「ああ、明日僕の彼女が家に来るから」  
 
夏休みも終盤に近づき、受験生にとっては夏に固めた基礎を応用、発展させ、あと数ヶ月に迫った受験シーズンに備えそろそろカウントダウンをする時期。  
 
『…は?』  
 
ちっちゃい妹月火ちゃん、でっかい妹火憐ちゃんの二人は最近の教育事情と若者にとっての夏の重要性なんかを語りながら、まぁ要するに夏休みの課題に文句を垂れながら宿題に取り組んでいた。  
 
今日は羽川が外せない用事があるらしく、仕方無しに自主学習日となった本日。  
朝のドリルは済ませたし、朝飯の後も夏休み直後に行われる課題テスト及びセンターマーク模試に向けての対策を羽川がいないなりに真面目にこなした。  
 
小腹が減ったな、と思い時計を見たらなんと正午を過ぎて30分が経過していた。  
僕も受験生としてなかなか様になってきたな、と自己満足して、お昼を食べようとリビングに出向くと、妹たちがリビングで数学の課題に頭を悩ませているところだった。  
僕は朝食で余ったご飯でおにぎりを作り食べながら妹たちに少々ばかりの手解きをして、サンキュー兄ちゃん、ありがとうお兄ちゃん、といった感じで兄貴としての頼れるところを見せつけて、  
まぁしっかり終わらせろよ、と一言言い、部屋に戻ろうとしたところで、ああそうだ、ぐらいの勢いで上のような台詞を言い、まるで不可思議なものを見るかのような顔で二人の妹たちが上のような感嘆詞をはいた。  
 
そんな感じの今。  
 
 
「えっ、何、兄ちゃん、彼女いたの?」  
「ああ、火憐ちゃんには言ってなかったっけ。実は5月の始めくらいにはもう」「初耳だよ!そんなの!」何故か激昂している火憐ちゃん。  
「し、信じらんない…、兄ちゃんに彼女…彼女………………うぅ」  
「なんか……駄目だったか?」  
なんだそのテンション。  
「じゃあ兄ちゃんは彼女がいるその手で、その唇であたしの初めてを奪ったって言うのか!もう最悪だよ!」  
「最悪なのはお前の言い方だろが!明らかに悪意のこもった情報の省略があるじゃねぇか!」  
僕が奪ったのは初ちゅーと初タッチだけだ。  
「妹のおっぱい我が物顔で揉んどいてよくそんな発言ができるな兄ちゃん」  
「そこまでノリノリではなかったよ!」  
「ノれよ!」  
「キレた!?」  
「待って火憐ちゃん。お兄ちゃんも年頃なんだから彼女がいるのも最悪不思議じゃないよ」  
中学二年生に年頃とか言われたよ。  
そりゃお前らは僕より前に彼氏がいたんだけど。  
「でもお兄ちゃんもお兄ちゃんだよ。私の初ちゅー初タッチまであんなに激しく奪っておいて」  
「なんかお前らの記憶している僕は随分男らしいな」「彼女いるなら無駄な期待させないでよって話だよ」「き、期待!?」  
どんな話だ!  
「まぁでも丁度良いよね。明日お兄ちゃんの彼女が家に来るんでしょ?その彼女さんにお兄ちゃんが実の妹たちに働いた狼藉を余すことなく話せば万事解決だよ、火憐ちゃん」  
「ん?ああそうか!それもそうだな月火ちゃん!何も焦ることはなかったよ」  
「くっ、僕を脅しているのか……」  
「なに、兄ちゃんはあたしらの処女を貰ってくれればいい。それだけの話だ」  
「そうだよ」  
「お前らの脅しのネタが増えるだけじゃねぇか!絶対ヤダよ!」  
自らの身体さえ脅しに使うとは、この妹ズやる!  
「じゃあどうするの?今お兄ちゃんの人権は私たちが握ってるんだよ」  
「仮にお前らの処女を僕が奪えば僕の社会的人権は消えて無くなるんだよ」  
「詰まり社会的に抹殺された兄ちゃんが家に引きこもり家事手伝いをしながらあたしたちと事実婚。こうゆう訳だな」  
「ポジティブ過ぎる!」  
バカばっかりだった。  
いやしかし、それはともかくとして、明日戦場ヶ原が来る前に妹たちのことに気付いて良かったと思う。  
もしかしたらこの妹たちが戦場ヶ原にあることないこと吹聴するかもしれないし、もしそんなことされたら僕の身に何が起こるか解らない。  
今なら明日に向けての妹たちへの対策ができるからな。  
「そこで、火憐ちゃん、月火ちゃん。処女やらなんたらのくだりはともかく、二人には僕の彼女が来るにあたって、明日は出来る限り極力最大限に静かに大人しくしていて欲しいんだ」  
「具体的には?」  
「家に居ないことがベストだ」  
「却下」  
ですよね。  
まぁそう簡単にはこの妹たちは操縦出来ないことは分かっている。  
「まぁ、もちろん…」  
しかし、月火ちゃんは不敵に笑う。  
「お兄ちゃんの態度と条件次第じゃ明日は静かに大人しく過ごしてあげてもいいんだよ」  
 
