「ふふ、きみ面白いね。キスしちゃいたいくらい」  
「してもいいですよ。なーんて、冗談ですよね」  
「そんなことないよ?」  
え、と振り向く前に頭を両手でがしっと掴まれた。  
「あ、ちょっ…」  
ぼくのとまどいをよそに、春日井さんはにこっと笑う。もちろんひんやりとした、マイナスイオンたっぷりの、あの笑顔。  
「はむっ」  
気づいたときには唇を奪われていた。  
「んっ…」  
「ちゅる、…ちゅぷ、れろっ……ふふ、私、結構キス魔だったり? ちゅ、くちゅ、…んっ」  
脳が痺れるほどの甘美な刺激。ていうかこのひと、キスうますぎ。先日の姫ちゃんとのキスがいかに幼稚だったかがわかる。  
「ちゅ、ふぁ、ちゅるちゅる…」  
甘い匂いが鼻先をくすぐり、行為を助長させる。ぼくも積極的に春日井さんの舌を求めた。  
「ん、いっきー、ちゅぱっ…」  
言葉を紡ぐ余裕を与えないよう、徹底的に、執拗に舌を動かす。  
息遣いが荒くなり、口内を蠢く春日井さんの舌は勢いを増すばかり。あ、やばい。勃ってきた。  
 
「――あ?」  
ぼくはキスを中断した。  
唾液が一筋、ぼくと春日井さんのあいだでつつー、と落ちた。  
「いっきー?」  
視線を下ろすと、春日井さんの手がぼくのモノに触れていた。しなやかな指がさわさわとテントの上をかすかに這う。  
「春日井さん……」  
「してほしいんでしょ? いっきー。ほら、ちんちん勃ってるよ?」  
「わ、春日井さん、トントン小突かないでくださいよっ」  
「あはは、びくんってしたよ今」  
「もう……」  
「さて、いっきー。自分で脱ぐ? それともお姉さんが脱がしてあげよっか?」  
「………」  
このひとは何を言っているんだ。今更そんなこと聞くなんて――答えは決まっているだろう?  
 
「お願いしますっ」  
きっぱりと、堂々と、ぼくは春日井さんに懇願した。  
「素直でよろしい」  
と、ぼくの頭をなでなでする春日井さん。  
まったく、このひとは本当に――ぼくの好みがわかっている。  
「いっきー、立って。ああ、すでに勃っているこのコじゃなくていっきーに言ってるの」  
「あ、はい」  
罰を食らった生徒のように、ぼくは落ち着かない気持ちで春日井さんの目の前に立った。  
春日井さんは膝を着いて、かちゃかちゃとぼくのジーンズのチャックを下ろした。  
「あら…」  
勢いよく飛び出した、ぼくの興奮と緊張の象徴。  
それをまじまじと見つめる春日井さん。恥ずかしい。  
「かわいい」  
クスっと笑い、すでに怒張の限りを尽くしているそれに手を伸ばした。  
「うっ…」  
つい声を上げてしまうほど、春日井さんの手は優しかった。  
「あはは。感じやすいんだね、いっきー」  
「否定は、しませんよ。くっ…」  
春日井さんの細く華奢な指が十本が十本、ぼくの性器の表面を泳ぐように動く。  
気を抜くと昇天しそうな、前戯。  
まだ触られているだけなのに――。  
「なんで、そんなに、その…」  
言葉は続かない。  
戯言を遣う余裕もない。  
ぼくの身体は未知の快感で少し震えていた。  
それを察したのか、春日井さんはぼくに顔を向けて頷いた。大丈夫、と言っているようだった。  
「気持ちいいでしょ? ふふ。それじゃいくよ――」  
 
