「うわっお兄ちゃん。どうしたの?べろんべろんじゃない」  
「久しぶりに忍野がきてさー。付き合わないかいって飲まされたんだよ」  
お兄ちゃんは今まで見たことないぐらいよたよたでぐたぐたになってしまっている。  
忍野って人は知らないけれど、こういうとこだけ真面目なお兄ちゃんがお酒を一緒に飲むぐらい親しい人なのかな。  
「そんなんじゃ歩けないでしょっ。ほら」  
「ありがとう月火ちゃん」  
肩を貸してよっこらお兄ちゃんを部屋へと連れてってあげた。  
正直重いけれど、普段見ないお兄ちゃんの表情がちょっとだけ面白い。  
「よいしょっと」  
倒れこむようお兄ちゃんをベッドへと連れて行ってあげたけれど  
着替えもせずに倒れこんだまま動かなくなった。  
それどころか私を腕の下に押し潰したままだ。  
「重いってばー」  
まるで気絶してるみたいに動けないお兄ちゃん。  
しょうがなく横でじっとしていると突然ぎゅっと抱き締められた。  
「月火ちゃんはぷにぷにしてて気持ちいいなー」  
ぷにぷにって言うな!  
そう言いたいのお兄ちゃんが私を抱いて笑っているのにドキドキする。  
だらしなく綻んでいる顔なのに、目の前で幸せそうにしていられると勘違いしてしまいそう。  
 
「も、もうどこ触ってるのよ」  
いつも頭を撫でられたり、たまにおっぱい触られている時と違って  
ぎゅぎゅっと力強く、それこそ恋人を抱き締めているみたく腕の中に収められちゃってる。  
ゴツゴツした手がちょっとだけお尻にあたったり、最近凄く逞しくなった腕が背中を抑えているのが少しだけ心地いい。  
いやいやいやいや私何考えてるの。  
お兄ちゃんは適当に触っているだけなんだから。  
勘違いしない。勘違いしない。  
そんな風に自省していると  
「月火ちゃん、んー」  
んー?  
ってなんかお兄ちゃんが私の目の前で唇を軽く突き出して何かを求めるように  
っていうかわかりやすいぐらい唇をムチューとこっちへ向けていた。  
あー酔ってるんだなー。  
お酒がどういうものだか私は飲んだ事ないけれど  
クールに決めたい、決めようとしているお兄ちゃんがこんな風になってしまうぐらい凄いものなんだなー  
そう思って、じっと見ていると少しだけお兄ちゃんがまだかなーって眉を潜めて悲しそうだ。  
うわー いつも無駄に強がってて無駄に偉そうなお兄ちゃんが変な顔してる。  
抱き締める腕もぎゅぎゅぎゅっと強くなってて子供みたいだ。  
はっきり言えば甘えたがってる幼児みたいだ。  
 
勘違いしてほしくないけど、お兄ちゃんの普段みない表情にときめいたとかそんなわけでもなく  
しょうがなく同情するような気持ちでちゅっと唇をつけてあげた。  
お兄ちゃんの満足するような吐息が唇から入り込んで、嗅ぎ慣れないお酒の匂いも一緒に吸い込んじゃったけど  
キスっていうよりはなんだか可愛い、お兄ちゃんだけど弟みたいな子供を  
あやしつけるようにちゅちゅっとキスをしてあげる。  
ほどなくお兄ちゃんは私にキスをしたまま寝息を立てて眠りについちゃったようだ。  
けれど抱き締める腕は一向に衰えない。  
むー、動けないけどたまにはお兄ちゃんが妹に甘えるのも面白いかなー  
からかえるネタになるかもしんないし。  
しょうがなく、私もお兄ちゃんの背中に腕を回してお酒臭い息を浴びながら目を瞑った。  
 

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