「で、どうだった?」  
「……どうだったとは?」  
「ストライクゾーンの可愛ゆい女子高生はいたかって訊いてんだよ、いーたん♪」  
「ぼくの人格が疑われるような、とつももなく誤解を招くような言い方しないでください。でも印象深い娘ってんなら」  
「いたのか」  
「ええ、各学年に一人ずつ」  
「しっかりチェックしてんじゃん」  
「まず一年生の娘なんですけどね。熱心に鉛筆削ってんですよ。中々勉強意欲の感じられる娘だなって思ったんですけど」  
「ふぅん、それで?」  
「よく見たらエリミネーターで削ってるんですよ、簡単にぶった切れそうなちっさい鉛筆を器用に」  
「西条玉藻だな」  
「次に二年の娘なんですが。この娘は授業中ずっとぼくの傍を離れなかった。まぁもててるってんなら、悪い気はしないんですけどね」  
「ふぅん、それで?」  
「黒板に書いてある方程式を前に、終了のチャイムが鳴り終わるまで、ずっと白い灰になってました」  
「紫木一姫だな」  
「トドメは三年生の娘。先に白状しちゃいますけど。この娘が一番やり難かった。前の二人に比べればあきらかに優等生なんですけど」  
「萩原子荻だな」  
「……ぼくインパクトのあるエピソード、なにか言いましたっけ?」  
「んにゃ。でもあいつを気にするだろうつーーのは、初めからわかってたよ。いーたんとあいつ、どっか似てるからな」  
「ぼくはどちらかといえば、いやいや、自分でいうのも心底何なんですが、確実に落ちこぼれでしたよ」  
「優等生と落ちこぼれ。両極端で似てるじゃねぇか」  
「そんなもんですかねぇ」  
「そんなもんさ。でもこれでこの学校の生徒、特に可愛ゆい娘と問題児、一日目でだいたい抑えられたじゃん」  
「……可愛ゆい娘と問題児、この学校は二つが等価なんですか」  
 まぁそりゃあ今日チェック、ではなく、印象に残った三人の女の子は、揃ってみんなハイレベルで可愛ゆかったけれども。  
 
「んーー? この学校に限らず世の中全部、可愛ゆい娘は問題児さぁ。もっとも問題児が可愛いとは限んねぇけど」  
 などと哀川さんは言うが、そもそもこの澄百合学園には、可愛ゆくない娘などいない。  
 でもそれだと、全員が全員問題児ということになりはしないか? …………なんだか頭が痛くなってきた。  
「ああ、そりゃそうと。おまえの可愛ゆい可愛ゆい、目に入れても痛くない玖渚ちゃんは、まだお出ましにはならないのか?」  
「まだ当分無理でしょうね。あいつの場合は、引きこもってる状態の方がデフォですからね」  
 なのになぜ教師などという、まったく似合わない職業を選択してるのか。  
 玖渚の考える事に、いまさら理由など求めても仕様がないのだが、それでももう少し責任を持てとは言いたくなる。  
 物事から逃げるのがデフォの、欠陥製品のぼくが言うのも、非常になんではあるが。  
「じゃあいーたんの代打教師生活も、意外に長くなりそうってわけか」  
「そうですね。いきなり明日になったら行くとか言い出すのも、まぁ玖渚ですからありそうな気もしますけど」  
 最低でも新学期くらいまでは、続けないわけにもいかないだろう。  
 辞めるにしたって後任が決まってないのでは、一応は真っ当な社会人だと思い込んでいるぼくとしては心苦しい。  
 ……しかし真っ当ねぇ。 我ながら何とも笑わせてくれる。これこそまさしく戯言だ。  
「ってか哀川さん、これも請け負ってくれませんかね? 諸般諸々の事情があるとはいえ、ぼくなんかが教壇に立つのは問題ありますし」  
 人類最強の請負人を雇うには、いったいどれほどの経費がかかるのかはわからないが、玖渚ならばキャッシュで払ってくれるだろう。  
 そもそもが哀川さん。この澄百合学園に来たのは、別に今日が初めてというわけではなさそうだ。  
 でなければ授業を終えたばかりのぼくを引っつかまえて、迷う事なく威風堂々食堂に辿り着き、A定食をパクつけはしないだろう。  
「………………………………………」  
 と考えてはみたものの、ここにおわすのは何しろ哀川さんだ。  
 縁も紫も合ってない女子校にいきなり乗り込み、本能に従って食欲を満たすくらいは何でもないのかもしれない。  
「いいかげんこのやり取りは飽きてきたが、あたしを名字で呼ぶのは敵だけだ。それから依頼は受けらんねぇよ、タッチの差だったな」  
 カラッとキレイに揚がっているアジフライを、サクサクと音を立てて咀嚼しながら、哀川さんはじろりとぼくを睨んでくる。  
 さり気なく言ったつもりだったが、請負人は見逃してくれなかった。  
 スリルを求めるのはいいが、もっと慎重に行った方が良さそうである。赤髭危機一髪の頭は、ぴくり、と半分出かかっていた。  
 それがドカンと飛び出したらば、ぼくの小っぽけな命が飛ぶのも疑いない。  
 
