「ゆらぁり…あれぇ…?これぇ……」  
 夕暮れの生徒会室。萩原子荻がテーブルにぶちまけた物品を、西条玉藻があさっていた。  
 詰まらなそうに窓の外を眺めながら、子荻が呟きに答える。  
「生徒から没収したものです。およそ学業には不必要と思われるものばかりでしたから」  
「これも没収したんですかぁ…?」  
 玉藻がつまんだのはピンクローターである。  
「当然です」  
「ふぅん…」  
玉藻はスイッチをいじったりコードを指に巻きつけたり遊んでいる。  
「先輩がぁ…使うんですかぁ…?」  
座っていたイスを盛大に鳴らして、質問者より年上なはずの少女はにわかに取り乱した。  
「なっ、何を言うのです!そんなもの使うわけ無いでしょう!」  
「えぇー…獲物はぁ、奪ったほうが自由にして…いいんですよぉ…」  
「そんなものを獲物と呼ばないで下さい」  
 無視して、先輩が使わないなら私もらっていきますね、と言ったことを呟く後輩に、子荻は固まる。  
「…ダメです」  
「じゃ…やっぱり先輩が使う…?」  
「使いません!そんな意外に大きいもの入るわけありま…っ」  
つい本音を口走ってしまったのか、子荻は一分前のクールさを捨て、慌てて口を抑える。  
「先輩…顔…赤い」  
「ゆ、夕暮れのせいです!」  
「これで入らなかったらぁ……挿入できませんよぉ」  
 どうやら自分より性について進んでいるらしい後輩を、唇を噛んで見つめる。後輩は笑顔になって近寄ってくる。  
「せんぱぁい…練習しませんかぁ…?」  
誘いのわりに、きっちり逃げ道をふさいでいる。この調子では説得しても聞く耳を持たないだろう。  
 
生徒会室はその日、深夜になるまで中からカギがかかっていたという。  
 

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