なでこプール 寝鳥語  
 
夏の日差しも強い最中、一人の男子高校生が市民プールで泳いでいた。  
いや、それははたから見て泳いでいるとはとてもいえないものだった。  
水を掻き分け足をばたつかせているのに進まない。  
息継ぎのため頭を上げようとすれば沈んでしまう。  
フォームが正しいのに上手くいかない。  
でも彼は必死だった。自分の知りうる泳法を全て試してプールを文字通り走破する。  
「暦お兄ちゃんっ頑張って!」  
彼にとって妹のような存在である女の子の応援もむなしく響く。  
彼女に泳ぎを教える予定だった彼は、とある理由があって泳げなくなった自分を認めれず  
泳ぐというよりは沈みながらもプール内を駆け巡っていたのだった。  
 
「くっそぅ……はぁ……はぁ……」  
プールサイドで横になり男子高校生こと阿良々木暦は酸欠にでもなったかのようにぐったりと荒い呼吸を繰り返す。  
暦は撫子のお願いで泳ぎを教えるつもりだったが、流れる水を渡れない  
つまり泳ぐことができない吸血鬼の体質を知らなかった。  
それでも諦めの悪い暦は荒行か修行をしているかのように泳ぎ転び沈み廻り  
自暴自棄に一時間以上もフルタイムで活動した結果、無様にも寝転んだまま動けなくなっていたのだ。  
浮力という物理法則をまともに享受できていない暦にとって、水の中の活動は重い荷物を  
全身に纏って走り回ったかのような負担を与えてしまっていたのだろう。  
(ドラゴンボールの高重力修行をした気分だ……)  
そんな益体もない事を考える暦を心配そうに見ている女の子こと千石撫子は  
市民プールにはあまりにも似つかわしくない水着を着ていた。  
身の一割も隠しきれていない、さながら布というより紐のような形状のビキニ。  
慎ましい両乳房を申し訳程度しかない布面積で隠し紐で繋がっている。  
腰周りは大事なところだけを小さめの布だけで覆っているだけ。  
背後から見ればお尻のほとんど全部が見えてしまう、所謂Tバッグの形をしていた。  
撫子は途中まで暦と一緒に泳いでいたが、本末転倒な事に激しく動けない水着のため  
先にプールから上がり暦を見守って応援をしていたのだった。  
「ごめんなぁ……千石……まさかこんなオチだなんてなぁ……」  
か細い言葉はとても情けない。  
教えるのに乗り気だったというのもあるが、真剣に泳げないのに落ち込んでいた。  
途中で何度も子供に笑われたというのも原因の一つだろう。  
「そんなことないよ!暦お兄ちゃんが撫子のために頑張ってくれたんだもん。かっこよかったよ!」  
含みない調子は本気でそう思ってるのが聞いてとれるほどだが、疲れきった暦を回復させるほどではない。  
「ありがとな。ごめん、悪いけどちょっとだけ休ませてくれ……」  
横になったまま目をつぶる暦。それを聞いた撫子は思い切って  
「そ、そ、そ……それじゃ撫子が膝枕してあげるね!」  
とは言えなかった。  
元々内気な撫子にそこまでの思い切りはないから、せいぜい紐水着を着て見せることぐらいのことしかできない。  
そもそもそれがおかしいのだが逡巡してる間に暦はすぐに眠ってしまった。  
それが分岐点だったであろう事に、当の撫子は知りえるはずもない。  
撫子は暫し暦の寝顔を嬉しそうに見ていたが、濡れた体が気化熱で少し冷えたためにトイレへとたった。  
ある男が撫子の姿を追っているのには気づくこともなく。  
 
数分の後、女子トイレから撫子が出てきて暦の所へ戻る間に男が笑顔で話しかける。  
「お洒落な水着で可愛いね。彼氏寝ちゃってて暇だったら遊ぼうよ」  
撫子は突然話しかけられるなどとは予想もしていなかった。見知らぬ男に俯き萎縮してしまうが辛うじて言葉を返す。  
「……暦お兄ちゃんは……彼氏じゃないです…………」  
小声で返す撫子に畳み掛けるよう男は話しかける。  
「へー兄弟なんだ。仲いいね。彼氏だったら悪いけど、それじゃ一緒に遊んでも大丈夫だよね」  
「暦お兄ちゃんは……お兄ちゃんじゃないけれど……本当のお兄ちゃんみたいな人で…………」  
暦以外の話題なら人見知りして話せなかったと思われるが、暦に関しては口篭もりながらも答えを返していた。  
(つまりお兄ちゃんとやらが好きなんだな)  
男は暦と撫子の関係を推測する。  
「お兄ちゃんに見せたいと思って、色っぽい水着選んだんだ」  
身体への視線を感じた撫子は俯き恥ずかしげに身を捩じらせる。  
男は撫子の内気さと大胆を併せ持つ二面性を見て取って言葉を重ねた。  
「それじゃさ、お兄ちゃんがもっと喜んでくれそうな事を色々教えてあげようか?」  
撫子にとってそれは魔法だった。俯いていた顔を上げて男を見上げる。両者の視線が初めて絡み合う。  
知識が偏った撫子にとって大好きな暦お兄ちゃんに喜んでもらう方法がよくわかっておらず  
紐ビキニにしても暦に褒めてもらったが、それは撫子が嬉しいのであって  
暦自身が撫子の水着姿を見て喜んでくれているかはわからなかった。  
つまり撫子にとってお兄ちゃんが喜びそうな事を知っているかもしれない  
暦お兄ちゃんと同年代と思われる(暦より幾つか上ぐらいの年だろう)  
男の意見を聞けるかもしれないのはこれが初めてだ。  
精一杯の勇気を奮い、男の顔をしっかりと見つめて撫子は答える。  
「暦お兄ちゃんを喜ばせてあげたいです」  
 
