「阿良々木先輩、少しお願いがあるのだがきいてくれないか?」  
 
「なんだあ?珍しいな。」  
帰宅途中に自転車を漕いでいる所で追いつかれ、  
俺が漕ぐ自転車と同じスピードで走りながら会話を始めようとした神原駿河を押し留めて、  
自転車を押しながらの会話だ。  
それにしても随分急いで走ってきたようで顔が紅潮している。  
 
「その前に、今日は阿良々木先輩は戦場ヶ原先輩と約束はしていないのか。」  
「・・?ああ、別に今日会うような約束はしていないけど。」  
俺の言葉にああ、良かった。と神原は胸を撫で下ろすようにした。  
 
「なんだ、戦場ヶ原の方に用があったのか?だったらまだ学校に」  
「違う違う、私が用があるのは阿良々木先輩だ。」  
「だったらなんで戦場ヶ原が出て来るんだよ。」  
「戦場ヶ原先輩には聞かれたくない話なんだ。」  
そう言うと、神原はふ、と顔を曇らせた。  
 
一瞬焦る。コイツはたまにこういう表情を見せて来て、  
その度にあの時の事を、コイツの左腕の事を思い出してしまう。  
例えば仕方の無いこととはいえ、やはり神原はバスケットボールを続けたかったんじゃないだろうか。  
20になれば出来るようになるって事は逆に言えばそれまでは出来ないって事だ。  
 
「阿良々木先輩にフェラチオをしてみたいんだ。どうだろう。」  
「心配した僕が馬鹿だったよ。何があった?ん?言ってみろ。何があった?」  
 
「何があったという程のものではないが、昨日買ったBL小説がだな。あ、BL小説というのは私が好きな」  
「知ってるよ!」  
「さすが阿良々木先輩。何にでも造詣が深い。」  
「なんどもなんどもなんどもなんども説明してるだろうが!」  
 
ここから違う話題に無理やり逸らそうかと思ったが、神原はぐいと拳を突上げた。  
「昨日買った本は名作だった。やおい穴などと言う姑息な手段は使わず序盤は丁寧に男と男の友情と喧嘩、些細なすれ違い。  
読んでいるこの私がやきもきしてしまうくらいのゆったりとした人物描写であった。しかしそこから怒涛の展開。裏切りと交錯、疑心暗鬼、  
しかしラストにその誤解が解けた時、そこに必然的に生まれる愛情!」  
「いや良く判らんがそこで普通は愛情は生まれないからな。」  
 
「いや凄く良かった。名作だった。是非阿良々木先輩にも読んでもらいたい。」  
「読まねえよ。で、なんでそれがその、、それに繋がるんだよ。」  
神原がぐん、とこちらに顔を向ける。  
「そうだ。私は阿良々木先輩にフェラチオをしたいという話をしていたんだったな。」  
「しまった・・・」  
「普通BL小説では男性同士のSEXは」  
「聞きたくない聞きたくない!」  
「それがその小説ではフェラチオ描写が秀逸でな。」  
「何でお前が路上でそういう言葉を連呼できる?」  
「ねっとり、たっぷりとした描写は10ページにも渡り、それはもう今までに見たことも無いような描写で濃厚かつ丁寧な描写だったのだ。」  
「これ以上聞く事は断固拒否する!断固拒否するからな!」  
「私がレズとはいえ、いや、私がレズだからこそこういう描写に必要以上の憧れや関心を抱いてしまうのも仕方の無いことと言え・・」  
 
@@  
「でだ。阿良々木先輩。私はそういう理由でフェラチオに関心を持った訳だ。」  
「なあなんで俺はお前の部屋に来ているんだ?そしてお前は何でそんな恍惚とした表情をしているんだ?」  
「先輩が男らしく俺について来い!といって私を引っ張ったんじゃないか。」  
「嘘だっ!お前が僕を引っ張ってきたんじゃないか!」  
 
まあとにかく。と神原は僕の前に座って一冊の本を取り出してきた。  
「阿良々木先輩と戦場ヶ原先輩はまだ体験はしていないんだろう?」  
「なあ何でお前にそんな事をいわなきゃいけない!?」  
 