−−−−−−−−−−−−  
 
朝目が覚めて真っ先に思い浮かんだのは、股間への違和感だった。  
「んっ、あ?…………」  
身体に掛かっている布団が下半身の部分だけ人一人分位盛り上がっていた。なんかモゾモゾ動いてる。  
 
まさかアレか。  
おはようなんたらのアレか。  
と、寝起きの頭がやっと覚醒しはじめ、とたん焦った。  
ガバッ、と布団を退ける。  
妹二人がそこにいた。幸い僕はズボンを穿いている。「なにやってんだ、おまえら!?」  
「いや、こうゆうのは彼女が来る前に何回かヌいておくのが彼女対策としてはセオリーだと思って」  
「そんなセオリーありえねぇ!!」  
あとヌくっていうな。  
「でもいざ目の当たりにするとズボン下げるのも戸惑っちゃって」  
いくらか照れた顔で月火ちゃんが言う。  
「どうだろう兄ちゃん、今から一人でするのは」  
「バカじゃねぇの!?」  
「えっ、……いやでも、やってあげるのは少し恥ずかしいし」  
「そうゆうことじゃねぇ!」  
大体それが何の対策になるんだ。  
「でもお兄ちゃん、お兄ちゃんは今日は私たちの言うことに従わなくちゃいけないんだよ。昨日約束したじゃん」  
「うっ」  
そうなんだよなぁ。  
昨日そんな約束しちゃったんだよなぁ、確か。  
「さあお兄ちゃん、自家発電!」  
「それはちょっと………無理っていうか…」  
「ん、何で?……あっ!オカズか!」  
「ちげぇ!!」  
「んーー…恥ずかしいけど………お兄ちゃんがそうゆうなら私も一人で……」  
「いいから!やめて月火ちゃん!!」  
「はっ、んんぁ、やぁ……はぁんっ!!」  
「火憐ちゃんやめて!?」  
 
−−−−−−−−−−−−  
「お邪魔します」  
 
九時頃に戦場ヶ原がきた。  
朝の出来事は僕がトイレで一回ヌく、ということで妹たちは手を打った。  
ちなみにヌいてはいない。できるか。  
 
ふぅん、と戦場ヶ原はなにか納得したように頷く。  
「阿良々木君の家にしては立派ね」  
「まぁ僕の住んでいる家が僕の人間性だとか社会的実力に比例するわけじゃないだろ。高校生だし」  
「そうね。もしそうだったら阿良々木君はトイレと共同生活しなくてはいけないことになるものね」  
「そうかなぁ!?」  
「でもそんな阿良々木君も素敵よ。そのときは私も喜んで便器と同棲するわ」  
「何でだ………意味合い的には甘い言葉なのに全然恥ずかしくない………」  
たまにこいつは、僕をわざと貶めてそんな僕を愛する自分が好きなんじゃないか、と思うときがある。  
 
まぁデレだけど。  
デレデレなはずなんだけど。  
 
さぁ阿良々木君、お部屋に案内して頂戴。たとえ今日は阿良々木君の家という少し特殊なロケーションであろうと、やることは変わらないわ。お勉強の時間なの」  
「解ってるよ………」  
「どうだか。さっきの私の、ヤること、なんてワードに密かに興奮しているような人間のそんな陳腐な台詞なんて信じられないわ」  
「今のは防御不能だわ……」  
僕はどうしたら正解なんだろう。  
「でも大丈夫よ。優しい私はそんな阿良々木君のことも満足させられるの。つまり阿良々木君が我慢出来ないときは私も一人で……」「やめて下さいガハラさん!!」  
「何を興奮しているの、阿良々木君?まだナニをするなんて言ってないじゃない。いやらしいわ」  
「うっ……」  
「一人でオナニーしてオナネタを提供するわ、と言うつもりだったのよ」  
「最っ悪だな!!」  
 