撫子はプール建物内監視員詰め所の部屋に連れていかれた。  
軽く冷房が効いた五、六畳ほどの室内には空気で膨らませたプール用と言うより  
風俗で使うような銀色のエアーマットが置いてありこの部屋には、何か別の用途があるのを想像させる。  
大抵の少女ならば個室に男と二人きりというのになんらかの危険を感じてもおかしくはないのだが  
自らの容姿・身体と男の欲望に無自覚な撫子はあまり気にしていない。  
男の視線だけは肌でちらちら感じているのだが頭の中は暦の喜んでくれる笑顔で  
いっぱいになってしまっていてそれどころではないようだった。  
「年と名前聞いていいかな?」  
聞かれ撫子は妄想から立ち直るとおずおずと言った様子で  
「撫子の、名前は、千石撫子で中学二年生です」  
「そっか。よろしくね撫子ちゃん。じゃあ…………」  
男は様々な一般的男性の趣味嗜好を語りつつも質問をし、たどたどしい撫子の言葉から  
暦の人物を聞いて修正し、男の好みそうな行為や話し方など、色々な方法を教えてあげる。  
撫子はそれを真剣に聞き暦とどう接すればいいか話を噛み砕いて理解し納得ているようだ。  
「……でね。俺は喜ばせてあげる事は教えてあげるけど結局撫子ちゃんが  
 そのお兄ちゃんを喜ばせてあげたいって気持ちが大事なんだよね」  
こくこくとオーバーアクション気味に何度も頷く撫子。  
「だから今の撫子ちゃんにもできる一番の方法を教えてあげるよ」  
近くの袋から琥珀色の液体が入った容器を取り出して見せ付ける。  
「オイルローションって言ってね。オイルマッサージって知ってる?  
 そんな風にこれをお兄ちゃんの身体に塗ってあげるといいんだ」  
「そうなんですか?」  
「絶対喜んでくれるよ!」  
断言する男に撫子が満面の笑顔でお礼を言った。  
「ありがとうございます!これで暦お兄ちゃんを……」  
「まって、まって。塗り方にもコツがいるんだ。手本を教えてあげるから  
 そこで顔の下に腕置いてうつ伏せになってよ」  
そう言って撫子の背中に手をあててエアーマットへと導く。  
 
(わわっ……男の人に身体触られてる……!)  
慣れないどころか、ほとんど初めての行為に撫子の頬がみるみる赤く染まっていくのが自分でもわかる。  
肉親との触れ合いや蛇の怪異で暦に助けてもらった時に抱き上げられた事はある。  
けれど大人の男性に触られた経験などあるわけもないし  
暦の時だって全身を襲う苦痛でそんなものを意識できる状態ではなかった。  
「恥ずかしいかもしれないけど、お兄ちゃんに喜んでもらうためだから頑張ろうね」  
慌てる撫子は男の言葉で平静を取り戻し決意を固めなおす。  
そうしてバスタオルが敷いてあるエアーマットに体を横たえた。  
男の下には中学生のとても可愛い少女。しかもほとんど全裸の紐ビキニ。  
白い肌がわずかに日焼けしたのか背中がうっすらと赤らんで生々しいそこへとオイルをゆっくりと垂らしていった。  
「ひゃっ」  
慣れない感覚に声をあげて撫子の肌がオイルで染まっていく。  
「んっ……」  
くすぐったさに少しだけ身震いする撫子。その背中を男がさするように撫で回すとよりくすぐったいのか身じろぎをする。  
「くすぐったい?もうちょっとしたらよくなってくるから頑張ってね」  
「んんっ……はいっ」  
生温いオイルローションが撫子と男の体温に混ぜられて暖かく、さらに肌触りよく撫子の身体へ纏わりついていく。  
(気持ちいい……のかな?)  
今度は脚へとオイルを垂らしあまり肉がついていない細くて可憐な太腿へと手を滑らせる。  
「脚は疲れやすいから、お兄ちゃんにも強くしてあげるといいよ」  
「やぅぅっ!」  
太腿に押し込まれる強い刺激に思わず声をあげる。  
(恥ずかしい、変な声出ちゃった……)  
ビクンと身体が勝手に動いてその度に小さい尻が男の眼下でいやらしく震えていた。  
「お兄ちゃんは泳ぎ疲れてるからきっと気持ちいいよ」  
「はぁ……ぃ……」  
痛みと、それ以上に与えられる快感に撫子は返事もろくにできない。  
そうして今度は指で土を掘り返すようなマッサージから、また優しい愛撫へと変わる。  
「ふっ、あぁっ…………はぁはぁっ……」  
肌がぬるぬるの粘液に覆われて温かい。先ほどの痛みとは相反する刺激に強く息を吐き出した。  
「気持ちいい?」  
「わ、わかり……ませ……んぅっ!」  
手が腿の内側の際どい部分を撫でると感じやすいのか声が漏れる。  
指が上のほうへと滑ると弾力と柔らかさを併せ持つ尻がオイルと指に引っ張られてプルンと震える。  
露出度の高い水着を着た撫子がオイルローションの匂いに混じって汗と女の子らしい体臭を振り撒き  
悶えている様はこの男でなくたって興奮していただろう。  
うつ伏せの撫子からは見えないがすでに男の股間は水着越しからもわかるほどに  
男性を主張していて、十代半ばにも届かない少女の肌を弄くる手は激しさを増していた。  
 