「ここの学園長とは、ちょっとした腐れ縁ってやつでな。つまらない仕事なんだけど、暇だったからついさっき引き受けちまったんだ」  
 どんな依頼かは聞くまい。  
 守秘義務といったものが哀川さんにも無論あるだろうし、わざわざ藪から蛇を突くような真似をしたくはない。  
「っかし、玖渚のやつもそうだが、非常勤教師のやたら多い学校だよな。ノアに呼ばれたときもてっきりそれかと思ったんだが」  
 どうも聖職について哀川さん。それなりにやる気は、どうやらまあそこそこはあったみたいだ。  
 だとすれば惜しい。もう後ちょっとでGTA、グレートティチャー哀川が見れたかもしれなかった。  
 しかし実際に教鞭を振るわれる生徒一同は学園長に、あるいは自らの幸運に、ひたすら今日一日くらいは感謝しても良いだろう。  
「動物心理学なんて、高校で教えるにはマニアックな科目の先生なんか、どうも神出鬼没系らしいんですが、絶賛行方不明中ですからね」  
「ん? なんだ初日にしちゃ内情にくわしいじゃん?」  
「生徒全員にドン引きされるような物体を、授業で嬉々としながら解剖する変態が、訊きもしないのに丁寧に教えてくれましたので」  
 それにしても、心の底から尊敬する恩師が、この学園に赴任していると知っていたならば、ぼくはいかにそれが玖渚友の頼みとはいえ、  
こんなところには絶対に足を踏み入れなかったろう。  
「いーたんてさ、友達は少ねぇのに意外と顔は広いよな」  
 だが、それがぼくの助けになったことは、残念ながらあまりない。  
 なのにここには、ぼくの短いろくでもない人生の中でも特に、《暗黒時代》といってもいい向こうでの知り合いがまだ他にもいやがる。  
 悪夢だ。  
 
 
「シマっていきますですよ〜〜〜〜」  
 何気なく廊下を歩いていたらば、ふっとそんな姫ちゃんの、まったくシマらない声が聞こえてきた。  
 窓から顔を覗かせると、グラウンドで野球をしている生徒達が見える。  
 しかしこれはぼくの偏見かもしれないが、普通女の子のやる球技なら、ソフトボールの方がふさわしいのではないだろうか。  
 マウンドに立っている姫ちゃんは、小さい身体を豪快にワインドアップで振りかぶっている。  
 投げた。  
 だいたい姫ちゃん届くのかと心配したが、打者のバットをキレイに空振りさせて、ビシッとキャッチャーのミットにボールが収まる。  
 ぼくの視力はかなり良い方だ。  
 だがそれでも、グラウンドまではかなり距離がある。なのにはっきりと見えた。それほどの、まるで漫画みたいな変化球だった。  
 蛇のように鎌首を持ち上げ、急激に浮き上がったボールが、それでも喰らいつこうとするバットを嘲笑うように、最後は沈み込んで  
ぴくりとも動かさないキャッチャーのミットへと吸い込まれた。  
「童夢くんかよ」  
 惜しい。  
 日本のプロリーグに女子があれば、いやいや、男女混合であれば、姫ちゃんはドラフト一位で某金持ち球団にも入れたろう。  
 結局バッターは三球三振だ。驚いたのは全部ボールの軌道が違うことだろう。その全てが魔球である。  
 そしてさっきからずっとキャッチャーのミットが、ぴくりともしないのは、姫ちゃんのコントロールが抜群ということもあるだろうが、  
そうしていないと例え球種がわかっていても、どうやら取れないみたいだ。  
「そういや完全試合って、見たことないんだよな」  
 まぁもっとも野球自体にあまり、いや、まったく興味がない。  
 何回までやったらゲーム終了なんだろうと、スコアーボードを探すが、残念なことに見つからなかった。  
「多分それは無理です。紫木には九回を投げるスタミナはありませんから」  
 おそらくぼくにかけられたんだろう涼やかな声に、顔の向きをグラウンドから横に変える。  
 初めて会ったときもそうだった。いまも何だか値踏みでもするみたいに、ジ――ッとぼくを見ている。ちなみに只今授業時間。  
「いけないな、きみみたいな優等生がこんなとこで、ふらふらしてていい時間じゃないよ、自習か何かなのかな?」  
「先生の授業なのですけど、自習なのですか?」  
 ああ……そうでした。ぼくだってこんなとこでのほほんと呑気に、ルールも漠然としかわからない球技を見ている場合ではない。  
 それにどうせ見るのならば、子荻ちゃんの足首にまで届く、異様なほど綺麗な黒髪の方がずっといいだろう。  
 