ガチャ  
「あっ、お兄ちゃん、お客さん?」  
「おっ、兄ちゃん、誰それ?」  
僕が戦場ヶ原を部屋に案内し中に入ろうとしたとき、妹たちがリビングのドアを開けて聞いてきた。  
まるで図ったようなタイミングだけど実際図っているので若干わざとらしい。  
「ああ、僕の彼女だよ」  
『えっ、(お)兄ちゃん、彼女いたの?』  
「ああ、実は5月の初め位にはもう」  
妙に気疲れする。  
妹たちの目が怖い。  
「へぇ、お兄ちゃんにも彼女ができたんだぁ。てっきり妹一筋で彼女は作らない主義だと思ってたよぉ」  
「それには断固異議を申し立てるよ!」  
「そうだよ月火ちゃん、それは違うよ。兄ちゃんにとってあたしたちはストック。使い捨てのインスタント妹だったんだよ」  
「全然ちげぇし!」  
「違うんだ。じゃあお兄ちゃんにとっての私たちはどの位大事なのかな?インスタント妹よりどうでもいいのかな?そこの彼女さんとどっちが大切なのかな?」  
「そ、そんなの…」  
「もう月火ちゃん、ダメだよ、そんなこと言っちゃ。兄ちゃんの彼女さんもいるのに」  
「ふふふ、そうだね。あっ彼女さん、ゆっくりしていって下さい。後でお兄ちゃんの部屋にお茶持っていくからね」  
 
ガチャバタン  
「………………」  
「………………」  
なんだ今の空襲。  
こっちはダメージしかねぇじゃねぇか。  
大体インスタント妹って何だ!?  
水をかけて戻るのか!?  
一部フェチ層を刺激するのか!?  
つかガハラさん見んの怖ぇ!  
今の会話というか火憐ちゃんと月火ちゃんの発言はどうガハラさんにどう聞こえた!?  
「……阿良々木君」  
「……はい…」  
うわぁ、もう駄目か………。  
「早く入って。部屋の前にいられちゃ邪魔よ」  
「えっ、あっ、……はい」  
部屋の中でゆっくり言及するのかな…。  
「あら、阿良々木君の部屋、結構片付いてるのね」  
「ああ、まぁね」  
あれ?  
あれれれ?  
何も無し?  
 
戦場ヶ原はあまり僕の他の人間関係を詳しく聞く方ではない。というか勝手に当てられるし。  
だから今の妹たちの発言がスルー出来る程鈍くないはずなんだけど。  
 
「……………………」  
「……………………」  
その後一時間位昨日のテスト対策した内容を戦場ヶ原の解説つきでおさらいした。  
 
その間、戦場ヶ原の口から先程の妹たちに対する発言は一切ない。  
 
はっきり言って怖い。  
 
嵐の前の静けさみたいな。いや、ガハラさんいっつも静かなんだけど。  
 
「だからね、4番の選択肢はこの傍線部を少し誇張して語ってるの。この時点で4番は消去されるわ」  
「成る程」  
「現代文は正解を想像するんじゃないの。正解を探す問題なの。本文を越えることも逸れることも許されないわ」  
「ふんふん」  
「だから現代文を解くとき最もネックなのは時間よ。逆にどんな難解な文章も時間が無限にあるなら完答出来ないものはないの」  
「そうゆうもんか」  
「ええ。だから阿良々木君に必要なものは活字慣れ。早く正確に日本語を日頃から読むことを薦めるわ」  
「はあ」  
「妹さんたちの発言、どうゆうこと」  
「…………………」  
「…………………」  
「………………うそぉ」  
今!?今それを聞くんですかガハラさん!?  
「可愛い妹さんたちだったわね」  
「本当に見てたか!?」  
良く言えば堕天使的ではあるがな。  
「阿良ヶ木君はシスコンだったのね」  
「違う、誤解だ……」  
「大丈夫。そんな阿良ヶ木君も素敵よ。阿良ヶ木君が望むなら妹にもなってみせるわ」  
「いや、おまえには無理だろ」  
「確かにそうね暦お兄ちゃん」  
「切り替え早っ!スイッチどこだよ!」  
どちらかというとお姉ちゃんだろ、身長的に考えても。悲しく切ない現実故に。  
「で?どうゆう意味なの」  
「えーっと…」  
「…あの妹さんたちの発言から考えると………」  
「いやいやあいつらバカだから。そんな深い意味ある発言はないよ」  
「キスまでいってるかしら」  
「なんでそこまで読み取れるんだよ!?おまえは何者だ!」  
「…まさか本当にキスしてるの?」  
「うっ………」  
ミスった。  
やってしまった。  
「さすがね、モテモテ阿良ヶ木君。阿良ヶ木君の魅力の前では血縁も関係ないのね。彼女として誇り高いわ」  
 