「だったら健全な男子高校生である阿良々木先輩の精液は溜まりきっているはずだ!  
いかに阿良々木先輩とはいえ戦場ヶ原先輩と付き合っていながらの生殺し状態は辛いものに決まっている!」  
「なあ俺はお前が何をいっているのか」  
「阿良々木先輩に浮気をしてくれと頼んでいる訳じゃないんだ。私にこの本の通りにさせて欲しいと言っているだけだ。阿良々木先輩にも損な話ではない筈だ。  
阿良々木先輩の好みからは程遠いかもしれないが、それなりに私の身体は同年代の女子と比べてもスタイルが良い方だし、顔だってそう悪くも無い。」  
 
神原はぱらぱらと本を捲り、あるページを開いてから俺ににじり寄って来る。  
「おい、神原、ちょっと待て。」  
「・・・いやー、しかしさすが阿良々木先輩は受けとしての器の大きさは大きさを越えて地球規模といった感じだな。  
全くこのページに書いてある通りだ。  
『おい、ユスターシュ、ちょっと待ってくれ。』  
まさか前もって予習していてくれるとは。私が想像も出来ない事を阿良々木先輩はしてくださる。  
先輩がこうノリノリでいてくれるのであれば私もユスターシュ役をやりやすい。」  
 
「ちょっと待て!俺は別に読んでも無いその本に書いている台詞を読んだ訳じゃいぞ!」  
「いいんだ、僕の言う通りにすれば何の問題もない。カスト・・・じゃない阿良々木先輩。ふふふ。力を抜けよ。全部俺に任せておけば良いのさ!!」  
「おい!待て!ちょっと待てぇ・・・!!!」  
 
@@  
男子高校生であればこの快楽に流されてしまうのは仕方の無いことと言えるだろうか。  
 
神原が畳の上にへたりこんだ俺の股間に顔を寄せて俺のものを咥え、くっくっと熱心に首を振っている。  
その横顔は紅潮していてこれが神原なのかと驚くほど艶っぽく、  
そして神原の鼻先が俺の下腹部にあたるほど唇を奥に埋める度に、  
神原のたっぷりとした唾液が乗った舌が巻き付く様に動く度に  
甘ったるいというよりもやや甘すぎる缶の汁粉のような快感が背筋を這い登ってくる。  
 
「…ッ……ぷ…はっ…ぁっ・・・ど、どうだ?あ、阿良々木、先輩・・・やはり、男、の事は男が一番判っているだろう?」  
 
時節顔を上げて俺の眼を見ながら意味の判らない事言うのは横に置いたその本に書いてあることなのだろう。  
「だから!お前・・・うっ・・・」  
怒鳴った瞬間、かぽり、と熱い神原の口内に咥えられて呻いてしまう。  
そして開いている手でとんとん、と本のページを叩く。  
「ん?」  
トントンとページのある部分を叩き、後は知らないとばかりに俺のを咥えたまま丁寧にゆっくりと首を振り続ける。  
 
横目で神原が叩いたページを見た。  
『ユスターシュの丁寧な口技にカストルの背筋からは快感が竜の如く立ち上っていた。  
いつしかユスターシュの動きを抑えるようにしていたカストルの手は離れ、腰の辺りでギュッと握り締められている。  
そしていつしか男だからこそ男のツボを心得たユスターシュの丁寧で甘い舌使いに身を任せてしまっている自分にカストルは気が付くのであった。  
「ああっ・・・だめだ、こんなのだめだよ、ユスターシュ・・・」  
「どうだ?カストル、やはり男の事は男が一番判っているだろ?」  
頭を振るも何度も言葉でそう囁かれ、いつしか思わずカストルは頷いてしまう。  
それだけではない。カストルはあまりの快感にもはや腰を浮かせてさえいた。  
その様子にユスターシュの目がキラリと光る。  
「ふふ、君の婚約者は、こんな事はしてくれないんじゃないのか?」  
つつつ、とユスターシュの可憐な指がカストルの男の花の部分へと動いた。  
「ああ・・・もう、苛めないでくれユスターシュ!いっその事!」  
ユスターシュの指が悪戯に焦らす様にその周囲をなぞるとカストルが呻いた。  
』  
 