「迎えに来てくれたの?」  
 別に色っぽい会話をしたかったわけじゃない。  
「自習なら自習と決めていただかないと、わたしには策の立てようがありませんから」  
 いまいち子荻ちゃんの言ってることの意味がわからないが、自習、と一言告げたならば、そのまま回れ右で教室に帰ってしまいそうだ。  
 何だか拍子抜けのように感じるのは、やはりちょっとは期待してたということなんだろうか。やれやれ。  
「行こうか」  
 ぼくがそう言うと子荻ちゃんは、くるりと背を向けて教室へと歩き出す。  
 ゆらゆらと揺れている黒髪が、何だか場違いではあるがひどく扇情的に見えた。  
 こうやって見ると、姫ちゃんや玉藻ちゃんほどではないにせよ、意外に身体の造りは小さい。――――というより細いというべきか  
 これは使い古された言葉何だろうが、抱きしめたら折れてしまいそうだ。  
「……女の子には優しくしないとな」  
 益体のないことを呟くと、姫ちゃんの魔球のように浮かび上がろうとした感情を誤魔化すように、ぼくは再び視線を外へ向ける。  
 いくらなんでもクビを言い渡されるには早すぎるだろうし、その理由がセクハラというのだけは避けたい。  
 もう首を後方へと捻らなければ見れない野球を、何とはなしにまたまた見る。  
「おっ?」  
 バッターにボールは見えていなかったろう。とりあえず思いっきりバットを振っただけ、そんな風にぼくには見えた。でも。  
“カキンッ”  
 大数の法則。  
 子気味いい音を響かせて、ボールはフェンスを越えていった。見事としか形容しようのない特大ホームラン。  
 どうも姫ちゃんのボールは恐ろしく軽いみたいである。当てるのは難しいが、当たってしまえば際限なく飛ぶようだ。  
 マウンドでは打球の行方も追わなかった姫ちゃんが、がくりと膝を落としている  
 子荻ちゃんの指摘したスタミナ不足を露呈するまでもなく、完全試合の夢は脆く儚く消え去った。  
「姫ちゃん、お疲れさま」  
 ぼくは完全試合とは縁がないみたいだな。  
 そう思いながら正面を向くと、子荻ちゃんと目が合った。足を止めて、首だけ捻ってこっちを、ぼくをジ――ッと見てる。  
 
「なに?」  
「……野球、先生お好きなんですか?」  
 何でそんなことを真剣な瞳で訊いて来るのかは、ぼくにはまるでわからなかった。  
「いや全然、ぼくが好きなのはサムライだよ」  
 きょとんと首を傾げる子荻ちゃん。それはそうだろうが、野球に興味がないのはわかってもらえたと思う。  
「子荻ちゃんは好き?」  
「……全然」  
 短くそれだけを言って、子荻ちゃんはまた正面を向いて歩き始めた。  
 さっきとその後姿は同じはずだが、何だか苛立ってるように見えるのは気のせいだろうか。……否、戸惑っているかな?  
「興味がないものでも、先生はぼ〜〜っと見てられるんですね」  
 前言撤回。  
 やはり何か怒っているように感じられる。その正体までは窺い知れないが、でもまぁこの年頃は、常に何かに怒っているものだ。  
 ましてや女の子の気持ちなど、ぼくにわかるわけがない。  
 もっともそれは女の子に限らずで、ぼくには誰の気持ちであれわかりはしないが。子荻ちゃんの黒髪に見蕩れながらそう思った。  
 
 
 全国津々浦々にあるチェーン居酒屋の店内。  
 きっかけはぼくの何気ない教師生活一日目の、愚痴ともぼやきともつかない呟きだったと思う。あまりにも不用意だったろうか?  
“ダンッ”  
 なみなみと注がれていたジョッキの中身を、彼女は豪快に一気で煽って、テーブルに叩きつけるような勢いで置く。  
 間に一人挟んで、ぼくの右側に座っていたむいみちゃんは、ぎろり、と効果音が聞こえるくらいの視線をぼくへと向けた。  
「ぶったたきゃいいんだよっ!!」  
 これだけでむいみちゃんの人柄と、だいたいどんな形の青春を謳歌していたのかは、充分すぎるほどわかるだろう。  
 そりゃあショッキングピンクのジャージが似合うはずだ。  
「しっかしよぅ、そういうのって最近世間が、やたらめったらでうるさいんだろう?」  
「それに相手は女の子だしね、手を上げるのやっぱり不味いと思うよ」  
 この集団の中ではぼくが思うに、意外だがもっとも人格者だろう秋春くんと、意外でも何でもなく、見たまんまもっとも良い子だろう  
智恵ちゃんが揃ってそう言うと、むいみちゃんは片一方だけに、ぎろり、とやはりド迫力の視線を向ける。  
 どちらが睨まれているかなどは、ぼくがあえて語るまでもない。  
 まぁとりあえず、お酒を呑んでるはずなのに秋春くんの顔が、みるみると真っ青になっていったことだけは伝えておこう。  
「そんな甘っちょろいことほざいてるから、ガキどもが勘違いしてツケあがるんだ」  
 むいみちゃんは言いつつ、煙草を吸おうとフィルターを口元に持っていたところで、はっ、となると慌ててポキリとへし折った。  
 例え世間が決めたルールは破っても、自分で決めたルールは破らない。  
 ヤンキー出身の人ってこういうとこ、やたらと律儀というか頑固だったりする。  
「でもさ、いっくんが先生なんてびっくりだよね、《160キロの剛速球ホームラン、ただし頭部へのデッドボール》みたいなっ!!」  
 ……巫女子ちゃん、それはもしかして、ぼくに早々に退場しろということなのかい?  
 隣にちょこんと、何だか礼儀正しく座っている巫女子ちゃんは、両手でジョッキを持ってクピクピと、とても上機嫌で喉を潤してる。  
 その仕草は可愛いといえないことも、まぁないかもしれないしあるかもしれない。  
 