「すいませんごめんなさい。許して下さいとは言いませんからその『モテモテ阿良々木君』はやめて下さいガハラさん」  
恥で死ぬ。  
「さて、どうしたものかしらね、実の妹にまで手を出すモテモテ阿良々木君?」  
「僕は何をしたら良いのでしょうか………」  
「その唇を切り取りましょうか」  
「それだけはやめ………」ガチャ  
「お兄ちゃん、お茶だよ」  
「お邪魔するぜ」  
かなり最悪のタイミングで妹たちが部屋に入ってきた。  
おまえら間が悪すぎ…「キスをします」  
「はいぃ?あぷっ…んっちゅ……は、んっ………」  
いきなりキスしてきた。  
 
火憐ちゃんと月火ちゃんは呆然としている。  
 
てか、やっぱり。  
 
怖いよ、怖いよガハラさん。  
 
−−−−−−−−−−−−  
 
「それで名前が、戦場ヶ原ひたぎさん、ですか?」  
「ええ。妹さん」  
「妹さんはちょっと…。私が月火でこっちが火憐ちゃんです」  
「むーーーー」  
「わかったわ、義妹さん」  
「いつの間に結婚を……」  
「生まれた瞬間よ。暦お兄ちゃんは運命の相手だったの」  
「どこのメルヘン処女なの!?しかも妹キャラ!?お兄ちゃん、流石に無理あるよ!」  
「むーーーー」  
「冤罪だ……」  
この状況は色々苦しい。  
月火ちゃんは友好的な態度を示しているものの、目は鷹のように鋭く僕を睨んでいる。  
月火イーグル。  
友好的な態度というのも何か裏を感じる。交友を深めておいて内側から破壊する、みたいな。  
さらに火憐ちゃん。  
さっきっからバグっている。  
初期ファミコンみたいな作動音を発しながら頬を膨らませ、僕と戦場ヶ原を交互に睨んでいる。  
こちらの目は糸目というかジトッとしていて、なんというか背中を向けたら危ないような、そんな目。  
「それでひたぎさん、さっきはすみませんね。なんかいいところ邪魔したみたいになってしまって」  
「いいのよ、あの後なにをする訳じゃないの。いつもの一時間おきのキスをしていただけ。問題ないわ」  
「問題あるよ、それは……」  
「むーーーー」  
「おい、戦場ヶ原。嘘はつくなよ」  
「ごめんなさい暦さん。いつもならあの後すぐベッドインするのよ、義妹さん」  
「嘘はつくなよひたぎさん!あとお前いつもそんなに僕に敬意払ってねぇだろ!」  
「お兄ちゃん………やらしい……」  
「兄ちゃん………やらしい」  
「違うから!」  
「いいじゃない、焦らなくても。それとも何?妹さんたちに私たちがらぶらぶなことを知られることに不具合があるの?」  
「それはあれだよ、ひたぎさん。好きな娘にファーストキスの相手がお母さんだということを知られたくない男子の心理みたいなものだよ。ね、お兄ちゃん」  
「ね、じゃねぇ!同意する訳ねぇだろ!」  
「あら、その論法でいくと私がお母さんかしら。本命は妹さんなの?」  
「ち、違う違う!」  
「私はね、阿良々木君。殺人だけは殺る気はなかったわ。でも死体がない、仕方がないわよね。私の哀憎、愛情を伝えるには阿良々木君を殺すしかないのだから」  
「その文面からは殺意しか伝わらない!!」  
「大丈夫だ兄ちゃん。あたしがお守りするぜ」  
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。私はお兄ちゃんの味方」  
「お前らには殺意しか沸かねぇから!!」  
「むっ、それは傷付くよ、お兄ちゃん」  
「あっごめん。嘘です…」  
弱い。  
「まぁ取り敢えず休憩は終わりだな。お茶をありがとう妹たちよ。さあ、兄ちゃんはこれから勉強だからさっさと戻ってくれ。あとお昼頃に何か簡単なものを作ってくれると嬉しい」  
「ふーーーんだ。なにが勉強なの、お兄ちゃん?さっきはちゅーのお勉強だったの?」  
「違う。あれは、アレだ。たまたま」  
「たまたまなんてやらしいな、兄ちゃん」  
「そのピンク色の脳味噌をどうにかしてやろうか」  
とまぁ、色々言って妹たちは出ていった。  
「お昼なら私が作ったのに」  
「ひたぎさんは僕の家庭教師じゃないですか。お昼を作らせるなんて雑用させられません。」  
「何で敬語なのよ。私の料理は阿良々木君への愛が込められているのよ」  
「愛の味しかしないんだもん」  
愛は言葉に出来ないからな。  
−−−−−−−−−−−−  
 
