「なあ、おにーさん」
「何かな、出夢くん」
「つかぬ事聞くけどさ、おにーさんってBLの素養有るかい?」
「BL……大英博物館の略称?」
「いや、それがBLって略されてる方が初耳だぜ、僕は」
「そう? じゃあ、ブラックリストの事かな? ああ、殺し名のトップランカー一覧みたいなヤツを言うの? 生憎だけどぼくは見た事無いなあ」
「いや、それも違……あー、まあいいや。お兄さんにそういう方面の教養が無い事は分かったからさ」
「ふうん。なんか良く分かんないけど、出夢くんが納得したなら深く聞く必要も無いよね」
「ところでさ、おにーさん。僕、理澄がいなくなってからいっつも一人なんだよ」
「へえ、そう。それは……寂しいね、出夢くん」
「ぎゃははは。そう辛気臭い顔すんなよ。今日は折角おにーさんが来てくれたんだ。寂しいとか、忘れちまってたよ。でさ、話変わるんだけど」
「うん、何かな?」
「理澄が居た時は一人寝とかした事無かったんだよ、僕」
「ふーん」
「でよお。今日は久々に人と枕を並べて寝るんだが……あん? おにーさん、聞いてっか? なんか脂汗かいてるぜ」
「出夢くん……えっと、取り敢えずぼくの身体に纏わり付いてくるその目的を聞かせてくれないかな?」
「僕の二つ名……忘れた訳じゃねえよな? でもってよくそういう事を隠語で『喰べられちゃった』っていうよなあ?」
「字が! 字が違わないデスカ!?」
「ま……そんなんだからさ……おにーさん、諦めて『喰』われちゃえよ。僕の一喰いは痛くないって評判なんだし?」
「心が痛いというか、人として痛い気がするのはぼくの気の所為かなっ!?」
「……理澄がいなくなって……なんっつーか、人恋しいんだよ……悪いかよ……」
「出夢くん……」
「それにさ。心は男でも身体は女なんだぜ? 使ってみたいとか思っちゃっても僕の身体だし問題無くね?」
「……一つだけ、聞かせてよ、出夢くん」
「何かな、おにーさん」
「一人は、寂しい?」
「……寂しいっつったら抵抗しないでくれんのかよ?」
「しない」
「……じゃ、寂しい」
「そっか」
「だから、今日は凄え楽しい」
「そっか」
「ありがとな、おにーさん」
「どういたしまして」