「確かにな、いっくんが一時間もガキどもの前でしゃべってる姿は、正直あたしには想像つかない」  
 店員の呼び出しボタンを押しながら、むいみちゃんがチラッと、巫女子ちゃんの肩越しに視線を送ってくる。  
 ぼくはそれをあえて無視して、近くを通りかかった店員を手を上げて呼び止めた。  
「ウーロン茶とビールの中ジョッキを」  
 びびったわけではない。本当だ。  
 ぼくは赤色の視線に散々晒されている。いまさらヤンキーのメンチなど、何するものぞといった感じだ。  
 しかし、むいみちゃんの視線は怖いとかどうとかいう前に、ぼくは身体のあっちこっちの節々が何だか痛くなってくる。  
 特に指の関節がズキズキと痛い。念仏の鉄に睨まれたら、きっとぼくは同じ感想だったろう。  
「どっかの誰かは心配なんじゃねえの、女子高生と一日中一緒にいるんだぜ。おれならくらくらしちまうね、はっきり言ってやべぇよ」  
「あ? なんなら秋春、あたしがいますぐにでも、くらくらさせてやろうか、あん? ガツンとさぁ」  
「……いや、その、ごめんなさい、すいませんでした貴宮さん、つい調子に乗ってしまいました」  
 視線が自分からぼくへと移った為だろう。口の動きが滑らかになった秋春くんだが、あっという間に謝罪と沈黙を強いられた。  
 鼻を両手で押さえて、また顔のシグナルをブルーにしている。  
 嫌なことでも思い出してしまったのか、心なし涙目になってるみたいだ。  
 巫女子ちゃんから聞いた話では、むいみちゃんは容赦のない性格だが、特に子供の躾にはうるさいらしい。  
 ぼくを抜かしたこの面子で、成人式に出席したとき、歳だけは子供のラインを越えたが、内容物はそのままの数人が、煙草は吹かすは  
酒は呑むはの狼藉を働き、その上巫女子ちゃんに絡んだものだから、ブチン、そんな音がするくらい、むいみちゃんはブチギレた。  
 殴る、殴る、とにかく殴る。  
 それは天晴れな大立ち回りだったらしい。多分会場にいた八割以上の人は拍手喝采だったろう。実際巫女子ちゃんはすっとしたらしい。  
 しかしここで、常識人であるところの秋春くんは、このままでは相手が病院送りどころか、むいみちゃんが刑務所送りになると考えて、  
後ろから羽交い絞めにして止めようとした。  
 でも後ろから、むいみちゃんの言い分ではこっそり近づいたのが不味かったらしく、  
“ゴズゥッ!!”  
 振り向き様の肘鉄がモロに鼻っ柱にヒットして、秋春くんは鮮血を上げてもんどり打ち、気づいたときは救急車の中だったらしい。  
 そのときの様子を巫女子ちゃんは『いっくんいっくん、わたし《ここはどこ? わたしは誰?》このフレーズ初めて聞いちゃったよっ』  
興奮気味に教えてくれたものだ。  
 ぼくも人のことは決して言えないが、貧乏くじとは秋春くんの為にある言葉だろう。どこか尊敬に値する存在だ。  
「ね、ねぇいっくん、やっぱり女子高生はさ、ピッチピッチで可愛かったりするのかな?」  
 巫女子ちゃん。そういうときの擬音はピッチピッチではなく、出来ればピチピチにしてほしい。  
 ピッチピッチだと若さや元気ではなくて、何か別のものが制服から張ち切れそうだ。  
 ぼくはどちらかというなら、すらっとした女性が好みだったりする。それで年上で童顔だったりしたら言うことはない。  
 