全身に襲い掛かる指先は白い手足を丹念に愛撫して性感を高めていき、背筋を伸ばすよう  
指先が登っているだけの動きですら、ぞくぞくぞくっと撫子の身体へと震えを伴う快感が走った。  
「んっ……ぁ…………」  
撫子の尻が両手の指全部を使って鷲掴みにされる。  
うつ伏せのままの撫子は内から湧き出るものを堪えるよう腕に頭を押し付け息を吐く。  
小さなお尻が強く握られ歪められているというのに撫子は痛みを感じるよりも肉をこねられる快感を強く感じてしまう。  
そうして男の手管に翻弄される中、男が次の指示を出す。  
「それじゃ次は仰向けで」  
素直に体をころんと回した撫子は目に見えて様子が違っていた。  
どこか庇護欲を誘っていた幼い無邪気な相貌は朱に染まって艶を纏っている。  
男を上目遣いで見つめる瞳は快感と期待で潤み次の「マッサージ」をおねだりしてしまっている。  
無言の期待に応え、男は大胆にも淡い膨らみをわずかな布で隠すそこへとオイルを垂らし両の手で擦るよう指を使い始めた。  
「あぅっ!んあっ!…………んっ!」  
撫子が仰け反って強く悲鳴を漏らす。  
成長途上の胸が指に侵入され、健気に反発するのを十の指が獣のように貪りつくす。  
全身を襲う快楽で小さくも硬く主張している乳首を摘み上げられる。  
もはやマッサージとは呼べないその動き。  
しかし撫子はその刺激を待ちかねていたかのよう身を震わせてしまう。  
(マッサージなのに、いやらしいよう…………)  
「ぁっ……んっ…………!」  
爪先で先端を弾かれ出た声は自分の声じゃないみたい。  
そんな疑問も胸をくすぐり弄られて、トロトロのオイルで蕩けてしまっていた。  
「ちょっとごめんね」  
男は撫子の上半身を優しく起こさせその後ろへ腰を下ろし、両手で撫子の胸へ触れる。  
「こっちのほうが気持ちよくしてあげれるから」  
(だ、だきしめられてる……!?)  
撫子はここにきて初めてマッサージじゃない、言わば恋人のような体勢に不安を覚え言葉を発する。  
「……あ、あの!…………ひゃうんっ!」  
がしかし、新たな衝撃で言葉は意味のない悲鳴に塗り替えられてしまった。  
髪に顔を埋めた男に首筋を舐められたのだ。  
「あぅっ…………!」  
湿った舌が触れたとこからぴりぴりとした快感が走る。  
熱い息がうなじに吹きかかり、胸をいやらしく揉みほぐされた。  
「ここ弱いんだ」  
ドクンドクンと心臓が高鳴り、感じたことの無い快感に震える撫子。  
「そんなぁ、ことっ…………ひぅぅ!」  
うなじを舐め上げられ、耳を甘噛みされると嬌声が漏れ出してしまう。  
「かわいいなぁ」  
「あ……っ、やぁ……」  
涙が零れ落ちる頬を唇で拭われる。首を振って些細な抵抗を示す撫子だが  
逞しい腕に囚われて逃げれるはずもない。  
「ふふっ」  
男はむしろ楽しそうに笑うと撫子の頭を腕で抱き抑えながら  
「キスの練習もしないとね」  
 
