忍釣り 小ネタ
「机にライトを置いてっと……」
「なんでドーナツを釣竿に結んでおるのじゃ?」
「ちょっと遊ぼうって思ってだな」
「むっ、あるじ様の影が部屋に広がっておる……まさか、儂をドーナツなぞで釣って遊ぶ気なのか!?」
「嫌か?」
「この鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼である儂を釣ろうなどとは…………面白そうじゃの♪」
「お前のその軽さ嫌いじゃないぜっ。じゃあ、潜ってくれ。上から垂らすから。あ、手は使わずに口だけを使えよ」
「おまえ様が言うといやらしいのう」
「いやらしいと思うほうがいやらしいんだよ。では開始」
机に座ってドーナツ垂らしてる構図というのも不思議というかまぬけなもんだ。
そーっと動かしているとたまに影がゆらゆらと水面みたく揺れているのがわかる。
大きく揺れたところでひょいっと釣竿を上げると、忍が魚みたく飛び上がってガチンと歯を鳴らした。
あ、なんか凄いくやしそうにこっちを睨んで沈むのが面白い。
それを何度も繰り返していると業を煮やしたのか忍が副音声っぽい響きで影の中から宣言する。
『あまり舐めるでないぞ。次は絶対食べる!』
ふふふ、僕もコツがわかってきたぜ。きやがれ!
またも影にドーナツを近づけたら所で揺れに合わせて大きく上げた瞬間
「てやっ!」
掛け声とともに忍が水族館のイルカみたく飛び跳ねて前方宙返り―――
見事ドーナツを咥えて勝どきをあげながら
「見おったか!やっふぅぅぅぅぅぅぅぅー!おぐっ!?」
―――机にどごりと嫌な音をたてて頭からぶつかった。
「大丈夫か!忍!」
「んおおおぉ…………」
小さく丸まって頭を抑える忍。
「うーうー……この鉄血にして熱…………なんじゃっけぇ………あたまがわれるようにいたぃよぉ…………」
やべえ色んな意味で目茶目茶可哀相。
ぎゅっとしながら頭を優しく撫でてやるとふわふわ金髪の上からでも熱をもっているのがわかる。
「んぅぅ……」
なでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなでなで
五分ぐらい撫でてあげると、そのせいでもないだろうが熱が引いてきた気も。
「もういいか忍?」
「まだ、痛いのじゃぁ……」
と、忍が訴えてくるのでわりと長い間頭を撫でてあげて釣りは終わったとさ。
なおドーナツは僕と忍とでおいしくいただきました。
終了