「どう……なの……かな? いるのかな? いないのかな? いっくん的に可愛い娘は?」  
 ぼくはなんとなく、本当に考えなしのなんとなくで、巫女子ちゃんではなく智恵ちゃんを見る。  
「………………………………………」  
 ただただにこにこと笑っていた。ぼくと巫女子ちゃんを愉しそうに眺めながら、江本智恵はただただ笑っていた。  
 大人になってもそれは生きた時間ではなく、死んでない時間が長くなっただけだと、そんな風に答えを出してしまった少女が笑ってる。  
 ぼくは智恵ちゃんの目を見ながら、巫女子ちゃんへと答えを返した。  
「みんな可愛いよ、まだまだ子供だけどね。でも、巫女子ちゃんほど可愛い娘はいなかったかな」  
「うわぁっ!!」  
 勝手にシリアスモードになろうとしたぼくを、巫女子ちゃんの、びっくり、を表してるんだろう声が引き戻す。  
「……どうしたの?」  
「いっくんがこんなにはっきりと褒めてくれたの、初めてだったから嬉しいっ!!」  
 にこにこする巫女子ちゃん。  
 いつものこととはいえテンションが高い。まぁ上がったままで戻ってこない、どっかのどこかの青髪娘よりは大分マシだけどさ。  
 そう思った。  
 間違って、思ってしまった。  
「いっくんはねぇ《やる気はバリバリ、でもリストラ》みたいなっ!! 《職業ボクサー、特技は大食い》み・た・い・なーーっ!!」  
 ――――葵井巫女子のテンションは閉店時間になっても、ぼくらの前に戻ってきてはくれませんでした。  
 帰り道では立ったまま寝るという、荒業を披露し、結局はぼくが(むいみちゃんが無理矢理乗せた)おぶる始末である。  
 役得といえなくもないが、店を出てから結構歩いていて、いいかげんに重い。  
 状況に必要以上に流されるぼくにも責任はあるが、まったくもって、いまの巫女子ちゃんに送りたい言葉は、唯一ただ一つだけだ。  
 女の子じゃなかったら放り投げたいところを、ぐっと抑えて小さく口の中だけで呟く。  
「甘えるな」  
 
 
「ゆらーーりぃ」  
 この学園に来てからそろそろ一週間。大分慣れてきた。  
 自分にこんなに順応性があったのかと、最初は驚いたものだが、多分それはここが、この学園が異常な空間だったからだろう。  
 ならばそれこそは、慣れ親しんだぼくの領域だ。  
 どことは実はまだよくわからないのだが、この学園はおかしい、一度そう認識してしまえば、もう時間はそれほどいらない。  
 答えが漠然としているので些か不安ではあるが。オーケー。ドンと来い澄百合学園。開き直りは完了している。  
 そんなぼくのリクエストに運命だか何だかが、律儀にも応えてくれたんだろうか。余計なことをしてくれやがって。  
 場所は学園の廊下。時刻は夜の十一時半。  
 どうしてこんな時間にまでいるのかといえば、この学園を愛してやまないからではなく、  
『うちな、今日どうしても外せない予定があんのんよ。つーーわけでどうせ自分暇やろ? 宿直任せたえ、ばいばいきーーん』  
 心から尊敬して尊敬して尊敬して尊敬して尊敬して尊敬して、尊敬し尽くして止まないぼくの恩師に、一言の半畳すら入れられずに  
宿直を押し付けられて、ぼくはこうして深夜の学校にいる。  
 あんのチンチクリンめぇ。  
 ぼくにだって一応予定というものはあるのだ。『なんなのん?』と訊かれたりしたら返事に困るが。それがまた腹が立つ。  
 と。  
 まぁこんなまったくもって納得のいかない理由で、ぼくは宿直に付き、しかも真面目に校内巡回などをしてるわけだが、長い廊下の  
向こうから滲むように、その人影はゆっくりと目の前に現れた。  
「……ゆぅらぁりぃ」  
 すぐ前まですでに来ているので、正確を記するば《人影》ではないのだが、ぼくには何だか彼女がぼやけてるように見える。  
 膜が張ってあるかのように、その姿はひどく曖昧だ。  
「こんばんわ玉藻ちゃん、こんなところでこんな時間に奇遇だね」  
「――ああ。こんばんわ先生」  
 手を上げて可愛く挨拶してくれたその手には、キランッ、と光るグリフォン・ハードカスタム。もう片方の手には勿論エリミネイター。  
 不審者を発見した。  
 