右肩へと身を乗り出し唇を塞いだ。  
「んぅっっっ……!?」  
(ちゅーされてる……!)  
驚愕に目を見開くが頭は動かせない。それどころか唇を舌で割り開かれ粘膜の交合を強要されている。  
「んっ、あっ……ちゅぶっ、んんっ……」  
ぴちゃぴちゃと湿った音が響く。舌を入れられるなんて初めての事なのに  
口内を隅々までねぶられると蕩けるような快感を感じてしまう。  
「んあっ、んふぅっ……んうぅぅぅっ……!」  
突き入れられた舌が撫子の舌と擦り合わされる。  
その度唾液が混ざる音がぐちょぐちょと頭の中まで響きあう。  
弄られる口内から分泌した唾液を、舌で掬われ吸い出されるとちゅぼっと濁った音が唇から鳴る。  
逆に絡む舌から涎を送り込まれてはこくこくと飲まされてしまう。  
「ベロだして」  
言われるがまま舌をおずおずと突き出すとすぐに唇で啄ばまれ吸い出される。  
「んーっ……んふううんっ……はぁっ…………」  
撫子はおとなしく内気で可愛い少女ではあるのだがその本質は一種享楽的な物なのだろう。  
会ったばかりの男とのキスだというのに与えられる快感に抗し切れず  
粘膜を吸われ擦られしゃぶられる快楽に酔い愛撫に答えてしまっていた。  
(暦お兄ちゃんとの、ちゅーじゃないのに…………でもきもち、い……)  
夢中で舌を動かす撫子の胸を両手で男が責め始める。  
オイルでぬめる胸を弄られ、胸板によりかかりながらうっとりとキスを続ける撫子は  
恋人のような睦まじい行為をしているという自覚もなく、身体中に駆け巡る快楽を享受するばかりだ。  
「んああぁぅっっ……!」  
だから男の右手には気づかなかった。  
プリプリと弾ける胸を弄っていたはずの手が撫子の秘所へと襲いかかって  
少ない布地に隠された無毛のすじを堅い指でなぞられたのだ。  
「やっ、はぁんっっっ!」  
すでに濡れているそこを指が這い回る激感に唇を離し悲鳴を上げる。  
「ダメだよ。キスやめちゃ」  
「んぶぅ……っ!」  
だがまたも唇を塞がれ喘ぎは男に飲み込まれ、撫子はすがるよう必死に舌を擦り合わせ舐め返し続ける。  
「んむぅ……はあっ……ぴちゃっ、んっ、んっ……」  
同時に大きな左手で淡い膨らみを弄られ、右手のほうは幼裂に潜んだ堅い突起を指で摘まれて  
びくんっびくんっと頭から手足の先までもが震え力が入っていく。  
「んーっ……ちゅっ、ふあぁ……」  
唇の端から男と少女の涎が垂れて伝う雫は胸に零れ落ち汗とオイルに混じり合う。  
撫子は三点を男の舌と指先で執拗に責められ続け、ついには陰核を指で挟み擦られながら  
中を引っかかれる衝撃で初めての絶頂を迎えた。  
「ふっ……んぁ、ああぁあぁぁぁっっっっ!!!」  
全身に流れる快楽の電流。男の腕に当てていた手が強く握り締められて  
本当に電流が流れているかのごとく足がつっぱって腰が勝手に浮き上がる。  
腹の奥から溢れ出してとまらない激衝に駆られるまま絶頂の声を上げ続けた。  
 
「あぁ…………はぁっ……はぁ……」  
背後の胸板によりかかったまま荒い息を吐き続ける撫子に男が話しかけた。  
「気持ちよかった?」  
「はぁ……い、きもちよかった、です……んぅ」  
答えたらキスをされてちろちろっと舌でまた触れ合う。男は唇を離すと撫子の右手を取って  
「次は俺のを触って練習しようね」  
水着のに上から膨れ上がったモノを触らせた。  
「ひゃっ!?」  
今までに触れたことのない感覚に悲鳴を上げる。  
「わかる?」  
「お、ちんちん……?」  
撫子は恥ずかしげに答えた。  
「うん、男はここをマッサージしてもらうのが一番嬉しいんだよ」  
手を握られそこに押し付けられる。  
石に触れているかのように硬くてとても熱く、触れてると熱が伝わってるのか顔までも熱くなっていく。  
(男の人の……赤ちゃんを作るための……)  
見てみたくなって撫子は男のほうへ向き直ろうとするとバランスを崩した。  
「わわっ……!」  
「おっと」  
手に力が入らないまま倒れこみ男に支えられる。  
「そっか、イッたばかりだよね」  
「いった…………」  
性知識に乏しい撫子にだって、先ほどのおかしくなってしまいそうなぐらい気持ちがよかった  
衝撃の事だと見当がつく。同時にはしたないほど声をあげた自分を思い出して恥ずかしげに目を伏せた。  
「動けないんじゃしょうがないから、ほら」  
男は撫子を支えながら水着を脱ぎ座ると、自分の腿を枕にするよう仰向けに撫子を寝かせた。  
撫子の眼前には大きく膨らませた肉の塊があって驚きの声をあげそれを見る。  
「わぁ……」  
撫子は嫌悪や驚愕以上に好奇心を感じているようだ。  
近くにあるだけで存在感があって、撫子の手より長く握れないくらい太い。  
プールの匂いに混じった嗅ぎ慣れない独特の生臭い匂いがあって、浅黒くピクピクと血管が浮き出てた先っぽは  
大きく丸い形をしていて穴からとろりとした透明の液が垂れている。  
怪異の体験以来あまり好きではない蛇にも似た形なのに、何故かわからないけれど  
見てるだけで心臓がドキドキと脈打ってときめいてしまう。  
「ここをマッサージできるようになったらお兄ちゃんは凄く喜んでくれるよ」  
「…………あ、……は、はい!」  
数テンポずれた返事を返す撫子だが、マッサージと言われても身体はピリピリと痺れるような  
感覚に囚われたままほとんど動かせない。だから男の方から猛ったものを撫子の唇に近づけた。  
 
