これは常識的な人々の世界の外にある。出合ったとしても夢としか思えないモノ達の  
ひょっとして実った小さな恋の物語  
 
「お前、僕のこと、好きか?」  
「ああ?」  
 人識は――  
 ようやくのこと、いつもの調子で発された、いつもの調子の出夢からの軽口に。  
 やはりいつもの調子で、答えずに――  
 
「ああ、好きだぜ」  
 
 何故かそう漏らした。  
 その理由は、返答をした人識にも、良く理解らない。  
 ただ、そうしなければ、大切な何モノかを、遠くない未来に失ってしまう気がしたのだ。  
 そして、そんな解答を貰った出夢は、予想外な答えにきょとんとした後。  
 憑きものが落ちたような表情になり。  
「ぎゃは!」  
 笑顔になり。  
 人識に向けて――異様に長い両腕を伸ばし。  
 まるで抱擁するかのように。  
 実際抱擁するために、飛び掛った。  
 そして一言。  
「僕も好きだぜ――愛してる」  
 呟くのだった。  
 

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