阿良々木暦の朝はあまり早くない。
目覚まし時計が鳴るのを止め、それを無視して二度寝に移る。
そうしていると、部屋の外からどたどたと足音が聞こえ、次には
「起きろ兄ちゃん! 朝だぞー!!」
「もう、お兄ちゃんったら! 早く起きないとだめだよ!!」
と、妹二人が起こしに来る。
それほど仲が良い訳でもないと彼は考えているが、実際は良好な関係を築いている。
「わかった、起きるよ」
布団を引っぺがされていやいやながらも目を覚ます暦。
そんな彼には最近湧いて出た悩みがある。それは……
(うーん、今日も勃ってない)
朝、男性ならあってもおかしくない生理現象である朝勃ちがないのである。
早くも勃起不全なのか、と不安がる彼を影から見つめている少女がいた。
影からと言うのは比喩でも何でもなく、彼の影の中から見ているのである。
「ん、忍、今から寝るのか? お前がこの時間にまだ起きてるのは珍しいな」
「いや、お前様。なんと言って良いのか分からんが……」
「? どうした? 何かあったのか?」
「最近寝ようとした瞬間に起こされるのじゃ、お前様の妹御のせいでな」
「?」
「……分からんのならそれでもよい。儂は今から寝るでの」
「???」
〈終〉