「大変失礼をしてしまった。まずは謝らせていただこう、阿良々木先輩」  
 神原が頭を下げる。  
 なんだか猿の手の時みたいな既視感を感じた。  
「いや、その前に状況を説明してくれるとありがたいんだけど……ここって学習塾跡だよな?」  
 それもいつも忍野と会っていた場所でなく、レイニーデビルと戦った場所。  
 僕はなんとなく腹周りをさすってしまう。  
 その腹を蹴り破いた張本人は目の前で真摯に謝っているが、僕はさっきまで神原の家にいたのではなかったか?  
 部屋を片付けて飲み物をもらって、しばらくしたら意識が薄くなって気が付いたらここにいた。  
「私のうっかりミスだ、もはや言い訳のしようもない。償いはこの身体で行おう」  
「だから何をしたんだって。それがわからないとそんなに頭を下げられても困る」  
 神原の表情は見えない。  
 下げた頭を起こそうとしても頑なに動かず、そのまま話を続ける。  
「うちで阿良々木先輩に出した飲み物があっただろう?」  
「ああ、暑いからおいしかったぞ」  
「あの中に間違って超強力な媚薬を入れてしまったのだ」  
 …………は?  
「しかも阿良々木先輩が飲み干した後に気付いてな、慌てて解毒剤を入れたものを用意したのだが」  
 強く二杯目を薦めてきたのはそういうことか。  
「これまた間違って超強力短期睡眠薬を入れてしまっていてな」  
「…………」  
「我が家でそんな痴態に及ぶわけにはいかないと思い、ここまで担いで来たのだ」  
 もはや突っ込みどころしかない!  
「もっと色んな対処法があるだろうが! 真摯に謝る姿に何をしていても許そうと思った僕の気持ちを返せ!」  
「いや、許してくれなくともよい。そろそろ効き始める媚薬の効果を、うっかりものの私で解消していただければいいのだ」  
「絶対わざとだろ! 僕は何もしないからな!?」  
「ふふふ、残念だが毎年この日に阿良々木先輩が私とまぐわうのは既に運命づけられているのだ。諦めるがいい」  
「あ? 何を言って……っ!?」  
 そういえば今日の日付は!!  
「そう! 作者の誕生日! もう阿良々木先輩が私と交じわうのに逆らうことはできん!」  
 メタな発言をするな!  
 毎年言ってるこの突っ込みを言う余裕もない。  
 媚薬が効いてくる。  
 作者の毒が回る。  
 心臓の鼓動が速くなる。  
 全身が熱くなる。  
 どうしようもない、狂おしい衝動が襲ってくる。  
 したい。  
 したい。  
 目の前の神原が魅惑的な笑みを浮かべる。  
 
