「おい」
ベッドで横になっている僕に突然声がかけられた。
緩慢に首を向けると脇で仁王立ちしている忍が目に入る。
「ああ、忍……起きたのか」
「『起きたのか』ではない、一体どうしたというのじゃ」
「なにが、だ?」
「心理状態のことを儂に隠そうとしても無駄なのはお前様が一番わかっておるじゃろうが。起き抜けから無理やりローテンションに引き下げられる儂の身にもなってみよ」
ああ、そうか。
リンクしちゃってるから落ち込んでるのバレるのか。
「いや、何でもないよ。心配してくれてありがとうな忍」
僕の顔を覗き込んでくる忍の頭に手を伸ばし、そっと撫でる。
一瞬忍は相好を崩したが、すぐに真顔に戻って僕の手を払いのけた。
「誤魔化すでない!」
そのままギシッとベッドを軋ませながら僕の身体にのしかかる。
重くはないが、そのプレッシャーに気圧されて僕は無言になった。
「儂は」
ぽつりと忍が呟く。
まっすぐに僕の目を見据えながら真剣に。
「儂はお前様をからかうこともあれば、茶化したりちょっかいを出すこともある」
「…………」
「我が儘を言って困らすことなぞしょっちゅうじゃろう」
「…………」
「それでも」
忍は一度そこで言葉を切る。
次に発する言葉に重みを持たせるために。
「儂はどんなことがあろうとお前様の味方じゃ」
「忍…………」
「じゃから、もっと儂を頼れ。何があっても儂はお前様を裏切ることはない」
忍はそのまま僕の胸に顔を伏せる。
が、その直前に見えた頬に赤みが差していたのは見間違いではないだろう。
僕はそっと忍の背中に腕を回し、きゅっと抱き締めた。
「ありがとうな、忍」
「…………ふん」
しばらくそのままの体勢でいたが、忍がもぞもぞと這い登り、僕と目線を合わせる。
「どうしても言いたくないことなら仕方ない、無理して言う必要もなかろう」
「…………」
「じゃから儂は儂にできることをさせてもらうとしよう」
「え? ……んむっ」
いきなり忍がキスをしてきた。
咄嗟のことで反射的に押しのけようとするが、頭をしっかりと固定されてしまって動けない。
どのくらいそうしていたのかわからないまま時間が過ぎ、ようやく忍は唇を離す。
「突然……何するんだよ?」
「少しは気が紛れるじゃろうかと思ってな。お前様の下らぬ悩みなど儂が忘れさせてやろう」
くっくっと楽しそうな笑みを忍は浮かべる。
再び唇を合わせてきた。
今度は先程のような唇を押し付けるだけのキスではない、ぐちゅぐちゅと舌が絡む音を激しく響かせる濃厚なものだ。
舌を絡め、唾液を啜り、唇を貪る。
次々に流し込まれる忍の唾液を僕は夢中で飲み込んでいく。
「ん、ん…………んむっ!」
その最中、僕の下半身に快感の電流が走る。
忍の手が伸ばされ、ズボン越しに僕の肉棒に触れたのだ。
しばらくそのまま撫で回され、やがて馴れた手付きで脱がされて、ギンギンにそそり立ったモノが取り出されて空気に晒された。
そのままそれを跨ぐように忍は身体の位置を調整し、自らの股間に触れ合わさせる。
『……っ』
呻き声が出そうになるのをこらえたのはどちらか。多分二人ともだろう。
肉棒から伝わる秘所の感覚は確かに濡れそぼっているのを確認できた。
そのまま忍は腰を揺すり、僕たちの性器に刺激を与える。
「んっ……んっ……」
「んう……う……っ」
上はキスをしながら舌を激しく擦り合わせ、下は互いに腰を揺すって性器を激しく擦り合わせた。
もう我慢の限界が近い僕は一瞬だけ唇を離し、叫ぶように忍にそれを伝える。
「忍っ、もう! もう出るっ!」
「良いぞ、出せ! 儂も、イくから! 一緒に!」
僕達は再び唇を合わせ、互いの口内を激しく貪る。
僕は忍の後頭部と背中に、忍は両方とも僕の首に。それぞれ腕を回して強く抱き締め合う。
そして。
ついに僕達は限界に達した。
『〜〜〜〜〜〜〜!!』
互いの口を塞いでいたため、二人とも声にならない声を上げながら絶頂を迎える。
びゅくびゅくと肉棒を震わせながら放たれる精液は二人の腹の間に撒き散らされ、全身を痙攣させる忍は大量の愛液を吹き出して僕の下半身を濡らす。
幾度も襲い来る快感とその余韻に浸り、ようやく唇を離した僕達は大きく息をついた。
「どうじゃ……少しは…………気分転換くらいにはなったか?」
「ああ……ありがとうな、忍」
ふふ、と笑みを浮かべた忍だったが、すぐにそのまま寝入ってしまった。
日も落ちきってないし、まだ眠かったのだろう。僕はそのまま頭を撫でてやる。
眠いのに身体を張って僕を慰めてくれたんだな。
…………こりゃあ落ち込んでた原因がもう一週間も八九寺に会えてないからなんて言いにくくなってしまったかもしれない。