「動けないみたいだからお口でしようね。マッサージは手以外でもできるから」  
「ど、どうすればいいのかな……?」  
興味はあるが、やり方がよくわからない。  
「最初はここにキスして」  
(おちんちんにちゅー!?)  
流れから想像できないわけでもないだろうが驚いてしまう。  
「お願い。俺も気持ちよくしてほしい」  
(……うん、お返ししないといけないよね……)  
自分に言い聞かせるような言葉。でもそれは男に触れるための口実を探しているようにも聞こえた。  
逆さまに映る男のモノへとちゅっと音を立ててキスをする。  
棒の中ほどの硬い所に敏感な唇が触れてくすぐったい。  
湯にでも触れているかのような熱い体温が伝わってきてぴくんっと幹が跳ねる。  
これでいいのかなと見上げる撫子に男は言葉をかける。  
「キスしながら舐めて。噛まないようにね」  
眼前にあるモノへと首を少しずつ傾けながらキスを繰り返す。  
「ちゅっ……んっ、ちゅちゅっ…………」  
男は撫子の頭を持つと先端部分を唇に触れさせた。  
仰向けで亀頭にキスをする撫子は男の香りを吸い込むと、とたんに相貌を蕩けさせ赤い舌を覗かせる。  
見せ付ける仕草は撫子の生まれついた艶なのか、男を見上げながら膨らんだカリの部分をちろちろと舐め始める。  
「あむっ……んちゅうっ、ちゅぶぶっ……」  
男の性器に触れ明らかに欲情している撫子は鋭敏な舌で味と形を確かめていく。  
柔らかさと硬さが混じったゴムのような触感。  
変な形をしててすじがあったりぷくりと膨らんでいて、おしっこが出る所を舐めるとピリッとした味がする。  
「れろっれろっ……」  
不思議な形をしたそこをぺろぺろ舐めると汁がどんどん出てくるのが面白い。  
「いいよ……撫子ちゃん……」  
気持ちよさそうな言葉とともに髪を撫でられると撫子もうれしくなって奉仕に熱が入っていく。  
「あむっ、んじゅじゅっ……じゅろっ、んっれおっ……」  
亀頭を唇で挟み、涎をのせて舌を絡めると撫子の口の中で濁った音が響く。  
「さきっぽを吸って」  
指示を聞いて先端を咥えると頬がわずかにすぼまって、唇が内側から亀頭の形に丸く膨らむ。  
酷く熱いそこに舌を触れさせたまま吸い出した。  
「ちゅぶぶっ!……んはっぁ……んっ、じゅじゅじゅっ!」  
撫子がじゅるじゅると吸い出していると男が腰を少し動かし始めた。  
口の中をかき混ぜられながらも唇と舌をぺったりと張り付かせていると男は気持ちよさそうに目を細める。  
撫子は咥えて膨らんでいる頬や首筋を触られると男が喜んでいるのが暖かい手から伝わってくるのを感じていた。  
次に男は腰を引きながら撫子の頭をずらすとじょじょに口内に入っていたものが抜き出されていく。  
「んうううっ……んふうんっ……ちゅぽんっ!」  
亀頭が少女の口内から抜け出た時はどれだけ吸い付いていたのか大きな音が響く。  
幹の中ほどまでが涎でキラキラと光り唇から糸が伝っていた。  
 