「何してんの? ぼくの記憶力が確かなら、下校時間は過ぎてると思うんだけど」  
 言いつつ窓の外を見る。  
 真っ暗だ。  
 ぼくの記憶力の方はかなり怪しいが、どう考えたところで、いたいけな少女が居ていい時間ではないだろう。  
 学校好きにも限度がある。  
「えーーっと……そう。保健室でこっそりと寝ていたら、学校がすごく静かに、あれ? あれあれ? いま一体何時なの……でせうか?」  
 玉藻ちゃんはぼくの視線を追いかけると、いま気づいたとばかりに、真っ暗な外の様子を見て、不思議そうに首を傾げた。  
 ……いや玉藻ちゃん、きみの方が百倍は不思議だから。  
「ゆらーーりぃ……ゆぅらぁりぃ」  
 呟きながら玉藻ちゃんは、しきりに頭を軽く振っていた。  
 偏頭痛でもあるのか、少し苦しそうで、痛みに耐えているようにも見えるが、ただ単純に寝すぎなだけかもしれない。  
 しかしそれでも玉藻ちゃんは眠そうな顔をしていた。  
「まぁいいや、面倒だから」  
 若いんだからもっと物事に対して探究心を持った方がいいと思うが、玉藻ちゃんはかったるそうに、生きているのがかったるそうに、  
首を動かしてぼくを見ると、えへっ、と可愛く笑窪を作る。  
「……ふぅ」  
 少女の笑顔とは普通癒されるはずなのだが、何だかぼくはどっと疲れてしまった。やっぱりこの学園、慣れねぇ。  
「とりあえず宿直室に来て、玉藻ちゃん」  
 とりあえずその後は考えてないが、ここで立ち話もなんだろう。  
 だが実際どうするか。学園の生徒達はほとんどの者が寮暮らしだが、ここからならどう見積もっても軽く三十分は掛かる。  
 時間が時間だからして、まさか玉藻ちゃん一人で帰すわけにはいかない。  
 ナイフ大好きの顔面刺青な通り魔と、いつ遭遇しないともいえないだろう。あの《人間失格》も相当な暇人だし。  
「ん?」  
 そこまで考えて、ぼくは後ろを振り向いた。  
 玉藻ちゃんはふらふらした足取りで付いて来てる。その手に握られた二本のナイフが、月明かりに照らされて鈍く妖しく光っていた。  
 
「あのさ玉藻ちゃん、出来れば隣りを歩いてくれないかな」  
 霞がかった虚ろな瞳がぼくを見て、こくん、と小さく可愛らしく、そしてやはりかったるそうに頷く。  
「いいですよう」  
 トテトテと寄ってくると素直に横に並んでくれた。  
 さすがにいくらぼくでも、ナイフを所持した不思議ちゃんに、背中を晒して歩く度胸も勇気も覚悟もない。  
 しかしナイフさえ握ってなければ玉藻ちゃん、中々レベルの高い美少女なわけだし、特別ぼくにロリィな趣味があるわけではないが、  
夜の校舎を二人っきりで歩くなど、かなり良いシチュエーションなんだけどなぁ。  
「………………………………………」  
 チラッと玉藻ちゃんを盗み見る。  
 うん、可愛い。ぼくがそっちの属性があるならば、思わずこの場で押し倒すくらいには可愛いだろう。  
 もっともそうなれば、最終的に床に冷たく、メッタギリにされて転がっているのは、まず間違いなくぼくなのは疑いない。  
「ああ、そうだ玉藻ちゃん、さっきまで保健室で寝てたってことはさ、鍵は開けっ放しだよねぇ?」  
 あそこには一応劇薬の類もあることだし、なにより朝出勤してきたときに、鍵が開きっぱなしだったりしたら大騒ぎだろう。  
 情緒不安定な水着のお姉さんが。  
「あーー。えーーーーっと…………切っちゃいました。えへへ」  
「……はい?」  
「起き抜けだったんでぇ。なんとな〜〜く、スパスパッと。扉真っ二つにしてきちゃいました」  
 玉藻ちゃんはにやけたような薄笑いをして、ほっぺたを赤くする。照れているらしい。そんな仕草もやはり可愛らしかった。  
 けどそれは。なんとなくで済ましていいのか。そしてなにより、照れ笑いの使いどころが違うような。  
 ……何かぼくもだんだんと、深く考えるのがすげぇ面倒になってきた。  
「良かったら玉藻ちゃん、今日はもう遅いし、宿直室に泊まっていくといいよ」  
 言いつつぼくは鍵をポケットから出して、玉藻ちゃんに手渡す。  
 受け取った玉藻ちゃんは、クマだかネコだかわからないキーホルダーが付いた鍵を、何か考えているのかいないのかはわからないが、  
ただぼんやりと見つめていた。  
「ぼくは保健室で寝るから、安心しておやすみ」  
 くるっとちょっとだけ格好付けて、玉藻ちゃんに背中を向けたぼくだが、その足取りはひたすらに重い。  
 逃げてぇ。  
 というのが偽らざるぼくの本心ではあるが、しかしそういうわけにもいかないだろう。  
 超被害妄想が激しく、超疑心暗鬼で、超傷つきやすく、超情緒不安定な上、超涙もろい保険医を、フレンチクルーラーをエサにして  
朝一で宥めなくてはならない。  
 とてつもなく崇高な使命を帯びてるのだ。――――でもやっぱ逃げてぇ。  
 
