流石に下を脱がそうとすると、今までの正座の様な体勢では無理があったので、  
 私は足を伸ばして座り直した。  
 間もなく私は阿良々木先輩の手によって、下半身は下着一枚にされてしまう。  
 
「……ん? どうしたのだ阿良々木先輩」  
「いや……なんて言うかホント綺麗だな。んっ」  
「ひぁっ」  
 
 一瞬惚けていたかと思ったら、阿良々木先輩は何の前触れもなく太ももに口づけてきた。  
 そのまま右足に抱きつかれて、内もも、膝の裏、脹ら脛と段々と足の先端に向かって、唇や舌で撫でられる。  
 
「ひゃあっ、何だかくすぐったいぞ阿良々木先輩」  
「悪い、ちょっとの間我慢してくれ」  
 
 その愛撫と呼ぶにはもどかしすぎる阿良々木先輩の行為は、  
 今の私には焦らし以外の何物でも無かった。  
 
「靴下脱がすぞ?」  
「え、嘘。ひっ!」  
 
 阿良々木先輩は私の返事も待たずに靴下を私の足から脱がすと、  
 なんとそのまま足の指を口に含んだ。  
 
「や、止めてくれ阿良々木先輩っ! 流石にそこは汚い!」  
「そんなことねーって」  
「ふっ――」  
 
 阿良々木先輩の舌が、右足の親指と人差し指の間を這った時、思わず息が止まるかと思った。  
 止めてくれ。そんな風に優しくしないでくれ。  
 さっき胸にした乱暴な愛撫が嘘のように、優しく残酷に足を責めてくる阿良々木先輩。  
 尊敬し、敬愛する阿良々木先輩に、足の指を舐められている。  
 その申し訳なさとも背徳感とも言えない感覚のせいで、  
 くすぐったいだけの筈なのに、身体がさらに熱くなってしまう。  
 
「そんな足ばかりしないでくれっ、阿良々木先輩……」  
「駄目か? お前の足すっげえ魅力的だぜ? 神原」  
「そんな事を言われても、この場合女子としてはあまり嬉しくないぞ……あんっ」  
 
 まあ私は女子である前に神原駿河なので、足を褒められるのは悪い気はしないのだけれど。  
 右足にしたのとは逆に、左足への愛撫は足の先から段々と上に登ってきた。  
 
「はあ、はあ……っ、阿良々木先輩っ」  
 
 錯覚かもしれないが、その左足への愛撫は、右足に対するそれより、さらに丁寧でもどかしく、  
 阿良々木先輩の唇がうちももに達するころには、私は完全に息が上がってしまっていた。  
 
「何でお前そんな肩で息してるんだ? そんなにくすぐったかったか?」  
「何でって……はあ、阿良々木先輩は本当に阿良々木先輩だな」  
 
 なんだそりゃ、なんて言いながら阿良々木先輩は私の最後の下着に手をかける。  
 少しくらい抵抗した方が、阿良々木先輩は興奮するのかな、なんて思ったけれど、  
 とてももうそんな気力は無い。  
 
「脱がすぞ?」  
「ああ、もう好きにしてくれ」  
「何でそんな投げやりなんだよ」  
 
 下着が引っ張られ、下腹部が外気にさらされていく。  
 同時に、布地が私のあそこから離れる時の感触で、もう既に酷く濡れている事を自覚した。  
 
「神原、今お前すげーやらしいぞ」  
「いつもは変態と言われて喜ぶ私だが、今この瞬間の阿良々木先輩にだけはそう思われたくないな」  
「いや濡れてるとかそういう話じゃなくて、下半身だけ裸で上半身ははだけてるだけっていうのが、すっごいエロい。理性無くしそうかも」  
「だから、それも阿良々木先輩がさせたことだろうに……ふああっん!」  
「うわっ、ごめん」  
 
 前触れ無く阿良々木先輩が私のそこに触れてきたので、思わず大きな声が出てしまう。  
 さっきまで焦らされ続けたせいで、私の身体は完全に発情しきってしまっていたようだ。  
 
