術。
パンツは全能。
パンツは――人生。
僅か一秒間で僕の人生を狂わせるほど、
偉大で、
暴力的で、
やさしくて。
「何!阿良々木先輩が私の前に立ち『はだか』るというのか!よろしい、この神原
駿河、受けて勃つぞ!」
「もう帰れよお前!」
『はだか』を妙に強調するな!
第一、どこが勃つ。
「両のちく…」
「やめて――――!」