「ん、今日はここまでにしとくか」  
机の上にペンを置き、僕はノートを閉じた。  
時計を見れば結構いい時間だ。  
「まだそんなに眠くはないけど明日の学校に差し支えるしな」  
新学期早々サボタージュしてしまった僕である。  
戦場ヶ原みたいな推薦進学ではないので内申点は気にしなくていいのだが、クラスメートから妙な目で見られるのは勘弁だからな。  
僕は軽くストレッチをし、灯りを消してベッドに潜る。  
ベッドに。  
ついこの前羽川が使ったベッドに。  
「……………………」  
くそ、寝れない。  
なんだか余計なことを色々考えてしまう。  
こういうときは…………ん?  
「…………」  
「…………」  
目が合った。  
天井からぶら下がる金髪の幼女。  
正座をしながらこちらを見ている。  
「何してんだよ忍?」  
僕が呼びかけるとすとんと降りてくる。  
そのまま僕が寝ているベッドの淵に腰を下ろした。  
「ていうか突然天井にいるなよ、びっくりするだろ」  
「ん? 別に初めてでは……ああ、あの時お前様はおらんかったな」  
「あの時?」  
「元委員長がこの部屋に泊まっておった時のことじゃ。リンクが切れたお前様を探してこの部屋に来たのじゃよ」  
「ああ、あの時か。大変だったよなー」  
まさかあんな大冒険をするハメになるとは。  
僕は思わず苦笑する。  
「お前にも世話になったな、心配かけて悪かった」  
こちらに背中を向けている忍に声をかけた。  
当然『誰が心配なぞするものか』みたいな返事があるものだと思っていたのだが。  
「……………………」  
何も返ってこず、そのままもそもそと僕の布団の中に入ってくる。  
何事かと思う間もなく僕に抱きついてきた。  
少し身体が震えているのも気のせいではないだろう。  
声をかけるのも憚られ、そっと頭を撫でる。  
「ん……すまぬ、ちょっと昔を思い出してな」  
昔。  
忍がまだ忍でなく、キスショットだったころ。  
妖刀『心渡』の昔の持ち主で、忍の最初のパートナーである吸血鬼の男。  
今回の事件は忍にとっていろんなことを思い出させてしまったのだろう。  
僕は忍の背中に手を回してぎゅっと抱き締める。  
「もう……誰かを失うのは嫌なんじゃ……」  
忍はそうつぶやき、僕にしがみつく。  
長生きしてきたとはいえ、やはり今の忍の精神年齢は外見相応に幼く、不安定なところもあるのだろう。  
僕は忍の頭を撫で続けた。  
「ごめんな忍、迷惑ばかりかけてしまって」  
「ふん、別に構わんよ。それがお前様なのじゃからな」  
 