「か、神原……っ」  
「我慢することはないぞ阿良々木先輩。私を好きなようにして構わない」  
 もう。  
 限界だった。  
 僕は神原に飛びかかる。  
「おおっ、随分積極的だな阿良々木先輩……んむっ」  
 揶揄する言葉も無視し、押し倒してその口を塞ぐ。  
 舌を神原の口内にねじ込み、ぐちゅぐちゅとかき回す。  
 身体を揺すってぐいぐいとこすりつけ、神原の柔らかさを味わう。  
「神原っ……神原っ……」  
 僕は名前を呼びながら犬みたいに神原の顔中を舐めまわした。  
 少し身体を離して両手で全身をまさぐる。  
 両胸を揉みしだき、太ももを撫で回し、思いきり抱き締める。  
 そんな行為も僕の高まる劣情にはもどかしくなり、ぐいっと神原のTシャツをブラごと捲り上げた。  
 露わになった胸に顔を寄せて乳首に吸い付く。  
 ジーンズをパンツごと脱がさせ、脚を広げさせて股間に指を這わせる。  
「はうっ……ああ」  
 びくんと神原の身体が震えた。  
 相手の事をほとんど考えない乱暴な愛撫だったが、それでも神原は感じているようだ。  
 乳首はツンと尖り、秘所はぐっしょりと濡れている。  
「神原っ、もう入れるぞ! 好きにしろと言ったのはお前だからな!」  
「ああ! 構わない、阿良々木先輩の、私のいやらしい穴にぶち込んでくれ!」  
 僕はズボンのチャックを下ろして肉棒をさらけ出し、濡れそぼった秘口にあてがう。  
 そのまま勢いよく腰を突き出し、最奥部まで一気に埋めた。  
「入ったっ、入れたぞ神原っ! ドロドロでギチギチのお前の中、僕ので埋めたぞ!」  
「ああ! 私の中、阿良々木先輩のでいっぱいだ! でも、でも!」  
 神原が両腕を僕の首に、両脚を僕の腰に巻き付ける。  
 身体が密着し、それなりに豊かな神原の双丘が二人の間でつぶれた。  
「もっと奥をっ、阿良々木先輩の熱い体液で満たして欲しいっ! いっぱい、いっぱい中に出してほしいっ!」  
「ああ! 言われなくとも!」  
 僕は神原とキスをしながら腰を振り始める。  
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音が響き、快感が全身を襲う。  
 舌をごしごしと擦り合わせながら僕たちはどんどん高みへと駆け上っていった。  
 もう限界が近い。  
「もうすぐ出るっ、出すぞ! 出すぞ! 神原の中に出すぞ! 一番奥で思いっきり射精するぞ!」  
「きて、きてくれ! 私の中で! 精液いっぱい出してくれ!」  
「神原っ、神原っ、出る、出るっ、出っ…………うあああっ! あっ! あっ! あああっ!」  
 
 びゅるびゅるびゅるっと僕はついに射精した。  
 精液が尿道を駆け抜けるたびに僕の身体がびくんびくんと悦楽に打ち震える。  
 神原も僕の精液を放たれるたびに呻き、快感の波に溺れそうになるのをこらえている。  
 そして。  
 長い射精が終わり、すべて神原の中に出し切った僕はそのまま神原の身体にのしかかった。  
「ふう……気持ち良かったぞ阿良々木先輩」  
「…………」  
「どうしたのだ? 余韻に浸っているのか?」  
「……違う。僕が浸っているのは罪悪感と嫌悪感だ」  
 勢い余って最後までしてしまった。  
 いくら媚薬のせいとはいってもなあ……。  
「そうそう阿良々木先輩、媚薬といえばだな」  
「ん?」  
「あれ、威力は抜群だが持続力がなくてな、一回絶頂に達すると効果がなくなってしまうのだ」  
「…………え?」  
「手でも口ででもヌいてしまったらそこで終わりだったのだが……一回で最後までしてくれるとはさすが阿良々木先輩だな!」  
 神原が実に嬉しそうに言う。  
 が、僕はその言葉にますます落ち込んでしまった。  
 くそっ、せめて口でしてもらっていれば!  
「ん? 終わったか?」  
 ガラッと入口のドアが開き、忍が入ってきた。  
 そういや今回も助けてはくれなかったのなこいつ。  
 僕は身体を起こして神原から離れる。  
「その様子じゃと、んぐ……もう薬とやらの効果は切れて、もぐ……おるようじゃな」  
「ドーナツ食いながら話すな」  
 どうせあれで神原に買収されたんだろう。  
 結構な量が忍の持つ袋に入っている。  
 ご丁寧に飲み物まで用意されていた。  
「忍、ちょっとそれ飲ましてくれ。喉が渇いた」  
「ん、ほれ」  
「サンキュ」  
 僕は忍からペットボトルを受け取り、ぐいっとあおる。  
 そして飲み込む瞬間。  
 忍と神原の表情が悪魔のような笑みに変化した。  
「お、おい……これってまさか」  
「お前様も学習せぬのう」  
「今度はちゃんと持続力もあるやつだぞ、阿良々木先輩」  
 二人がいそいそと服を脱ぎ始める。  
 ああ。  
 僕はなんて馬鹿なんだろうか。  
 こんなときに油断してしまうなんて。  
 再び熱くなってくる身体を持て余しながらぼうっとしてくる意識の片隅で、僕は役にも立たない反省をするのだった。  
 
 
 
 

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