(もういいのかな……?)  
撫子は抜き出されたのがちょっとだけ不満で眉を顰めた。  
でもそうではなく男は撫子の頭をエアーベッドに下ろすと腰を上げ身を乗り出す。  
こちらも舐めてほしいと言わんばかりに陰毛で茂っている所を口元に近づけてくるので撫子は躊躇なく口を付けた。  
「んあぁぅ……ぺろっ、んぢゅぢゅっ……んぅっ、じゅじゅっ!」  
袋になっている所を舐めたら丸っこい玉がコロコロとしているのがわかる。  
くすぐったいのか呻く男の声を聞いて唇で皮の部分をマッサージするように食みはじめた。  
(きっと、ここがきもちいいんだよね)  
れろろっと舌だけで転がしたり浮かせたり、もう一つの玉も舐めてみたり。  
含んだまま吸ってあげると、顔は見えないけどあっとかうっとか言ってるのが面白い。  
男に言われずとも撫子は自分で色々と試して唇で舌で男を悦ばせ続ける。  
普通、中学生の少女にはそうできない事だが、撫子は意外とやればできちゃう娘だった。  
(大人の男の人って怖いって思ってたんだけど、この人は怖くないかも…………  
 撫子にぺろぺろされて嬉しそうで、気持ちよさそうで、はあはあ言ってて、なんだかかわいい……)  
喘ぐ男におしゃぶりをしながら目で微笑む。  
(暦お兄ちゃんもぺろぺろしたらこんな風に喜んでくれるのかな…………)  
「んぁんっ……!」  
お兄ちゃんのことを想像してたら突然、胸をぐにゅっと握られた。  
「撫子ちゃんも気持ちよくしてあげる」  
玉袋までも舐めてくれるお返しに男が触れると感じやすい撫子はつい舌が止まってしまう。  
「ふぁっ……!」  
男は仰向けの撫子が舌を伸ばしたまま奉仕を止めたので、口に先端を挿入してから胸を弄び始める。  
「んーーっ!…………んうっ!!んんぅぅっ……」  
胸に指が押し込まれると吐息と喘ぎを吐き出して身をよじってしまい  
ぺろぺろしたり吸ったりしたいけど、揉みしだかれてるのが気持ちがよくて上手くできない。  
「撫子ちゃんの口狭くていいよ……!」  
喘ぐ事しかできなくて、されるがまま口の中をぐちゃぐちゃにされ  
二つの乳首をきゅっと摘み上げられるとぞくぞくっと身体全部に電気が走る。  
気付けば撫子は高まっていく身体の欲求のままに空腰を使い自慰を始めていた。  
つぷっと指が愛液で濡れながら無毛の谷に沈んでいく。  
咥えこんだそこが自分の意思とは関係なく指を締め付けてしまい歓喜の声をあげる。  
「あああああぁっ…………!んっじゅっ……んふうぅぅんっっ…………」  
男に口を犯され胸を弄ばれながら撫子が思うのは一つの事。  
(きもち、いい…………!)  
唇を割り開かれてぐじゅぐじゅという水音と共に喉をこつんこつんと叩かれるのが気持ちいい。  
大きいとは言えないのに胸を触られて先端をひっぱられているのが気持ちいい。  
男は撫子の痴態に興奮し、撫子は男に求められる事に興奮し、連鎖しながらボルテージを高めあっていく。  
「っ!ふあぁあっっ……!」  
拙い動きで自慰を続けている撫子のそこへと、男は覆いかぶさって一気に咥えた。  
皮を被っている部分を舌で開き小指の先ほどもない小さく、でも硬くなってる陰核を舌で舐められ吸い付かれる。  
膝を曲げた撫子の腰が浮き上がりもっとしてほしいと男に押し付けてしまっていた。  
「んふぅっ、んむっ!!んううぅっ…………!」  
しゃぶりあってる男女の口からじゅるじゅると淫音が響きあい粘膜が触れ合う快感でより激しくなっていく。  
(んぁ、イッちゃうのかな……?)  
撫子は口内に入っているモノが小刻みの動きに変わっていくと、女の本能か男の終わりを感じ取る。  
(撫子も頑張らないと……!)  
感じさせてもらってるお礼とばかりに唇をぎゅっと閉めて吸い上げる。  
シックスナインの体勢のまま二人は咥え吸い尽くされる快感で、同時にイッてしまう。  
「んんぅんんぅんっぅっ……!ちゅるるっっ!んじゅぅっ…………!」  
撫子は絶頂で全身が痙攣するなか、赤ん坊のように男のモノを吸っている。  
熱を持ってどろっとした液体が舌の上に広がっていく。  
「撫子ちゃんっ……飲んでっ!」  
味わったことのない男の体液を言われるがまま吸い付いて嚥下していく。  
自分の中に入っている指と、舌と、おちんちん。全てを感じ取りながらその快感を男へと返していく。  
「んふうんっ、んううぅっ!んぶぅっ…んぅぅっ……ぢゅぼっ……!」  
数秒に満たない幸せな時間を終えると、じゅちゅりとぬめった音を立て  
撫子の唇から唾液と精液とでドロドロになって柔らかくなった肉棒が引き抜かれた。  
 
男は撫子の横に寝転び、二人はしばし身を離したまま呼吸を整えている。  
気だるさとそれ以上の満足感を堪能する男、いまだ全身に流れる微電流に目をつぶって耐える撫子。  
二分ほどの時間がたった頃か、男は向き直り寝ている撫子を抱きしめた。  
「ふぁっ……」  
敏感になってしまってる肌を触られるとそれだけで気持ちがよくて声が漏れる。  
「凄いよかったよ撫子ちゃん」  
嬉しくて微笑む撫子はキスをされて、首、頬、額と次々にキスを繰り返されるとほわっととろけてしまっていた。  
ぼぉっとしていると、お腹と太腿に触れてまたも硬くなっている男の欲に気づいた。  
「撫子ちゃんが可愛すぎて、また大きくなっちゃったよ」  
「え、えっと……」  
すりすりと腰を押し付けられるとお腹の奥がきゅんっと疼くのを感じる。  
「入れていいかな。セックスしよう」  
これ以上ない直接的な言葉。撫子は迷いながらも否定の言葉をたどたどしく呟く。  
「で、でも撫子、初めてだから……初めては暦お兄ちゃんとじゃないと…………」  
「でもさ、一度やっといたほうがいいよ?男によっては処女はめんどくさいって嫌がる奴もいるし」  
「そ、そうなんだ……あ、もし赤ちゃんできちゃったら……」  
「大丈夫、できない方法も教えるからさ。それに撫子ちゃんはお兄ちゃんとの赤ちゃんはほしいでしょ。  
 だからいい作り方も教えてあげる。初心者だから練習しないと」  
「ぁっ……」  
お腹の下の所へと硬いモノがグリグリと押し付けられる。  
「ほら、練習しないとお兄ちゃんとやる時失敗しちゃうかもよ」  
ヌルヌルになってる部分が擦られるのが気持ちいい。確かにこれじゃうまくできないかもしれない。  
「大丈夫。ただの練習だから。覚えたらもっとお兄ちゃんをよくしてあげればいいよ」  
男はしつこくも畳み掛ける。揺れる撫子の瞳を見つめて押しを強くしていく。  
(うまくできたら暦お兄ちゃんは喜んでくれるかな……)  
撫子はそれが男の誘惑と、自分自身への言い訳だというのに気づくことはなく目をつぶり、そっと足を開いた。  
(暦お兄ちゃん……頑張るから撫子のこと……応援しててね)  
大好きなお兄ちゃんを想い浮かべながら身体を男へと明け渡す。  
男は嬉しそうに撫子に正常位の体勢で覆い被さり紐水着をずらす。  
堅く硬く反り上がったモノを濡れたそこへと宛がってぴくっと撫子が動いた所にゆっくりと腰を推し進めていった。  
「んああぁっ……!!!」  
内側から突き進んでくる圧倒的な存在感。押し広げられた膣内の襞が不規則に絡みつき締め付ける。  
「……ああああぁぁっ!」  
二度目の声を上げて、繋がった所から熱と快楽が噴出して全身を侵していく。  
「驚いた。撫子ちゃん初めてでいきなりイッたんだ」  
(いった……でもさっきよりもずっときもちいい…………!?)  
指や舌で触られた時とは比べものにならない快感に襲われて混乱してしまっている。  
「んあああああっぁぁっ…………!」  
戸惑いのまま、動き始めた男の首へとすがりつくように抱き締めた。  
小さな胸が逞しく硬い男の胸板に押し潰されてふにゃりと歪む。  
撫子は上下動に揺らされると乳首が擦れるのが気持ちよくてまた声をあげてしまう。  
腰を使われるたびに快感が全身を走り抜けて、天井の蛍光灯がピカピカと火花のように散って見える。  
本人の意思とは関係なく若い膣内は太い肉で埋められ掘削されているのを喜んで受け入れてしまっていた。  
 
