「阿良々木くん、例のブツは持ってきたのかしら」
「……ほらよ」
「さっそく中をあらためさせてもらうわね」
そう言って、戦場ヶ原はおもむろにラッピングされた袋を開けて中身を取り出した。
「……なあ、今更だけど何で僕がお前にチョコをプレゼントしているんだ。
しかも昨日の夜中にいきなり電話で命令されて」
「別にいいじゃない。ジェバ――阿良々木くんなら一晩でやってくれると信じていたわ
――ふうん、見た目は合格ね、阿良々木くんの癖に」
「それが妹達に冷たい目で見られながら徹夜でチョコを作ってきた男に対する台詞なのか!?」
「いきなり怒鳴らないでちょうだい。頭に糖分が足りてないのかしら
――うん、私の要求通りの甘みを抑えたビターチョコね。生意気に味も悪くないわ、阿良々木くんの癖に」
「あのなあ……。そもそも彼女がいるのに自分でバレンタインチョコを作るのがどれだけ惨めかお前はわかっ
「……んっ。愛してるわ、阿良々木くん――じゃあ、続きはまた今夜ね」
――あれ、こんなに砂糖いれたっけ。
颯爽と去っていく戦場ヶ原を呆然と見送りながら、僕は口内に残った甘すぎる味を反芻して呟いた。
後日談というか、今回のオチ。
「続きは今夜ってコレのことかよ!?」
期待に胸をときめかせて戦場ヶ原の家へ向かった僕を待っていたのは、
山と積まれた大量のチョコだった。
……ただし失敗作の。
そういえば、料理が下手なんでしたね、ガハラさん。
それと他にも――
「何かいやらしいことでも考えていたのかしら、最低ね」
「さすがは阿良々木先輩だ。いついかなる時でもエロスを忘れないその姿勢、
私も積極的に見習っていきたいものだ」
「阿良々木くんも、男の子、だもんねー。でも、そういうのは程々にしなきゃ駄目だよ」
「本当に性欲の権化なんですね、アラモードさんは」
「こ、暦お兄ちゃんはそんな変態さんなんかじゃないよ」
「む、あの山の中にゴールデンチョコレートが見当たらぬが、どこに隠したのじゃ」
――何故か勢揃いしているいつもの面子。
どうやら今日はチョコレートパーティーをするらしい。
そのおかげかはわからないが、みんなからやけに豪華な義理チョコをたくさん貰えた。
――それは、甘くて、ホロ苦い、青春のような味だった。