「ゆらーりぃ……先生」  
 誰かに止めてもらいたいと思ってたからだろう。  
 ぼくの足はぴたりと、玉藻ちゃんの小さな、うっかりしなくとも聞き逃しそうになる呟くみたいな声に、あっさりと動きを止めた。  
 それに、玉藻ちゃんの方から話しかけられたのは、初めてだったりもするし。  
「これ貸したげますよ」  
 鍵の代わりに渡されたものは、ずっしりと重い、グリフォン・ハードカスタム。……なんだこれは? 一体どういう意味なんだ?  
 ってかこんなものを平気な顔して振り回せるとは。  
 それも二本も。  
 女の子にこれは褒め言葉じゃないだろうが、玉藻ちゃん、こんなちっこい身体で結構な力持ちだ。こりゃ素手でも勝てそうにはない。  
「護身用にどうぞ。えーーっと……まあいいや。面倒なんで、これでおやすみします。……ゆらーーりぃ」  
 極悪なゴツいナイフ一本を残して、まるで白昼夢(夜だけどさ)でも見ていたように、少女は現れたときのように闇に溶けて消えた。  
 ぼくは玉藻ちゃんから借り受けたばかりの、グリフォンの鋭すぎる危険な刃をじっと見る。  
「玉藻ちゃん、これ出した瞬間さ、正当防衛主張しても、誰も訊いちゃくれないと思うんだけど、どうだろう?」  
 それこそ誰も訊いちゃいないのだが、夜の学園の廊下で、ぼくは呟かずにはいられなかった。  
 
「ポン」  
 切った牌がぼくの手から離れるよりも早く、南家から実に面倒そうな声がかけられた。  
 文字にすればたった二文字しかない音であっても、それははっきりと、誰にでもわかるだろう。ぼくにはわかった。  
 長く細い綺麗な指先がすっと伸びて、ぼくの切った白の牌を攫っていく。  
 しかしこんなことを言ったら、またかなみさんに冷たい目で見られてしまうだろうが、これぞ芸術家、と思わせる繊細な指先だ。  
 ぼくがその芸術家の指先を、何とはなしにじっと眺めていると、かなみさんも気づいたのか、興味なさそうにぼくを見る。  
「知らないの? わたしが《鳴きのかなみ》て呼ばれてるの」  
 かなみさんの手牌の横を見ると、三つ同じ絵の描いてある牌が四列並んでいた。かなみさんは確かに鳴きが多い方だろう。でも。  
 知らねぇよ。  
 当たり前だ。知るわきゃない。授業も終わったので、さぁ帰るか、と腰を上げたところで、待ってましたとばかりの先輩に捕まって、  
こうして美術室までわけもわからず連れてこられたのだ。  
 かなみさんの通り名よりも、どうしてこんなところで麻雀をやらされているのか、それを出来るならば先に知りたい。  
「数合わせに決まってるでしょ。きみさぁ、頭が悪いのは黙ってればわからないんだから、ちょっとは口を慎んだ方がいいんじゃない?」  
 かなみさんはやれやれとでも言わんばかりの、こちらのテンションが下がりそうな態度だった。  
 と。  
“タンッ”  
 そんなどうしょもない苛められ子の仇討ち、というわけではないだろうが、軽やかな音が、まだ何か言いたそうなかなみさんの追撃を  
やんわりと遮る。  
「知ってるよねぇ? わたしが《ドラ爆の赤音》と呼ばれているのは」  
「………………………………………」  
 すいません。このしがない戯言遣い、ついぞ勉強不足でして、そちらもまったく持って知りませんでした。  
 赤音さんの役を見ると、必殺の大三元爆弾。ちなみに三連チャンでかなみさんを直撃である。  
 恐る恐るかなみさんの方を窺うと、金の柳眉が微かだが、本当に微かだが、不機嫌そうに持ち上がったのをぼくは確かに見た。  
 