「ああっ!ぅぁっ……!……あ、ああっ……!」  
ぐちょっぐちゅりっぐちゅちゅっと結合部から愛液と唾液と先走りが混じりあう淫音が響く。  
リズミカルな抽送でお腹の奥を突かれるたび艶を帯びた悦びの吐息を吐いた。  
「やばいな。撫子ちゃんの中気持ちよすぎ。練習いらなかったかも」  
快楽に酔いながらもその言葉を聞きとめた撫子は  
(練習しなくていい……?でも、そしたら……)  
終わってしまうのが嫌で男を抱きしめながら、お腹をくねらせてもっと欲しいと訴えた。  
お腹に力を入れるとおちんちんをより強く感じられて気持ちがいい。  
頬擦りをしてちゅーをせがむと優しくキスしてくれるのが気持ちいい。  
もっともっといっぱいして欲しくて撫子は自分からも求めていた。もう練習じゃなかった。  
「んっ……ふぁ……ちゅっ、んんっあっ……」  
男も撫子に答え腰を上げ長いストロークで撫子を犯していく。  
亀頭が入り口まで抜かれるとカリが内側を掻き出していくのに甘く息を吐き  
ずんっと子宮口に当るほどに突かれると足りない何かが埋められていく悦びに嬌声をあげる。  
「撫子ちゃん、ほんとエッチだね」  
ぞくぞくっと胸の奥が震えた。  
「撫子エッチなんだ……」  
呟きはどこか酔いしれているようで。  
「うん。エッチですげー可愛いよ」  
(そうなんだ……撫子、エッチでいやらしい変態さんなんだ…………)  
耳元に囁かれ口元に運ばれた真っ赤な真っ赤な果物。  
(でもしょうがないよね……こんなに気持ちいいんだから、撫子変態さんのほうがいいよ……)  
その果物に唇を付けた。知恵の林檎に齧りついた撫子は罪の欠片をこくりと飲み込んだ。  
いやらしい事をしてると思うと情欲は燃え上がり昂っていき、幼い顔に淫らな微笑を浮かべ欲望を受け入れ堕ちていく。  
「あんっ……!」  
不意に撫子は抱かれ持ち上げられると対面座位の体勢となり男と向き合った。  
胡坐をかく男の上に座り愛し合う体位。撫子自身の体重が繋がった所に直接かかると今まで以上の快感が突き抜ける。  
「ふ、あぁぁっ………………!」  
あまりの快感で男の首に抱きつき体を支えた。  
無意識に膣内をきゅっと締め付けてしまい強く密着するのを感じて  
みちみちと膣内で猛って脈動する塊がお腹の奥を突き上げていく。  
「ほら、撫子ちゃんも動いて」  
「ぅぅっ、ん……は、ぃ…………」  
悦びの涙を流し快楽に囚われながらも身体を上下に揺らし気持ちいい所を自分で見つけてそこを重点的にくっつけあう。  
腰を上げるとお腹に力が勝手に入ってぐにぐにと締め付けてしまっていた。  
さながら男に跨ってロデオを踊っているようだ。  
「ふあ、んぅ……き、もちいい…………」  
大胆にも身体をくねらせて快楽を貪っている撫子。男のほうも腰をリズミカルに突き上げ撫子の中を味わっている。  
「んんぅっ……ちゅっ、ぁっ…………」  
撫子はもうセックスという麻薬に溺れていた。男に愛される悦びに沈み込んでしまっていた。  
「……撫子ちゃん、中で出すよ」  
「いいよ……撫子のお腹の中に出して…………」  
甘えるように頬擦りして承諾した。  
撫子は愛撫するように両手の指を男の指に絡ませ手を繋ぎキスをする。  
注がれる涎をこくこくと飲むと甘さすら感じて美味しい。  
リズムを合わせて身体を上下させるとさっきよりもずっとずっと気持ちがいい。  
手も唇もお腹も抱き合う事も感じてしまって、撫子は高まる快感で達しようとしていた。  
繋いだ指が強く握り締められ、頭の中は快楽でぼやけて視界が白く染まっていく。  
ドクンドクンと大きく震えているモノで子宮まで届けと突き上げられた瞬間、撫子の中で爆発した。  
「あ゙あ゙ああああああぁぁぁぁっっ!!!!」  
精液が迸り膣内が熱く灼かれていく快感。  
首を大きく仰け反らせて声が枯れんばかりに絶頂の悲鳴をあげる。  
子宮口へと先端を当てられた亀頭は、びくびくと痙攣して白濁液をなおも撃ち出し射精が連続して続く。  
「んあっっ!あっ、あっ!つぅっ!な、なでこの中にいっぱい、いっぱいでてるようっ!」  
一度目の咥内射精を遥かに上回る勢い。  
注がれた熱い濁流で体内を満たされていくと、全身が湯だって溶けてしまいそう。  
撫子は子宮の中まで埋め尽くす快感で、蕩けるほど幸せそうに微笑み輝いていた。  
 