忍は皮肉な笑みを浮かべる。  
「周囲の人のため、おのれの信念のためになら、儂にだけはいくらでも迷惑をかけるがよい」  
でも、と小さな声で忍は続けた。  
「儂の前からはいなくなるな。あのツンデレ娘や元委員長のためにならお前様は命すら捨てる覚悟があるやもしれぬが……当人たちも儂もそれは決して望まぬ。じゃから……んっ」  
僕は忍の言葉を最後まで聞かなかった。  
これ以上喋らせると忍の目に溜まった涙が溢れそうだからだ。  
忍は自分の口を塞いだ僕の唇に驚いたようだが、すぐに貪るように押し付けてくる。  
ぐいぐいと身体を密着させ、より一層腕の力を込めてきた。  
「お前様よ」  
唇を離し、少し息を荒くした忍が呼びかけてくる。  
「儂に、お前様を感じさせてくれ。恋人のツンデレ娘のことも、元委員長のことも、忘れて今だけは、儂のことを見ていてはくれぬか?」  
僕は無言で再び忍にキスをする。  
今度はくっつけるだけではない、舌を絡め合い、激しく吸い合うディープなキスだ。  
舌を擦り合わせながらも忍は僕の服に手をかけ、次々と脱がしていく。  
自分の服も消し、お互い全裸になったまま再び僕たちは強く抱き締めあう。  
忍の柔肌に屹立した僕の肉棒がこすれ、より一層固くなる。  
忍もすでに濡れ始めた秘所をごしごしと僕の身体に擦り付けた。  
自然と僕たちの腕が伸び、互いの性器に触れる。  
「んっ……」  
ヤバい。  
最近色々あってヌいてなかったせいか、握られただけでイってしまいそうだ。  
忍はというと。  
「ふ、あ、あっ」  
秘口に中指を沈め、親指でくりくりと陰核をいじると切なそうな表情で喘ぐ。  
こっちももうイきそうらしい。  
忍は身体を起こして僕の身体に上下逆にのしかかる。  
僕の目の前にはとろとろと蜜を溢れ出させている秘口が。  
忍の目の前にはギンギンに反り返る僕の肉棒が。  
互いの腰に腕を回してしがみつき、互いの性器に唇を当てる。  
「っ!」  
びくんと僕たちの身体が跳ねた。  
それでも声はこらえ、そのまま相手に刺激を与え続ける。  
僕は陰核を舌で転がし、溢れ出る蜜を吸い、秘口に舌を差し入れてかき回す。  
忍は亀頭を口に含み、唇に強弱をつけながら締め付け、先っぽを舌で舐め回す。  
その間も僕たちは身体を揺すり、密着している身体の前面を激しく擦り付け合う。  
もう限界が近い。  
僕は少し腰を突き上げて忍の後頭部に手を伸ばしてぐっと押し、より深くくわえさせる。  
そして反対側の手の指を目の前の秘口に突っ込む。  
 
「忍っ……出すぞっ」  
その言葉に忍の動きが大きくなる。  
僕も秘口を弄る指と陰核を舐める舌の動きを激しくした。  
「く、うううっ!」  
「ん! んむううっ!」  
そして僕たちは同時に高みへと達した。  
忍は身体を痙攣させながら大量の愛液を吹き出して僕の口周りを濡らす。  
僕は忍の口内で大量の精液を噴射し、喉奥に流し込もうとする。  
びくっびくっと身体を震わせながら僕たちは悦楽の余韻に浸り、やがてぱったりと四肢を投げ出した。  
・  
・  
・  
「のう、お前様よ」  
「ん?」  
僕の腕を枕にしていた忍が話しかけてくる。  
「お前様は儂を最後まで抱こうとは思わんのか?」  
「…………」  
最後まで抱く。  
それはつまり。  
「儂の方はお前様なら構わんと思っておる。お前様だってしたくないわけではなかろう?」  
「んー……」  
そりゃあしたくないわけじゃない。  
でも。  
「いや、なんていうかこういうのは流されてするものじゃないだろ」  
「む、何じゃと? 好意は無いというのか?」  
違う違う。  
そうじゃなくって。  
「もっとこう、僕たちの初めてはちゃんとしたときにしよう。女の子はそういうのって気にするだろ?」  
忍は茫然とした表情をする。  
かと思えばくっくっと笑い始めた。  
「まさか儂を。長年恐れられた吸血鬼のこの儂を。怪異の王と呼ばれたこの儂を。女の子扱いとはな」  
よほどツボに入ったか目に涙まで溜めている。  
僕は憮然とした声を出す。  
「あーあー悪かったな、変なことを言って」  
「いや、構わぬよ」  
目尻を指で拭きながら忍はまた僕に抱きついてくる。  
「お前様との初めての夜のエスコート、楽しみにしておるよ」  
「…………過剰な期待なんかするなよ」  
こうして。  
僕は忍との約束を取り付けられた。  
忍を残して死なないこと。  
迷惑をかけてもいいから忍の前からいなくならないこと。  
そして。  
忍にとって素晴らしいシチュエーションで忍を最後まで抱くこと。  
さて、どうしたものかな…………。  
 
 
しのぶタイムへ続きます(大嘘  
 
 
 

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