眠れない。眠れない。眠れるわけがない。
理由は分かりきっている。
右を見ても左を見ても、仰向けに寝てもうつ伏せで寝ても、
座ってみても立ってみても、もちろん寝転んでみても。
そこかしこに阿良々木くんを感じてしまうからだ。
あぁ、阿良々木くん、ちゃんと勉強してるんだね。
文化祭前に私と選んだ参考書が勉強机に並べられている。
あぁ、阿良々木くん――戦場ヶ原さんとは上手くやっているんだね。
机の上の、写真立て。この上なく輝く笑顔で、二人が映っている。
画面右下が暗くなっているのは、おそらく阿良々木くんの指が映りこんでしまったのだろう。
画面全体が斜めに傾いているのは慣れない自分撮りに苦労したんだな、と微笑ましくて。
その姿はとても、幸せそうで。
私のしてきたことは、間違ってなかったんだなぁって。
それなのに何故か、切なくって。
だけれどその感情に身を任せる事は出来なくて。
だけれどその感情を抑える事なんて出来なくて。
私は布団にがばっ、と潜り込み、つぶやいた。
「…………だい、すき」
眠れない。眠れない。眠れるわけが、ない――