「大丈夫か、神原?」  
「大丈夫だから、もっと……あっ――んんぁぁああっ」  
 
 暫く指で入り口の辺りをなぞったかと思うと、先ほど同様阿良々木先輩は私のそこに顔をよせ、唇や舌で触れてきた。  
 
「ふあああっ、ああああっ、あああああっ」  
「神原、流石にちょっと声押さえてく――んぷ」  
 
 あまりに気持良かったので、広げて伸ばしていた足を胡座をかくように折り曲げ、  
 阿良々木先輩の頭を股間に押しつける。  
 何かを言いかけたようだったが、ちゃんと聞こえなかった。  
 
「んー! んーっ!」  
「あ、そこっ。駄目だっあ、ああっ!」  
 
 阿良々木先輩がもがくように顔を動かすたび、鼻が私の敏感な突起を刺激し、  
 さらに高みへと突き上げられる。  
 
「あっあっあっ、あはああっ――」  
 
 そして私はそのままあっさりと、阿良々木先輩の顔に下腹部を押しつけたまま達してしまった。  
 強ばっていた身体から勝手に力が抜けていき、だらしなく四肢を伸ばしてベッドに倒れ込む。  
 暫くお互いの荒い呼吸音が部屋をみたしていた。  
 
「はあ、はあ、お前、なあ」  
「あれ? ……どうして、阿良々木先輩が、そんな風に、肩で息をしているのだ?  
 そんなに、興奮してしまったのか?」  
「お前のせいで満足に息が出来なかったんだ!」  
「成る程、それはすまない。あまりに気持ちよくて我を忘れてしまった」  
「え、うんまあ。それなら良かった」  
「あまりにさっきのが良過ぎて、もう私としては、このまま眠ってしまいたいくらいなのだが」  
「えっ……そんな」  
「冗談だ、冗談だからそんな絶望したみたいな顔をしないでくれ阿良々木先輩」  
 
 あまりのわかりやすさに思わず苦笑がもれる。  
 しかしこれくらいの仕返しはさせて欲しい。  
 それくらい、さっきまでの私は阿良々木先輩に振り回されっぱなしだった。  
 いいようにされていた、と言ってもいいかもしれない。  
 
「全く本当に阿良々木先輩には、どんな場面でもかなう気がしないな」  
「それ、僕じゃなくてお前の台詞なのか?」  
「ああ、私の台詞なのだ」  
 
 阿良々木先輩は何だか釈然としないといった様子だったが、  
 そのまま無防備な私へと覆い被さってきた。  
 
「いくよ、神原」  
 
 コクリと頷く私。  
 そしていよいよ、阿良々木先輩は自分でベルトを外すと、ズボンとパンツを一緒に下ろして、  
 私の前にその下半身を露わにした。  
 ……え。  
 デカっ!  
 いや大きいだろう、大きすぎるだろういくらなんでも。  
 男性の局部の実物を見るのはこれが初めてだったので、そう勝手に錯覚しているだけなのだろうか。  
 それこそアダルトビデオに登場するソレよりも、一回り大きく見えた。  
 ここまで私の方からけしかけておいて今更なのだが、急に恐怖心が膨れあがってくる。  
 エロい事も、痛い事にも、かなりの耐性があると自負する私だが、  
 あれほどの物が、これから私の体内に入ってくるかと思うと、とても平常心ではいられない。  
 思わず身体が再び強ばるのを自覚した。  
 
「神原……」  
 
 不味い、阿良々木先輩に怖がっている事が伝わってしまっただろうか。  
 この先輩は優しすぎるから、やっぱり止めておこうなどと言いかねない。  
 それは嫌だ、心のそこから阿良々木先輩と結ばれたいと思っている。  
 しかしそれでも、身体の震えが止まることは無かった。  
 
