・オシの魔法使い@
今は昔、あるところにどろしゐという女子ありけり。
よろづのことをか
「ちょっとまて忍!どうして古文調で初めてんだよ!」
「うるさいのうあるじ様、別に台本には『自由に、アクティブに』と書かれているのだから儂の勝手じゃろう」
「いやそこまで自由にやると誰も思ってねえよ!」
最初作品間違えたかと思ったし。
「ところであるじ様、スレの皆には今この状況がわからぬと思うのじゃが…」
「そういえば…そうだな」
じゃ、説明しようか。
――説明。
「オズの魔法使い」という物語をご存知であろうか。
1900年、L・ボーマン著。
アメリカのカンザスに住むとある少女ドロシーが、家ごと竜巻で巻き上げられ、辿り着いた先の魔法の国で不思議な体験をするという、近代を代表するな児童文学作品である。
今回は、それを僕らが演じたらどうなるか、という話だ。
誰が誰の配役で。
誰がどんな行動をとるのか。
全てはこちらの独断と偏見に基づいた構成だが、至らない所は見逃していただきたい(もっとも、小説やアニメなんて紐解いてみればどれも独断偏見の魂なのだが)。
というわけで、「オズの魔法使い」改め、「オシの魔法使い」の始まり、始まり。
「あるじ様、さっき上の方で『塊』が『魂』になっていたぞ」
「いいから始めさせてくれ!」
001
イヒリカのあるところに、ナオエツという町がありまして、少女ドロシーとその愛犬トトはおじさん夫婦と一瞬に暮らしていました。
「なんか結構ハショってないか!?」
「仕方ないわい、こんな所に頁数を割いている余裕はないのじゃ」
「そんなに頁に余裕ないのかよ!」
「いや、作者が面倒だからだそうじゃ」
「そこ投げちゃ駄目だろ!」
ナレーション…忍野忍
おじさん夫婦は仲は悪くはないのですが、いかんせんどちらも無愛想で、ドロシーの生活はくすんだ色をしていました。
言うなれば、灰色の毎日。
灰色の百合生活。
「それは違う!オズの魔法使いをそんなR指定の話にするな!」
第一どこに百合要素があるんだよ!
そんな灰色の毎日を吹き飛ばし鮮やかに彩っていたのは、真っ黒でつぶらな瞳の愛犬トトでした。
「おいでトトさーん、ごはんですよー」
「わんっ!」
「今日のおかずはミゲル×ラスティですよ、喜んじゃって下さい」「わふんっ!」
と言って、嬉しそうに尻尾を振る。
「しかもおじさん達は畑に行っていますからゆっくり楽しめますよ」
「きゃんきゃん!」
大好きなおかずを食べれる喜びからか、トトはあちらこちらと跳ね回っていた。
ドロシー役…八九寺真宵
トト役…神原駿河
「ちょっとちょっと待てお前ら!」
「はい?」
「わふ?」
首をかしげ、こちらに向き直る八九寺と神原。
「違いますよハダカ木さん、もう幕は上がっているのですから、ちゃんと役名で呼ばなければいけませんよ」
「そ…そうなのか」
何てこった。
こりゃあ、随分本格的じゃあないか。
「ちなみに阿良々木さんはまだ登場してないので本名で呼ばれます」
「もっとも、そのまま出ないという可能性も大いに有り得るのだがな、うむ、それはそれで悶え悲しむ阿良々木先輩を見てみたいかもしれないな」
「何だよその嗜虐プレイ!」
ナレーションだけで終わらせる気かよ!
「それと神原…いやトト!お前は何て格好をしてるんだよ!」
ちなみに八九寺はいつもの衣装。
「ん?これか?これは犬奴隷コスなのだが……阿良々木先輩は首輪つきの方が好みであったか?」
「いやそこに好みは求めてねぇよ!」
何でそんなに目のやり場に困る格好をして平気なんだお前は。
まあ、本来であれば今の神原の姿を読者の皆様に逐一丁寧に説明しなければならないのだが、悲しいかなそこまでの語彙と学識を僕は兼ね備えているわけではないので、単純な比喩表現において代用させていただく。
具体的に言うなら、「きゃる〜ん」とかいう擬音が聞こえてきそうなファー付きミニスカへそ出しノースリーブルックとでもいうべきだろうか。
もちろん、尻尾に耳、肉球付き。
「うるさいわね、出番でもないのにやたらと頁を占領しないで頂戴、ギャリック砲撃つわよ」
「お前サイヤ人だったの!?」
ていうか何処から現れた戦場ヶ原!
「ああもう、ぎゃあぎゃあ五月蝿い屑だこと、今すぐ舞台から転落死させたくなるわ」
「出番前に退場ですか!?」
誰か拾い上げて。
「とにかく、私と屑良木くんの出番はまだだから、屑は舞台袖で物言わぬ骸と化していて頂戴」
「やっぱり退場だ!」
主に現世から。
しかも屑良木って。
毎度ながら容赦のない毒舌だよ。
「それじゃあ、舞台の上は八九寺さんと神原、それと…おじさん夫婦の妹さん達に任せましょう」
「今取って付けたよな!出さないのに取って付けた様に夫婦役を決めたよな!?」
さっきの百合生活フラグはこれの伏線なのか!?
「ロコス」
「………」
すると、地平線の向こうから竜巻がやってきました。
「竜巻ですか…いいですね、いいですねいいですね」
竜巻役…真庭喰鮫(ゲスト)
「いや竜巻に役とかいらないだろ!」
「いい加減にして頂戴阿良々木くん、そろそろロコスわよ」
「ツッコミも許されないのか僕は!?」
これはいかん、危ない危ない…と思ったドロシーは、愛犬トトと一緒にである小屋に隠れることにしました。
「急いでくださいトトさん!竜巻に吹き飛ばされたら一巻は終わりです」
「わん!」
「いやまだ終わらねぇよ!」
てか巻とかあるのか!?
「ロコス」
ずちゃ。
…何とか小屋に逃げこんだドロシーとトトでしたが、安心したのはほんの一時。
竜巻はあまりにも力強く、逆に家ごと吹き飛ばされてしまったのでした。
「いいですねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「いや―――――――っ!?」
「わお―――――――んっ!!」
「…なあ戦場ヶ原、心なしか神原が楽しんでるように見え」
「ぶちロコス」
「なんか進化してる!?」
ぼぐっ。
最初のうちはぐるんぐるんと竜巻に揺さ振られ壁に頭をぶつけたりと散々なドロシーでしたが、しばらくすると揺れも落ち着いてきました。
しかし、外をいくら見ても、舞い飛ぶ木々や葉っぱしか見当たらず、周りがどうなっているかまるでさっぱり。
「まあこの後ドロシーとトトは竜巻の中小屋で一晩を共に過ごすのだがな、うん、小学生はあまり経験がないからこの際存分に楽しませて頂こう」
「ナレーションさんこの場面カットして!」
R指定の童話できちゃう!