11月11日。  
僕はいつも通り帰宅すると戦場ヶ原の家に向かう準備をする。  
今日勉強する科目の参考書とノートを鞄に突っ込み、玄関でスニーカーを履く。  
立ち上がって玄関を出ようとしたところで。  
「どこ行くんだ兄ちゃん?」  
火憐ちゃんに声をかけられた。  
「どこって……日課の勉強会だよ」  
「ああ、そうかそうかそうだっけ。んで、何時頃帰るんだ?」  
「まあだいたい七時から九時の間くらいだろ、いつも通り」  
「そんなアバウトじゃダメなんだよ!」  
「は?」  
「あっ、いやいや何でもねーぜ。そうだ、今日は少し夕飯遅いから九時くらいにしろよ、いいな兄ちゃん!」  
「…………わかったよ」  
本人は隠しているのかもしれないが、何か企んでいるのがバレバレである。  
まあ今日が僕の誕生日だというのを鑑みればサプライズパーティーでもしてくれるつもりなのだろう。  
気付かない振りをして家を出る。  
そういえば戦場ヶ原は僕の誕生日を知っているのだろうか?  
僕から話したことはないが知っていてもおかしくはない。  
最近デレてきている傾向からして、それこそ今日訪ねたらクラッカーが鳴る可能性だってある。  
まあ。  
そんなのは僕の希望的観測であって、結局いつものように戦場ヶ原の授業が始まったわけだが。  
ま、知らなかったのなら仕方ないし今さら言うのもどうかと思う。  
そもそも家族以外に誕生日を祝ってもらったこともないし。  
僕は雑念を捨て、目の前の問題に集中する。  
「…………」  
「…………」  
「そろそろ休憩しましょうか」  
僕がキリのいいところまで問題を解き終えたところで戦場ヶ原が声をかけてきた。  
ペンを置き、一息ついて用意してくれたお茶をすする。  
「ねえ、阿良々木くん」  
「ん?」  
「初デートの時のこと、覚えてる?」  
「……!?」  
思わず咽せそうになり、口の中のお茶を飲み込む。  
質問の意図は計りかねるが、もちろん忘れるわけもない。  
「ああ、今でもあの時のガハラさんのセリフを全部そらで言えるくらい覚えてるぜ」  
「……それはそれで引くけど、まあいいわ」  
戦場ヶ原はすっと立ち上がって僕の横にすとんと腰を下ろす。  
その行動に僕はどきりとする。  
「じゃあ阿良々木くんにあげられるものの話も覚えているかしら?」  
「……ああ」  
勉強、後輩、父親、そして思い出の星空。  
どれひとつ取っても素晴らしいものだ。  
「まだあるでしょう?」  
「毒舌や暴言……?」  
「そうじゃなくて」  
僕はごくりと固唾を飲む。  
 
