・暦と翼が付き合っているifストーリーです  
・翼視点  
 
 
 
 
 
 
 今日は阿良々木くんの家にお泊まり。  
 胸の動悸が苦しい。  
 緊張しているのが自分でもはっきりとわかる。  
 別に宿泊が初めてってわけでもないし、他に誰も阿良々木家にいないからというわけでもない。  
 私たちはすでに肉体関係も持ってしまっているが、もう一歩。  
 もう一歩だけ進むためにちょっとした決心を今日はしたのだ。  
 忘れ物がないかをチェックして羽川家を出る。  
 阿良々木くんの家まで少し距離があるが、バスを使うほどでもない。ここ数ヶ月の思い出を反芻しながら歩く。  
 春休みに親しくなって。進級したら同じクラスになって。  
 そしてGW前。  
 しばらく阿良々木くんに会えないんだなぁと思ったら切なくなって。思い切って告白してしまった。  
 あの時のポカンとした阿良々木くんの表情はちょっと忘れそうにない。  
 まさか自分が誰かに好かれるなんて思ってもいなかったようだ。鈍感にも程がある。私は結構阿良々木くんを意識していたのに。  
 でもそれは私も一緒だったようで、阿良々木くんも何かと私を意識していたらしい。  
 授業中とかに目で追っていたり、ふと気がつくと私のことを考えていたり。  
 だからお付き合いにはあっさりとOKをもらった。  
 『これが恋なのかどうか僕にはわからないけどこんなに一人の女の子が気になるのは初めてだ。こんな僕なんかで良かったら』なんて言って。  
 阿良々木くんでいい、じゃない。  
 阿良々木くんがいい、の。  
 思わずそう叫ぶと、阿良々木くんは照れたように頬をかき、これからよろしく、って言ってきた。  
 その瞬間。  
 私の心の中で何かが起こった。  
 憑き物が消えたような。つかえが取れたような。ストレスが霧散したような。  
 なんだか上手く説明できないけどすごくスッキリした感じだ。  
 心が軽くなってついつい笑顔になり、それを見た阿良々木くんがますます照れる。  
 それからも阿良々木くんは色んなことに巻き込まれたり首を突っ込んだり。  
 その過程で女の子に好かれたり。  
 怪我をして忍野さんに呆れられたり。  
 そういえば忍野さん、私たちが付き合うと聞いたときに気になることを言っていたっけ?  
 『それは良かったよ。色んな意味でね』って。  
 何だろう? 私たちが付き合わなかったら不都合でもあったのかな?  
 
 例えば阿良々木くんを他の女の子に取られて私が嫉妬のあまり怪異化したり…………なんてね。ないない。  
 おっと。そろそろ阿良々木家が近いはず。  
 初体験は阿良々木くんの部屋になるかなあとか最初は思っていたけど。  
 まさか教室でなんて思いも寄らなかったっけ。まあ体育倉庫よりはマシかな?  
 阿良々木くんは初めてで上手くできないかもとか言ってたけど。すごく優しくて、充分に私を満足させてくれた。  
 この辺あんまり詳しく思い出すと変な気分になるから深く考えないようにしないと。  
 ……到着。  
 一度深呼吸をしてから呼び鈴を鳴らす。  
「いらっしゃい」  
「お邪魔します」  
 すぐに出て来てお決まりの挨拶をする阿良々木くんに笑顔で返す。  
 部屋に通された私は早速参考書を取り出した。  
 『羽川と同じ大学なんて無理かもしれないけどさ、挑戦するだけなら構わないだろ?』とか。  
 そんなことを言われて進路の選択肢にあった【世界を見て回りたい】は一瞬で消えた。  
 もともと直江津高校に入るだけの才能を持っていた阿良々木くんは順調に成績を上げている。それが我が事のように嬉しい。  
 いや、実際我が事なのかな?  
 同じ大学に行けたら良いわけだし。  
 で。  
 ひと通り今日のノルマをこなして。  
 私の手料理を振る舞って(最近勉強していろいろ覚えた)。  
 居間でテレビを見てのんびりして。  
 その時はやってきた。  
「羽川、抱いていいか?」  
 そっと後ろから抱きついてきた阿良々木くんが耳元で囁いてくる。  
 体温が急上昇したのが自分でもわかった。  
「うん…………あのね」  
 いよいよ決心したセリフを言うときが来たのだ。  
 腰に巻き付いてる阿良々木くんの腕をそっと掴む。  
「きょ、今日は……アレ着けなくて、いいよ」  
「…………え?」  
「だ、だから、その……今日安全日で……大丈夫な日だから」  
「それって……生でしていいってこと?」  
「う、うん」  
「羽川の中で出していいってこと?」  
「……うん」  
 恥ずかしい。  
 はしたない女の子だとか思われないだろうか?  
 そう思って窺った阿良々木くんの反応は。  
「やったあ! ひゃっほう!」  
 だった。  
 な、なんだか凄い喜んでる。  
「そ、そんなに嬉しいの?」  
「当たり前だろうが! 好きな女に中出ししたいってのは男として当然のことだ!」  
 怒られた!  
 好きな女に膣内射精したいのは男として当然だと知らなかっただけで!  
 
 でも。こんなときでも好きな女と言われて嬉しくなっちゃう私もどうなんだろう?  
 阿良々木くんは私を引っ張って自室に連れて行こうとする。  
 待って待って!  
 シャワーくらい浴びさせてよ。  
 おあずけをくらった犬みたいな表情をした阿良々木くんはとぼとぼと階段を上がっていく。  
 なんだか私が悪いみたいじゃない……手早くすませないと。  
 ちなみに阿良々木くんは忍ちゃん(だっけ?)に血を飲ませたばかりで風呂の必要がないらしい。  
 体臭や体重を気にしなくていいその体質は正直ちょっと羨ましいと思う。  
 とても本人を前に言えることじゃないけど。オンナノコは複雑なのだ。  
 シャワーを浴びて寝間着を着て。  
 ドアをノックして阿良々木くんの部屋に入る。  
 私はベッドに座る阿良々木くんの横にちょこんと腰掛けた。  
 肩に手を回してきたのでそのまま阿良々木くんにもたれかかる。  
「羽川、本当にいいのか?」  
 阿良々木くんが確認を取ってくる。ここで頷けば今日は中出し確定だ。  
 一瞬万が一を考えて止めようかとも思ったけど。  
 今までしたくても我慢してきてくれてたのだからさすがにかわいそうだろう。  
 それに私も阿良々木くんを受け止めたい。  
 返事をするかわりに阿良々木くんにキスをする。  
 阿良々木くんは私の後頭部に手を回し、空いた手で服を脱がしていく。  
 あっという間に全裸にされた私は唇を繋げたままベッドに押し倒された。  
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 カーテンの隙間から差す朝日の光で目が覚めた。  
 うーん、ちょっと腰が痛い。昨晩頑張りすぎちゃったかも。  
 阿良々木くんてば容赦なく攻めてくるんだもん…………気持ち良かったけど。  
 中出し。クセになっちゃったらどうしようかな……?  
 で、その阿良々木くんはというと。  
 私に腕枕をしてくれてたまままだ眠っている。  
 今日は学校も休みだし、火憐ちゃんたちが帰るのも早くて夕方前らしいし、たまには寝坊助さんも悪くないかな。  
 阿良々木くんの頬に軽くキスして私は二度寝に入る。  
 阿良々木くん。  
 
 大好き。  
 
 
 

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