「ちゅっ…」  
春日井さんは先端に軽くキスをして、ぺろりと真っ赤な舌で舐め始めた。  
「うあ…っ」  
意思とは関係なく仰け反り、呻くぼく。  
気持ちよすぎて壊れそうだ。  
そんなぼくを見て、春日井さんは笑う。  
「かーわいい。れろ…ちゅ、ん……ぺろぺろ…」  
「春日井さん。その、『ぺろぺろ』って声に出すの――」  
「嫌かな? この方が興奮すると思ったけど?」  
「いえ、すごく良いって言いたかったんです」  
「そう。…くちゅ、れろ…ん……」  
「気持ち、いいですよ。春日井さん」  
天井を仰ぐ。  
ぼくは何を言ってるんだろう?  
こんなのは戯言遣いの言葉じゃない――はずだ。  
「あはは。いっきーのちんちん面白いね…ちゅぱっ、びくんびくんしてるよ。えろいなあ」  
楽しげに舐め回す春日井さん。その舌はゆっくり、けれど確実にぼくの急所を攻めてくる。ぼくの反応を一つ一つ観察し、分析しているようだ。さすがは生物学者といったところか。  
 
「いっきー。ちゃんとこっちを見なさい」  
「そんなこと、いわれても…」  
子供のように目をつむるぼく。  
「お姉さんの舐め舐めしているとこ、見てくれないと――」  
と、春日井さんが先端を軽く噛んできた。  
「ちょ、痛いですよっ」  
でも本当は――痛覚を伴う快感は嫌いじゃない。  
「じゃあ見なさいな。ほら、こんなにおっきくしちゃって。ほんと、いっきーはえろい子だねまったく」  
「…すみません――ってなんで謝んなきゃいけないんですか! おっきくしたのは春日井さんですよ!」  
とりあえずツッコミを入れる。それくらいの余裕は出てきたということだ。  
一方、ふうとため息をつく春日井さん。その仕草は半端なく色っぽい。  
「やれやれわたしの所為にするなんて、いっきーはわるい子だ。いっきーはとてもわるい子だ。わるい子には……お仕置きだ。はむっ」  
春日井さんは歌うように言って、口を大きく開け、屹立するぼくの性器を包み込んだ。  
 
「――ううっ!」  
電撃が脳内を抉るように走る。  
咥えられただけでイってしまいそうな衝動に駆られる。  
「んん、ちゅぽっ…ちゅるちゅぽっ………くちゅっ、ん…ちろちろ……ちゅぱっ」  
「ぅあああっ!」  
春日井さんの饒舌(こういう遣い方は普通しないか)に戸惑いを隠せないぼく。  
「ちゅぷっ…んっ………あは、ちゅぽっちゅぽっ……んんっ…ちゅるっ……」  
これほどのフェラを、ぼくは経験したことがない。  
超舌技巧。  
そんな単語が頭に浮かぶ。  
うん。我ながらなかなかのネーミングじゃないか。春日井さんのフェラテクにこそ、相応しい。  
「くちゅっ、およ? ちゅぱ…今、びぃんって跳ねたよ? いっきー、感じてるんだ…んん、ちゅぽっ………くちゅ、ずるっ…」  
「うあああぁ、春日井さんっ。いいです、すごく、気持ちいいですっ」  
「ちゅるちゅぽっ…んふふ……れろ、くちゅ…ちゅる、お姉さんも、ちゅぽ、気持ひよくなってひた、ちゅう…ちゅぱっ………」  
ぼくはやり場のない両手を春日井さんの頭の上に置き、なぜか揉むようになでていた。  
「ふあ?」  
春日井さんは動きを止め、きょとんとした顔でぼくを見上げた。  
「れろ……それ気持ちいい、よ。いっきー…んふふっ」  
意外な反応。春日井さんは妙に少女っぽい笑みを浮かべた。結構、新鮮だった。  
 