「・・・・・・!!ちょっと待て、無理だぞ、お前が考えている事は無理だから!!」  
叫んだ瞬間天真爛漫といった神原の目がこちらを向いた。  
ちゅぽん、と音を立てて唇を離すと微笑む。  
 
「ふふ、戦場ヶ原先輩は、こんな事はしてくれないんじゃないのか?」  
「だからしてないって言ってるだろ!!」  
 
と、叫んだ瞬間、神原はすう、と素の表情に戻った。  
と言ってもいまだ僕のものを掴んだままの姿勢だ。  
そしてやや唾液で濡れた唇の端を上げたまま、少し深刻な感じで口を開いた。  
「ところで阿良々木先輩。良くモノの本には赤銅色に広がり返った傘の部分という描写があるが阿良々木先輩のはピンク色で皮が・・・」  
「やめろ!判ったからそれ以上は言うなよ。それ以上は言うな神原。」  
「だが、さすが阿良々木先輩、凄く固くて熱く反り返って頼もしい。口の中に入れているとレズの私でもドキドキしてしまう。  
私みたいな女にでもこんなにしてくれるなんて、やはり阿良々木先輩は優しい人だな。」  
そう言いながられろれろ、と神原は唾液を乗せた舌を出して僕のものをアイスキャンディーでも舐めるように舐めてくる。  
 
「気持ちいいか?阿良々木先輩。」  
少し顎の上がった、少し真剣な顔。  
神原駿河に良く似合う、真剣なのに少し笑顔に見える魅力的な顔。  
普通なら胸が高鳴るシーンだろう。  
その顔をしている当人が両手で僕のものを握り締めて唾液でぬるぬるになった僕のものを上下に揉み捲くってるのでなければ。  
 
「手を離せ、神原。」  
「一つ悩みがあるんだ。阿良々木先輩。この本ではその後ユスターシュ攻めで合体する訳だが」  
「合体とか言うな!お前はどれだけ腐ってるんだ!」  
「その後のシーンでは今度はカストル攻めに変わってそっちではカストルが焦らしに焦らした後、ユスターシュがカストルの口で果てるんだ。」  
「何を言っているのか理解は出来るが、さっぱりわからないぞ神原。」  
 
そう言うとにい、と神原は笑った。  
そしてぐい、と頭を下げてきて、  
「んんっ…んっ…!」  
俺の肛門に濡れた感触が這う。  
「う、うおおおおおっ!」  
 
と、瞬間、神原が顔を上げた。  
「こっちのシーンにするか、それとも。・・・んっ…!」  
今度は上から咥え込んで来る。  
 
最早これ以上はない位に大きくなった俺のものを2度程唇で扱いた後口を上げる。  
「こっちにするか。阿良々木先輩はどっちがいいだろうか?」  
どっちも嫌だ。後輩に尻の穴を舐められて果てるのもあえなく口の中に出すのも。  
 
「あのな、そうしたら僕は神原の口の中に出す事になるんだぞ。」  
「ああ、大丈夫だ。」  
「なっ!」  
「口からでは妊娠しない。だから浮気にもならない。そうか、阿良々木先輩はそっちがいいのか。ならそうしよう。口の中に一杯出してくれていいからな。」  
「だから僕にはお前の言ってる事がさっぱり理解・・・っ」  
叫んだ瞬間上から咥え込まれる。経験が無いから判らないが神原なりに工夫をした成果とでもいうのだろうか。  
―じゅる、ずずっ、れろっ・・れろれろっ―  
舌を巻きつかせ、首を振って頬を凹ませて吸うその姿は与えてくる快感と同じ位にいやらしく、片手でぬるついた竿を扱かれる事も相まってあっという間に持ち上げられてしまう。  
 
気持ちとは別に出来るだけ神原の口内の奥にまでというように腰が持ち上がる。  
と、瞬間、眼の前に本が突きつけられた。  
神原は器用にも首を振るスピードはそのままに掲げたそのページをぐっぐっと突きつけてくる。  
 
「な、なんだよ。・・・うあっ!」  
神原に突きつけられた本に意識を集中させようとするが、下半身の甘い旋律は最早極限まで来ている。  
 
 

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