「戦場ヶ原自身の、肉体……」  
その言葉に戦場ヶ原は答えず、そっと僕の肩に頭を乗せてもたれかかってくる。  
僕の心拍数は一気に跳ね上がった。  
「せ、戦場ヶ原?」  
「せっかくの阿良々木くんの誕生日なのだけれども、私にあげられるものはもうそれしかないのよ」  
戦場ヶ原は頭をあげて僕の前に立つ。  
その顔は無表情で何を考えているか読み取れない。  
「僕の誕生日、知っていたのか」  
「もちろんよ……ねえ阿良々木くん、こんなので良かったらプレゼントとして受け取ってくれるかしら?」  
戦場ヶ原は自分の服に手をかけ、脱ぎ捨てて下着姿になる。  
そのままブラに手を伸ばしたところで僕も立ち上がり、戦場ヶ原を抱き寄せた。  
戦場ヶ原も抵抗はせず、僕の背中に手を回す。  
「嬉しいよ、嬉しいけど……おまえは大丈夫なのか?」  
「わからないわ」  
僕の問いに戦場ヶ原は腕に力を込めながら答えた。  
「でも、優しくしてくれるんでしょう?」  
「…………できる限りは」  
「じゃあ大丈夫よ」  
戦場ヶ原は身体を離し、そのまま横になる。  
「お誕生日おめでとう阿良々木くん。私は、戦場ヶ原ひたぎはあなたのものになります」  
「ああ、戦場ヶ原、お前は今からずっと僕のものだ。誰にも渡さない」  
僕は戦場ヶ原の身体に覆い被さり、唇を合わせる。  
いつもみたいな触れ合うだけのキスではない、舌を絡めて唾液をすすり合う激しいディープキス。  
お互いの唇を貪り、離れた時には息が切れて唾液の糸が引く。  
戦場ヶ原の目が虚ろになっており、頬はすっかり上気していた。  
僕も似たようなものだろう。  
ブラのホックに指を伸ばして外し、その形の良い胸が露わになる。  
「……触るよ」  
戦場ヶ原が無言で頷いたのを確認し、僕はその柔らかい胸に触れる。  
自分の理性が暴走しないように、戦場ヶ原が不快にならないように優しく。  
だけど気持ち良くなってくれる程度には強く。  
撫でて、揉んで、摘まんで、舐めて、くわえて、吸って。  
拙い知識を総動員させ、ありとあらゆる方法で愛撫した。  
時々戦場ヶ原の甘い吐息や声に興奮しつつも自信を得、たっぷりと時間をかけて愛する。  
僕が顔をあげたとき、戦場ヶ原はすっかりふにゃふにゃになっていた。  
「戦場ヶ原、まだ怖い?」  
戦場ヶ原はふるふると首を振る。  
そして僕の服を掴みながら言った。  
「阿良々木くんも脱いで。もっと、もっともっと阿良々木くんに触ってほしい、阿良々木くんを感じたい、阿良々木くんと触れ合いたい」  
 
その言葉に僕は素早く服を脱ぎさり、トランクス一枚になる。  
そのまま再び戦場ヶ原の身体に覆い被さった。  
「……あったかい、人の身体ってこんなにも暖かいのね」  
僕の首に腕を回しながらそんな感想を戦場ヶ原はもらす。  
まあ僕の感想の場合は『暖かい』に加えて『柔らかい』が付くんだけども。  
抱き合った体勢のまま僕は戦場ヶ原の身体を撫で回す。  
脇腹から腰、太ももの方へと伸び、下着に手をかけた。  
びくりと戦場ヶ原の身体が震える。  
「戦場ヶ原……脱がしていい?」  
「……ええ」  
腰を浮かして脱がせ易くしてくれ、あっさりと戦場ヶ原は一糸纏わぬ姿になる。  
そこに指を伸ばすと、ぐちゅりとおびただしいまでの愛液が絡んできた。  
「!」  
すごい。  
女が濡れるというのは知識として知っていたけどこんなにまでのものなのか。  
僕は戦場ヶ原の表情を窺いながら手探りで(この場合は指探りか?)感じるところを見つけ出す。  
上の方にある陰核、蜜の源泉、二つの穴の間。様々な箇所を攻め立て、戦場ヶ原は普段聞けないような嬌声を上げながら感じている。  
やがて。  
「ん……あ……ひ……ひんっ!」  
短い悲鳴と共にびくんと身体を震わした。  
え、今のって……。  
「戦場ヶ原、お前いまイったのか?」  
よくよく考えれば全くデリカシーのない僕の言葉に戦場ヶ原はこくんと小さく頷く。  
やべ。  
すっげぇ嬉しい。  
僕は思わず戦場ヶ原の頭を撫でた。  
ちょっと戦場ヶ原は嬉しそうな表情をしたが、すぐに憮然とする。  
「なんで私ばかり気持ち良くなってるのよ……阿良々木くんもさっさと全部脱ぎなさい」  
「いや、戦場ヶ原が気持ち良くなってくれると僕も嬉しいっていうか……まあ」  
促されてトランクスを脱ぐと、びん、と肉棒がそそり立つ。  
それを見た戦場ヶ原の目に一瞬驚きが走った。  
が、嫌悪や恐怖はないようで、それをまじまじと見ている。  
「阿良々木くん」  
「なんだ、戦場ヶ原」  
「私を、あなたの女にしてちょうだい」  
両手両足を広げて僕を誘う戦場ヶ原。  
その間に僕は身体を入れる。  
「その……僕も当然初めてだから上手くできないかもしれないけど、頑張るよ」  
「ええ、遠慮なんかしないで」  
戦場ヶ原を抱き締めながら亀頭を秘口に押し当てる。  
少しずつ腰を進めて先っぽが埋まったところで。  
僕は腰を深く落として一気に奥まで付き入れた。  
「く、う、ううっ!」  
「入ったよ戦場ヶ原っ! 奥まで!」  
「ええ! ええ! 阿良々木くんを感じるわ!」  
 
