「ちょっとそこのヘタレ虫」
「それはひょっとして僕のことか?」
「それ以外に聴こえたかしら」
……うーん、デレたって設定はどこにいったんだろう。たまにこうなんだよな。まあいいや。
「で、なんだよ」
「熱中症って、ゆっくりと言ってみて頂戴」
……ガハラさん、またそんな使い古されたネタを。
別にそんなこと、言わせないでもいつもしてるじゃんか。
ガハラさんは僕をじいっと見つめている。目線をそらせない。
ごまかせそうもない。
「あー、わかったよ。ねっちゅ、んむっ……んーっんー」
「……………………」
……………………
……………………
不意打ちだった。
僕の身体を痛いくらいに抱きしめてくる。この細い腕のどこにそんな力があるんだろう。
あっという間に押し倒されてしまう。
「ぷはっ、いきなりかよ!」
「ごめんなさい。こよみが言い終わるまで我慢ができなかったわ」