それは一月の三十日のことだった。自らに課した義務である、月に二回の神原の部屋
の片付けを終えた僕は、掃除で出た不要品を神原家の庭先を借りて燃やしていた。
「ふう。毎度毎度よくこれだけ散らかせるもんだな。えっと、あと燃やすものは、と」
「なあ、阿良々木先輩」
「なんだよ神原後輩……ってお前! 服はどうした!」
「服は家(うち)だ!」
「ああ、そう言えばもうすぐ節分だったっけ。僕、あれ苦手なんだよな。うちの妹達が毎年
毎年すっごい乗り気でさ、いつも僕が鬼の面かぶって豆ぶつけられる役なんだぜ。まあ
実際、今の僕は半分吸血鬼だから、あながち間違ってるわけじゃないんだけどさ」
「しかし、半分吸血鬼の阿良々木先輩に豆をぶつけたら、やっぱりなにかしらの効果は
あるんだろうか?」
「あー。それは考えたこと無かったな。もしかしたら豆なのにすっげえ痛えとか。本番前
に忍で試してみるか」
「さすがにそれはやめた方がいいと思うぞ、阿良々木先輩。ところで、阿良々木先輩。豆
撒きという言葉はエロいと思うのは私だけだろうか?」
「日本全国探しても、そんなこと考えてんのはお前ぐらいだよ」
「豆撒き……そして恵方巻き……ああっ! 妄想が止まらないぞ! 節分だけに戦場ヶ
原先輩の豆に接吻して、阿良々木先輩の恵方巻きを丸かぶりしたい!」
「豆をぶつけて邪気を払う必要があるのはお前だよ! 神原!」
「いいな。是非、全力を持って豆を私にぶつけてくれ!」
「しまった。ご褒美にしかなってねえ!……で、そろそろ服着ろよ。この冬の最中にそん
な格好で外にいたら、風邪引くぞ」
「うん。そうする」
そうして部屋に戻っていく神原(の引き締まった尻)を見送って、僕は不要品の焼却作
業を再開したのだった。