お昼を食べてから、戦場ヶ原は家庭教師の任務を全うしたら帰る旨を僕に伝えた。大体夕方には帰るっぽい  
正直本当に何も無いとは思わなかった。  
キスしかしてねぇ。彼女が彼氏の家に来たのに。  
それとも、実際そんなものなのかな。  
「ごめんなさいね、今日は少し都合が悪くて」  
戦場ヶ原を家まで送る途中、平坦なトーンで話してきた。  
「あ、いや。家庭教師にきてくれただけで嬉しいよ。彼女を自分の家に連れてくるっていう、ある種の願いも叶ったしな」  
「今日は危険日なの」  
「聞いてねぇ!」  
「でも大丈夫よ。阿良々木君がトイレに行ってる間に阿良々木君のベッドの布団に私の匂いを擦り付けておいたわ。使って良いわよ」  
「使うかよ!」  
多分使う。  
「お父さんの仕事を手伝っているのよ」  
実は、みたいな感じでタネ明かしされた。  
「へぇ。なんか欲しい物でもあるのか」  
「夏休みの間に旅行に行きたいと思うの」  
「いいじゃないか」  
「阿良々木君も来るのよ」「……………ああ」  
そしてね、戦場ヶ原は言う。  
「出来れば神原も呼んで、出来れば羽川さんも一緒に、妹さんたちも来てもらっても構わないわ、この前阿良々木君が言ってた…撫子ちゃん?も構わない、いつかの八九寺……真宵ちゃんも。一回皆で温泉旅行にでも行きましょう」  
「………………」  
ふぅん。  
へぇ。  
はぁ。  
なんと言うかこう。  
「まぁ別に私は阿良々木君と二人きりでいいのだけど。モテモテ阿良々木君は色々な女の子と仲良くなりたいんだものね」  
とんだツンデレだった。  
「浮気性の彼氏を持つと苦労するわ」  
………変わった。  
ガハラさんはやっぱりデレた。  
デレデレだった。  
「………僕は浮気なんてしないさ」  
「あらそうなの」  
「戦場ヶ原一筋」  
「気持ちいいこと言ってくれるじゃない」  
 
「好きだよ」  
「私もよ」  
「愛してる」  
「私もよ」  
 
まぁ、さ。  
結局さ。  
 
「戦場ヶ原、蕩れ」  
 
−−−−−−−−−−−−  
 
家に帰ったら妹たちがいない。  
何処にいるのかな、と探していて僕の部屋をあけたら。  
 
火憐ちゃんと月火ちゃんが自慰していた。  
 
「このバカ妹!」  
「ふぅん、はぁぁんぅ…はぁっ!兄ひぁゃん、別の女の匂いがするよぉぉ……」  
「お兄ちゃんの嘘つき!嘘つき!このベッドでなにをしてたのぉ…………」  
二人とも涙目で切なそうに息を吐きながら喘ぐように喋っている。  
「兄ぃちぁゃん、切ないよぅ、やらしいよぉ」  
「やらしいよぉ…ひぅぅ、お兄ひゃん、ひぃん!」  
「ストップ。お前ら一回ストップ」  
 
無理矢理落ち着かせた。  
でも泣き止まない。  
「泣くの止めろ」  
「だってぇ、兄ちゃん大学行ったりしたらずっと彼女と遊ぶの?もうあたしたちとは遊んでくれないのぉ?そんなのやだぁ!」  
「そんなことないそんなことない」  
「でもお兄ちゃんは私たちより彼女を優先するんでしょぉ」  
そんなのやだ、と月火ちゃんと火憐ちゃんが言う。  
「でも仕方ないだろ。僕は一人しかいないし」  
「じゃぁなんで私たちより彼女を優先するの?」  
「お前らが家族だからだろ」  
「何で家族だと駄目なんだよ!」  
 
「わざわざ優先しなくても、一番大事な物だと解りきってるからだよ」  
 
『え……………………』  
 
だよなぁ。  
極論で言えば戦場ヶ原とはどう頑張っても血は繋がんないしな。  
いや、大好きだよ、ガハラさん。分かってね。  
 
「世界一大事な妹だからだよ」  
 
僕もデレた。  
 
「大好きだよ」  
 
「あたしも大好きだよ、兄ちゃん」  
「私も大好きだよ、お兄ちゃん」  
 
こうして僕ら三人兄妹は今回少しずつ仲良くなった  
 

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