「大丈夫か、痛くないか!?」  
「痛いけど……大丈夫よ、それ以上に幸せだから」  
戦場ヶ原が僕の頬を撫でる。  
「やっと……やっと阿良々木くんに処女をあげることができたんだもの」  
「戦場ヶ原……ああ、ありがとう、僕も幸せだ。最高の誕生日プレゼントだよ」  
だけど僕の言葉に戦場ヶ原は首を振る。  
「まだよ、男の人にはもっと気持ちいい瞬間があるでしょう?」  
「え……?」  
それって……。  
僕の頭が回る前に戦場ヶ原が僕の頭を引き寄せて耳元で囁く。  
「動いて……このまま中に出してちょうだい」  
「……!」  
ヤバい、今のセリフだけでイきそうだった!  
ていうか。  
「……いいのか?」  
「ええ、今日は大丈夫な日だから」  
「いや、そうじゃなくてお前の痛みとかなんだけれども」  
「気にしないで」  
「いやいや、そんなわけにいくかよ」  
「お願いよ……阿良々木くんには私の身体で気持ち良くなってほしいの」  
「戦場ヶ原……」  
女の子にここまで言わせてしまうなんてな。  
僕は覚悟を決める。  
「じゃあ動くよ」  
「ええ」  
「お前が痛いって言っても僕は止めないぞ」  
「いいわ」  
「あとで嫌だって言っても僕は絶対お前の中で出すからな」  
「好きなだけ、たくさん私の中で射精してちょうだい」  
「愛しているよ、ひたぎ」  
「愛しているわ、暦」  
僕は戦場ヶ原の腰を掴み、身体を揺すり始める。  
戦場ヶ原の中はすごく気持ちいい。  
熱くて。  
きつくて。  
柔らかくて。  
さっきから何度もイきそうになるのをこらえていた。  
だけど溜まりに溜まった射精への欲求は抑えきれず、あっさりと僕は爆発してしまう。  
「ひたぎ、ひたぎ、ひたぎ、ひたぎぃっ!」  
僕は幾度となく恋人の名前を呼び続け、有らん限りの力で恋人の子宮口を亀頭で叩き、ありったけの精液を恋人の膣内に注ぎ込んだのだった。  
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・  
今回の後日談。  
結局一回では飽きたらず、僕たちは一晩中愛し合った。  
ていうか快感にも目覚めた戦場ヶ原が幾度も求めてきたのだが、まあ僕も悪い気はせずそれに応えた。  
そして妹達の五十を超える不在着信に気付いたのは朝になってからだ。  
こんなにも家に帰りたくないと思ったのは久しぶりである。  
これはまた恒例の『自分探しの旅』に出た方がいいのかもしれない。  
だけど今は。  
この瞬間だけは。  
腕の中の愛しい恋人のぬくもりを感じていよう。  
 
 

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