日が落ちそうな時刻。悲しげに鳴く蝉の声。少しさみしくなるデートの帰り道。  
「大分涼しくなったなあ」  
「そうね。もう夏も終わりね。まあ、まだまだ残暑は残るでしょうけれど」  
 若草色のワンピース。  
 美しく伸びる腕。モデルのような細い足。健康的な肌が眩しかった。  
 僕は見蕩れているのがバレると恥ずかしいなんて思い、目をそらしてしまう。ま、いまさらなんて思うけれど。  
 赤い自販機が視界に入る。  
「なんか飲むか? 何がいい?」  
 そんな気恥ずかしさをごまかすように。  
「そうね。お茶がいいわ」  
「よし。じゃ僕はコーラにでもするかな」  
「いいわよね太らない体質って」  
「そんな睨むなよ。一口飲むか?」  
 ちょっとの間の後、なぜか戦場ヶ原はうつむき加減になり、恥ずかしがる。  
「い、言っておくけれど、コーラで洗っても赤ちゃんはできちゃうのよ」  
「なんでそんな話になるんだよ」  
「覚えたてエロエロの阿良々木くんのことだから、いつもみたいに、うえっへっへっ。  
下のお口に飲ませてやるぜえ。的なことを言ったのかと思って」  
 邪悪な目で僕をからかう。  
「一度だってそんなこと言ったことねえだろ!」  
「冗談よ。うふふっ。こよみは、ちゃんとしてくれるものね」  
 ガハラさんは、僕の腕にぴっとりとくっつく。心臓がドキドキしているのがわかる。  
それは僕も同じだった。  
「……で、ちゃんとしてくれるのかしら」  
 ひたぎは上目づかいで、照れながら。  
「……ん。じゃ、えっと、ちゃんとしよっか」  
 そんなわけで、今日のデートも、やっぱり帰宅時間が遅くなってしまったのだった。  
 
 

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