「そうですか…ううっ」  
「うん。ごほうびに白いの、ちゅ、あむっ…いっぱい出ひてあげる………ちゅぽちゅぽっ、んん、くぽっ」  
加速する舌技。否、口全体を遣うそれはすでに次のステージへと――春日井さんの新手、激しい吸引がぼくを襲う。  
「んん、ちゅぱちゅぱ…じゅる、んぐっ、ちゅるるぅ……ちゅぽんっ…はぁ、んんっちゅ、ずるるっ……ちゅぽ、こほっ……んーふふ、れろぉ…ちゅるっ………ちゅっぽん」  
「春日井さんっ! ぼく、もうっ」  
ぼくはただ、射精への衝動、欲望を増大させていく。  
何も考えられない。何も考えたくない。  
でも――壊されたい。犯されたい。そう願う。  
春日井春日――目の前で膝を着き、ぼくの下半身に顔をうずめ、妙技をもって僕を悦楽の深淵へと誘う彼女は、笑いながら、続ける。  
「あんっ、ちゅぽちゅぽっ!…ちゅる、ふふっ、いいよいっきー、ちゅぱ、イきたいならイって…じゅる、ね? じゅぽっ……んん、んっ…」  
「うあ、ああ、か、春日井さんっ!ぼくは、ぼくはっ!!」  
そして――  
ぼくは全てを――  
春日井春日に――  
注ぎ込んだっっ!!!!  
「――うあああああぁああぁああああああああああぁぁぁああぁぁ!!!」  
この瞬間――最高の、至高の、至上の達成感と快感がぼくを包む。放心しそうなくらい、気持ちいい。  
 
なかなか放出を止めないぼくのそれは、春日井さんの口内を脈打つように蹂躙し続けている。  
どぴゅっ。どくっ。どっ。どっ。どくんっ!!…ぴゅぴゅう――。  
春日井さんはというと――  
「んぐっ!?」  
目を見開き、そして――  
「ごぽっ!! んん、こぽ、くっ…んぐっ、うぐ、ん、ごくっ…こく…こくっ、んん…」  
味わうように、春日井さんはゆっくりと飲み込んでいく。  
恍惚に似たその表情は初めて見るものだった。とろんとした瞳に、少し赤みがかった頬。綺麗、としか表現できない自分が恨めしい。  
――と。  
春日井さんと目が合う。  
「あ…」  
春日井さんは静かに微笑み、――その口をかぱっと開けるとまだ白いモノがまだ残っていた。  
「んく、こくこくっんく、………ぷはーっ」  
あらかた飲み干したのか、春日井さんは満ち足りた笑みを浮かべた。  
「…あの」  
「いっきー。たまってたのね。たくさん出して…一気に飲み干せなかったよ、もう」  
残念そうに言う春日井さん。口の周りにかすかに付着している精液をれろれろと舐め取っていく。  
「………」  
「ん? どうしたのいっきー」  
瞬間、身体が動いた。  
「!?」  
反転する世界。否、反転したのはぼくかもしれない。  
「いっきー……」  
ぼくは、春日井さんを押し倒していた。  
「……………」  
無言のまま、春日井さんを窺う。  
「……強引な男は結構好き」  
 
「春日井さん………ぼく、たぶん止まりませんよ?」  
「あはは。えろいっきー」  
「その呼称はちょっと…」  
様々なあだ名や別称(あるいは蔑称)を持っているぼくでもさすがにそこまでストレートなのは遠慮したい。  
「ていうかもうちんちん復活してるのね。たいした回復力だ。今すぐお姉さんにぶち込みたくてたまらないって感じだよ」  
春日井さんはぼくの下半身に目を遣った。まあ確かにぼくのペニスは硬度を取り戻し、チョモランマとまでは言わないが、いわゆる一つのタワーを形成していたわけで…。  
――と、春日井さんがぼくの首に腕を掛けてきた。  
「えっと…?」  
「まあそう焦らないで。お姉さんのお願い聞いてくれるかな」  
…こんな艶っぽい声を出されたら、拒否なんてできない。  
ぼくはこくっと頷いた。  
「久しぶりに男の子に熱い抱擁をしてほしいな☆」  
ウインクする春日井さん。  
「…ここで☆を遣うんですね」  
ぼくは自分でもよくわからないことを言って、春日井さんの望み通り、背中に腕を回し――正確には春日井さんの身体を少し浮かせてから、ゆっくりと抱き締めた。  
「あっ……いっきー。……ん…ふっ………あんっ…」  
少し声が震えているような――気のせいか。いや、でも春日井さんがこんな声を出すなんて……感じていると思っていいのだろうか。  
 
