【ある日の電話】  
羽川『留守電聞いたよ、久しぶり、神原さん』  
 
神原『ああ、羽川先輩。電話ありがとうございます。お久しぶりです』  
 
羽川『うん。あ、もう先輩じゃないから「先輩」はつけなくてもいいよ』  
 
神原『そうはいかない。私にとって羽川先輩は何時までたっても羽川先輩だ。  
ところで今、先輩はなにしていらっしゃるのかな?』  
 
羽川『私? 私は今、アマゾンで絶滅危惧種の狐さんの研究と保護を手伝わせてもらってる』  
 
神原『狐? アマゾン?』  
 
羽川『うん。狐。アマゾン』  
 
神原『そ、そうか……さすが羽川先輩だ』  
 
羽川『勘違いしないで、ただ、手伝わせてもらってるだけだから。  
   神原さんこそ、またバスケ再開して大学に特待で行ったんでしょ。すごいじゃない』  
 
神原『うむ。まあ。ブランクはあるが何とかやらせてもらっている』  
 
羽川『……』  
 
神原『……』  
 
羽川『……私から話を振ったほうがいいかな?』  
 
神原『!! いや、それには及ばない……留守電にも入れたが、実は羽川先輩に聞きたい、というか相談事があるのだ』  
羽川『私が答えを出せるかどうかはわからないけど。それでもいいなら、話は聞くよ』  
 
神原『さすが羽川先輩。  
   ………あらかじめ前置きをしておきたいのだが』  
 
羽川『うん』  
 
神原『困ったときにすぐ人を頼ってしまう私の性格が未だに子どものままであることは認めるし、治したいと思う』  
 
羽川『うん』  
 
神原『しかし、だからと言って、座学や本読んだりするだけではいかんともしがたく、実際技術云々でないことで相談せずにはいられなくて』  
 
羽川『うん』  
 
神原『周りの友人に聞こうとも考えて、でも何となく躊躇してしまうというか、もちろん阿良々木先輩や戦場ヶ原先輩になどできるものでなく』  
 
羽川『うん』  
 
神原『ああ、もちろん、羽川先輩ならいいやと思ったのではなく、羽川先輩にならと思ったのであって……その……つまりだな』  
 
羽川『うん』  
 
神原『男女の睦み事、つまり、セックスについての相談なんだが』  
 
羽川『………………』  
 
神原『……やっぱり無理だろうか?』  
 
羽川『い、いや、ちょっと驚いちゃっただけだから。それで、せ、せっくすがどうしたのかな?』  
 
神原『ああ、相談に乗ってくれるか! さすがは羽川先輩。これで百人力、いや千人力だ』  
 
羽川『あの、わ、私も……その、それほど? け、経験ないから、上手く答えられないと思うんだけど』  
 
神原『何をおっしゃるのか、羽川先輩。  
   実を言うと、  
   「羽川すげえよ。エッチな話の質問でもちゃんと答えてくれるんだぜ! もうそれが、僕は、もう!!」  
   と、阿良々木先輩が昔おっしゃっていてな、それで羽川先輩に頼ったのだ』  
 
羽川『…………。そう、阿良々木くんがそんなことをね、ふぅん……』  
 
神原『? 何か不味かっただろうか?』  
 
羽川『ううん、神原さんには関係ないことだから。えと、その聞きたいことの内容ってのは?』  
 
神原『実は私に最近彼氏ができて、まあ、そういうコトもするようになったのだが、  
   その、相手を満足させていることが出来ているか不安、なのだ』  
 
羽川『……相手の人が、しゃ、射精できていないってことかな?』  
 
神原『それは問題ない。ちゃんと私の中でもイッてくれている。』  
 
羽川『そ、そう……ちゃんと避妊してるよね?』  
 
神原『うむ。そこらへんはしっかりしてくれている。  
   「子供を持つにはお前はまだ若い。まだ、な」と言われている。  
   いや、別段、私はいつ子どもを産んでもいいのだけれども』  
 
羽川『じゃあ何が困っているの?』  
 
神原『うむ。ほとんど相手の表情が変わらないのだ。  
   具体的には、眉を寄せたりするくらいで、まったく顔色も変えないし気持よさそうな顔をしてくれない』  
 
羽川『う、うん』  
 
神原『実を言うと、私は結構乱れるタイプなのだが、それに比べて相手がずっと冷静なのだ。もう少し感じてくれてもいいと思う』  
 
羽川『う、うえ!?』  
 
神原『あ、思い出してきたら腹が立ってきた。バックになったらお尻をたたいてくるし。  
   いや、それはいいんだけど。  
   でもせめて、もっと楽しそうに叩いてもらいたい。無表情で叩くのはどうだろうか!』  
 
羽川『あのちょっと、神原さん!?』  
 
神原『正常位になっても、突かれている私があんなにヨダレたらして喘いでいるのに、あの男ときたら、ちょっとニヤけるばかりで!』  
 
羽川『神原さん?神原さーん?』  
 
神原『イクときも腰を押し付けて私を逃がさないくせに、顔はほとんど変わらないし。  
   抜いたあとも今度は指入れてくちゅくちゅしてくるし、って。  
   あ、すまない。興奮しすぎてしまったようだな』  
 
羽川『い、いや、いいんだけど。  
   うーん、聞く限りでは彼氏さんも十分満足しているように思うよ』  
 
神原『そうかな。そうなのかな』  
 
羽川『……ってか十分楽しんでるじゃない……』  
 
神原『ん? なにかおっしゃったか?』  
 
羽川『ううん、なんでもない。  
   ええと……それでももし不安なら、終わったあとにそれとなく聞いてみればいいんじゃない?  
   ピロートークってのはそういうものじゃないかな』  
 
神原『なるほど、その手があったか。  
   じゃあ今夜やってみよう』  
 
羽川『こ、こんや?』  
 
神原『いや、羽川先輩のおかげで自信と方策が見つかった  
   ほんとうに有難うございました』  
 
羽川『……まあ、こんなアドバイスで何かためになったなら私も嬉しいよ。  
   そうだ、ところでお相手はどんな人なの?』  
 
神原『うん?   
   いろいろ事情があるので戦場ヶ原先輩や阿良々木先輩には内緒にして欲しいのだが、  
   貝木泥舟という人だ』  
 
羽川『………………え?』  
    
 
【終わり】  
 
 

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