「くっ……くくくっ…………かっははははははは」  
 ぼくは対面にいる西家を見る。  
 そこに座っているのは、一応最初は忍び笑いにしてやるかと、努力だけはしたんだろう深夜さんが大爆笑していた。  
 ちょっと羨ましい。チキンのぼくには出来ない芸当だ。  
 そう思って今度は深夜さんをじっと見ると、やはりその視線に気づいたのか、にかっ、と男っ前に笑って深夜さんもぼくを見た。  
「どうした新米先生、恋する乙女みたいにおれを見たりして。非常に残念だけど、おれにはそっちの趣味はないよ」  
 ぼくだってない。  
「……深夜さんは何て、何て呼ばれてるんですか?」  
「ん? 逆木深夜だけど、この二人みたいな酔狂な通り名は、おれら凡人には普通ないから、きみだってないんだろ?」  
 勿論ない。  
 といいたいところだが《戯言遣い》、これがぼくの通り名といえば通り名か。  
 それにぼくの周りにはやたら通り名、二つ名を持ってる人が多かったりする。《人類最強の請負人》を筆頭に、数えたらきりがない。  
 しっかし変わり者ばかりだ。類は友を呼ぶというが。  
「あるわきゃないですよ、ええ、絶対にそんな通り名なんて戯言は、神に誓ってありえません」  
 ぼくは自分自身のことを、まさか普通だと思っているわけではないが、何となく哀川さん達と並んで数えられたくはない。  
 劣等感、それはそこまで露骨に表現されるものでなくとも、ぼくの感じている感情はそれに近いだろう。  
 まあそれだけじゃないけどさ。  
「安心したよ。おれだけそういういのがないんじゃ、おかしいのはおれの方だからね」  
 視線はぼくへと向けながら、遠回りもオブラートに包みもせず、深夜さんは二人はおかしいと、はっきりストレートに断じていた。  
 二方向から襲いくる氷の視線など、どこ吹く風のナイスガイ、逆木深夜32歳。  
 それに思わず頷きそうになってしまったのを、ぼくは意志の力を総動員して、何とか頭の動きをストップさせる。  
「………………………………………」  
 しかしそれでも何だか、左右からの突き刺すような視線を感じて、ぼくは誤魔化すように窓の外を見た。  
 とっぷりと暗い。真っ暗だ。今日もこのろくでもない学園に泊りかもしれない。はぁ、みいこさんに会いたいなぁ。  
「レート上げたいんだけど、いいよね?」  
 どうせぼくの意見など通りはしないのだ。  
 それは強ち間違ってはいないわけだが、ぼくはこのとき、かなみさんの立てた指の本数と、その単位を知っておくべきだったろう。  
 このブルジョワどもめっ!!  
 
 そして次の日。みいこさんの満面の笑顔(見たことないけど)より、給料日を心待ちにしている自分が、また少し嫌いになった。  
 圧倒的な一人勝ちをした赤音さんが、肩をポンポンと慰めるように、そのくせ容赦なく貧乏人から点棒を毟り取っていった手で、優しく  
叩きながらぼくに言う。  
「今度学園の合宿で、日本海の孤島に行くらしいけど、そのときまでに少しでも、腕を磨いておいた方がいいよ」  
「赤音さんはここまでなるのに、やっぱり苦労とかしたんですか」  
 ぼくはちょっと動くだけでジャラジャラと、やたらめったらうるさい赤音さんの点棒の束を、物欲しそうに眺めながら訊いてみた。  
 すげぇ羨ましい。  
「苦労をしたことは一度もない」  
 きっぱりと赤音さんは言った。  
「ただ、努力はしたがね」  
 含蓄のある台詞だった。ぼくにはとても、ステンテンにされたぼくにはとてもとても、言えないだろう台詞だった。  
「ふふっ。何だか偉そうなことを言ってしまったな。若人、精々精進したまえよ」  
「何とかの横好き、て言葉を体現しないようにね」  
 圧倒的な一人負けをしたぼくがいるから目立たないが、ブービー賞だったかなみさんが、面白くもなさそうにそう混ぜ返す。  
「好きこそ物の上戸なれ、とも言うけどね」  
 赤音さん、多分おそらく、ぼくをフォローしてくれたんだと思いますが、それだとただのうわばみです。  
 まあそんな些細なツッコミは、赤音さんにとっても、かなみさんにとっても、どちらにとってもどうでもいいんだろう。  
 こんな風に放課後まで、わざわざ顔を合わせてるのに、この二人の仲はすこぶる悪い。無言でにらみ合っていた。  
“キ〜〜コ〜〜カ〜〜コ〜〜ン”  
 チャイムの音が鳴り響いても、二人とも視線を、微動だにすらさせず逸らさない。  
 赤音さんもかなみさんも一時限目は授業があった気がする。そしてぼくもあるのだが、さて、これからどうしよう?  
「ああ、いいよいいよ。授業あるんだろ? 後はおれに任せて、まだひねてない女の子達のところに行くといいよ」  
 二人は深夜さんの皮肉もまるで聞こえてないのか、ぴくりともしない。何だか完全に、先に動いたら負けだ状態になっていた。  
「……じゃあ、後はお任せします」  
 手のひらを晒す深夜さんと、見てはいないだろうが、二人にも一応ぺこりと頭を下げて、ぼくは逃げるみたいに、いや、みたいではなく  
逃げるんだけど、そそくさと美術室を後にする。  
 大人の関係って複雑だよな。  
 さして感慨があるわけでもないのに、難しいことを考えているふりをしながら、ぼくはまだいまのところは、純粋無垢な少女達の待つ  
教室へと歩き出した。  
 
 
 

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