「どうですか?」  
「もっと強く」  
「こうですか」  
ぎゅうっ。  
ひょっとして折れるんじゃないかと思うくらいの力を込める。  
しかし、春日井さんの反応は予想外なものだった。  
「あぁ………うん。おっきなちんちんが当たっててちょっと痛いかな」  
「あ、ごめんなさい」  
言われて気づく。ぼくはペニスを春日井さんの太ももに押し付けてしまっていた。スカート越しとはいえ、熱を持った鉄アレイを柔肌に当てていたようなものだ。その痛さは想像に難くない。  
「ん、っしょ…」  
と、慌てて身体をよじるぼく。  
「ん。火傷するくらい熱かったよ」  
という春日井さんはまんざらでもなさそうだった。そして彼女はぼくの頭をなで始めた。  
「好きでしょいっきーなでられるの。最初なでたとき顔ゆるんでたもんね」  
言われて頬がみるみる赤くなっていくことを自覚する。ぼくは誤魔化すように、目の前にある春日井さんの首筋に唇をつけた。  
「ふぁ……あっ」  
白い肌をちゅぅううっと音を立てて吸う。春日井さんの身体がぴくっと反応したのを好機とみて行為を続行する。  
「ちゅ、ちゅう………」  
「くっ……いっきー。んんっ…どこでそんなこと……」  
ぴくぴくっと身体の至るところが痙攣しているのがわかる。ぼくの頭をなでていた両手もいつの間にかぎゅうっとしがみついているし。こうなると春日井さんもかわいいものだ。姫ちゃんと大して変わらない。  
 
「首、弱いんですね」  
春日井さんの首から顎にかけてぺろりと舐めてみる。  
「あぁっ!……もう……くすぐったいよ…んっ……」  
「止めてほしいですか?」  
意地悪な問いだ、と自分でも思う。どうやらぼくにはこういう嗜虐的なところがあるらしい。以前、姫ちゃんにも言われたっけ。まあいいや。  
「あ……んっ…や、あ…」  
「ちゅ、嫌?……じゃあ止めましょうか?」  
なんか……本当に楽しくなってきた。  
春日井さんはぶんぶんと左右に首を振り、  
「や。続けて……お願い」  
と、弱々しく答える。  
ぼくは満足して唾液を首筋にぽたぽたと垂らし、唇を這わせた。  
「それじゃ続けましょう……ちゅう…ちゅちゅ………ちゅぱっ」  
吸うだけでなく、たまにキスをして緩急をつける。ぴくっと反応するたびに吸う位置を変えて弄ぶ。  
「いっきー……んんっ…」  
ふむ。立場は逆転したようだ――と思った、そのときだった。  
春日井さんの胸元に目が留まる。  
乱れたワイシャツのボタンが三つも外れていて、その豊かな胸の谷間がくっきりと見えた。  
「………」  
――ぼくの中でさらなる欲望が目を覚ます。  
どっくん。どっくん。  
鼓動が、聴こえる。それはぼくのものだったか、否、春日井さんのものかもしれない。  
「いっきー。どうしたの?」  
行為を中断させたぼくを不審に思ったのか、春日井さんは「ん?」と訊いてきた。  
「春日井さん…胸、触ってもいいですか?」  
おずおずと、けれど本能に従い正直に尋ねるぼく。春日井さんは一瞬きょとんとなったが、すぐに自分の胸元に目を遣り、察したのか、  
「あらあら。いっきーおっぱい好きなの?」  
と訊き返してきた。  
ぼくは答えない。  
 