「神原、怖いか? いやそりゃ怖いよな」  
 
 ふるふると強がって首を左右に振る。  
 阿良々木先輩はそんな私の髪を優しく撫でながら。  
 
「ごめん神原、ホントはこういう時、年上の威厳でもって、  
 今日は止めとこうとか言うべきなのかもしれないけれど、僕も我慢できない。抱くぞ?」  
 
 優しい声で、そんな酷い事を言った。  
 
「望む所だ阿良々木先輩、私が泣こうが喚こうが、気にせず欲望の丈をぶつけてくれ」  
 
 だから私も、阿良々木先輩の後頭部に手をまわしながら、  
 精一杯の虚勢でもってそれに応える。  
 そしてゆっくりと、阿良々木先輩が入ってきた。  
 
「あっくっ……っ、ううっ」  
 
 間もなく、私のお腹の下を激痛が襲った。  
 食いしばった歯の隙間から、うめき声が漏れる。  
 
「神原」  
 
 再び阿良々木先輩は私の名前を呼ぶと、そのままギュッと私を抱きしめてくれた。  
 
「ごめんな神原、痛いよな」  
 
 そのまま頭を撫でながら頬や目尻に軽いキスをされる。  
 そんな優しさに、別の意味で泣きそうになってしまい、それを誤魔化すようにはにかんだ。  
 
「謝らないでくれ阿良々木先輩。確かに痛いけれども、私は嬉しいんだ」  
「ああ、ありがとう神原。お前の中めちゃくちゃ気もち良い」  
「そうか。それは、何よりだ」  
 
 そして今度はどちらとも無く唇を合わせる。  
 阿良々木先輩がそのまま動かずに、抱きしめたままキスを続けてくれたおかげか、  
 痛みが消えた訳では無かったが、いつの間にか身体の震えは止まっていた。  
 
「ありがとう阿良々木先輩、もう大丈夫だ。動いてくれ」  
「解った、なるべくゆっくり動くから、お前も無理すんなよ」  
 
 正直それからの行為は、どうしても痛みが先行してしまい、私には気持ちが良い物では無かった。  
 けれども抱きしめられ、好きだとささやかれながら、阿良々木先輩の顔が切なげにゆがんでいる様を見ているだけで、とても心が満たされた。  
 私はただただ、幸せだった。  
 
 そのまま私たちは何もせずに抱き合っていたが、流石にそろそろ帰り支度をしないといけない時間になってしまった。  
 
「流石にそろそろ帰り支度をしないとな……ああすまない、大分シーツを汚してしまったようだ」  
「気にすんなっ……てホントに結構血出るものなんだな。  
 僕は気にしないけど、お前これホントに大丈夫なのか?」  
「ああ、まだ違和感はあるが、もう痛みは殆どない」  
「そうか、それは良かった」  
 
 今日はこういう事になるといいなと思って、替えの下着を持ってきておいてよかった。  
 新しい下着を身につけ、服を着直す。  
 阿良々木先輩も乱れた服を整えて、お互いにいつもの2人に戻った。  
 
「ふふっ、ついにしてしまったな、私たち」  
「ついにっていうか、お前としては遅すぎたくらいなんだろ?」  
「そうなのだが、その反面、阿良々木先輩の事だから、下手をすると数年何も無くても無理はないな、とも思っていたのだ」  
「流石にそれは僕を見くびりすぎだろ」  
「ああ、そんな私の想像より、とても男らしかったぞ阿良々木先輩。  
 今日ちゃんと改めて認識した」  
 
 そう言ってちょっと拗ねた様子の阿良々木先輩をなだめるよう、  
 ちょっと不意打ち気味にキスをした。  
 少し驚いたように目を見開いた阿良々木先輩は、  
 一瞬遅れて照れくさそうに笑い、そして最後にもう一度、今度はきちんと唇を合わせた。  
 早く帰らないといけなかったというのに、その最後のキスは結局、  
 火憐ちゃんと月火ちゃんが帰ってくるまで、30分程続けられるた。  
 
 

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