 
 
 
そこで僕は目を覚ました。  
千石撫子のありえない、ありえるはずのない痴態の数々を頭の中のフィルムに何枚も何枚も焼き付けて目を覚ました。  
太陽もまだ高く夏まっさかりだというのに流れる冷や汗はぞっとするほどに僕の身体を冷やしていた。  
「……ありえねえ。…………ありえねえ」  
二度呟く。  
口ではなんとも言いがたい、はっきり言えば考えたくもない夢の中の光景に恐怖すら覚えていた。  
僕自身が千石の交友関係に口を出すつもりはないのだがそれにしてもこれはないだろう。あってはならないだろう。  
もちろん単なる夢の出来事だと言うのはわかっていた。  
だけれど、千石の全裸みたいな水着を見た僕自身のよからぬ妄想だと思うと罪悪感と一緒に怒りすら感じてしまう。  
「大丈夫?暦お兄ちゃん」  
汗をかいた額に柔らかいタオルが押し当てられた。  
「あ、ああぁ……千石いたんだな」  
間が抜けているというか千石が近くにいることにすら僕は気付かなかったらしい。  
「うん、ずっといたよ!」  
千石が汗を拭ってくれるのが気持ちがいい。  
「暦お兄ちゃん、眠ってたんだけど、うなされてた。それに顔色が悪いし……撫子、暦お兄ちゃんが心配で……」  
腕を握られて千石の胸に抱きしめられる。  
冷え切った身体から千石の体温と小さくも柔らかい胸の感触が伝わってきて酷く暖かい。  
同時になんというか後ろめたい気持ちに襲われてしまう。  
生々しい夢の残滓を目の前の千石に少しだけ感じてしまうなんて。  
「あ、い、いや平気だぞ。それより僕はどのくらい寝てたんだ?」  
腕をそれとなく離して動揺を押し隠そうとする。  
「えっとね、一時間半ぐらいかな」  
そんなにも寝てたのか…… じゃあそれだけの時間があれば千石は……  
いやいや、んなわけない。寝てただけの僕を心配してくれる  
千石に限って夢みたいな事が起きるはずがないし起こすはずもない。  
あまりのショックで僕はどうにかしてるんだろうな。  
そう決定づける必要もない、単純な事実を適当に頭のどこかに放り捨てた。  
「泳ぎは教えれなかったけどさ、お詫びって言っちゃなんだけどまだ明るいしどこか遊びに行こうぜ」  
こういう時、即座に新しいプランが浮かべばいいのだが生憎と僕はお出かけポイントには詳しくない。  
「わあ!じゃあ撫子、暦お兄ちゃんと行きたい所あるんだ!」  
凄く嬉しそうに笑う顔は輝いている。  
もちろん夢の中で見た中学生とは思えないエッチな微笑みとは違う。  
うーん、まだ引きずってしまうな。ブレスレットして頭を切り替えないと。  
ふと気付くと千石は大きめの袋を持っていた。こんな袋持ってきてたっけ?中にはなにやら銀色をしたものが見える。  
「撫子頑張るから」  
「うん、頑張るのはいいことだな」  
何を頑張るかはわからないけれど、千石がそう言うのなら僕は応援するだけだ。  
「……頑張ったから」  
教えてあげる……その身体に  
ん?  
小さく呟いてよく聞こえなかった。  
ただ千石の瞳は決意と僕にはわからない感情でギラギラと輝いているように見えた。  
それは、まるで蛇でも簡単に捕らえて食べてしまう猛禽類にも似ている輝きで―――――――  
 
 

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