「んー。どうしよっかなあ」  
春日井さんはぼくの顔をじいっと見つめて、ふっと笑った。  
「いっきーの頼みだもんね。お姉さんのおっぱい好きにしていいよ」  
と、言葉を聞き終わらないうちにぼくは春日井さんの胸に勢いよく顔をうずめる。  
「やっ……乱暴だよいっきー…そんなに好き?」  
「…………」  
ぼくは答えない。  
今はただ、初めての感触に酔うだけだ。  
例えるなら潰れないマシュマロとか? まあそんな感じ。  
ふにゅふにゅという未知の弾力を確かめつつ、弧を描くように顔を擦り動かす。  
「ちょっ…いっきーっそれはだめっ」  
どうどう、と声に出してぼくの背中をぽんぽん叩く春日井さん。  
もちろんそんなものはお構いなしに行為を続行する。  
――と、そこでぼくは気づく。  
『コレは邪魔だ』と。  
コレとすなわち、言うまでもなく――  
「春日井さんっ!」  
「なあに?」  
ぼくの勢いに気圧されたのか、春日井さんは首を小さく傾げる。  
「脱がしますよ」  
堂々と宣言するぼく。  
ここまではっきりと物事を言い切ったのは、いつ以来だろうか――。  
「いっきー。さっきと目の輝きが違うよ。さっきまで生きた魚の目をしてたってのに。今はなんていうかぎらぎらしてる。うん。でも悪くないかな。いいよ好きにしなさい。お姉さんもいっきーが何をしてくれるのか興味が出てきたからね」  
と、これまた春日井さんが言い終わる前に実行に移すぼく。  
ワイシャツに手を掛け、瞬き一つする前にボタンを全部取っ払う。続いてブラ。これはさすがに瞬き二つ分、動きが止まる。だがその構造を分子レヴェルで理解し、排除に成功する。  
途端、目の前に広がる光景に目を奪われる。  
 
「――っ!!」  
いくら玖渚や姫ちゃんの胸を見たことがあるとはいえ――やはりそこには新世界が広がっていた。  
「………ごくっ」  
これほどとは思っていなかった。  
春日井春日――そのヴォリュームは圧巻の一言、加えて新雪のような白い肌にピンクの突起――恐ろしく形の整った、美乳といってなんら差し支えのない見事なものだった。  
その当の持ち主は、  
「お姉さん脱がされちゃったよあはは」  
と、何だか楽しそうに言った。  
ぼくはもう一度ごくっと唾を飲み込み、ゆっくりと右手で一つ、揉み始めた。  
――むにゅ。ふにふに。  
「あっ…」  
これほどの柔らかさを、ぼくは寡聞にして知らない。  
呼吸が荒くなっているが、そんなことはどうでもいい。  
左手を加え、両手で胸を揉みしだく。  
「んぁ……いっきーもうちょっと…優しく……ね?」  
そのとき――さっき以上の欲望が押し寄せ、ぼくは揉み続けながらその深い谷間に顔をうずめた。  
暖かい。柔らかい。いい匂いがする。ホットミルク、みたいな。  
ぺろりと舐める。  
「やんっ」  
笑うように鳴く春日井さん。  
味はというと、やっぱりミルクだった。もう一舐めしてみよう。  
「ぺろ」  
「ふぁっ…やぁ、もう…」  
感じやすいひとだ。かわいいなあ。  
 
しばしの間、顔をうずめて存分に感触を楽しむ。舐めながらも両手は休むことなく乳房の形を歪ませ続ける。その弾力に対し、飽くという概念は存在しない。  
「…ふ、はあぁん……いっきーぃ…んっ………さきっぽ、も…」  
「さきっぽ……ここですね。じゃ、いただきます」  
さきっぽ、先端、突起――ピンク色の乳首に口をつけた。  
「っつぁ!」  
「れろ……」  
乳首を舌の上で転がす。できるだけ強く。  
「や、やぁ…はぅ……っ」と首を振る春日井さんは少女のように幼く見えた。  
「お願いしたのは春日井さんですよ。ぺろぺろっ………ちゅうっ」  
ぼくは硬くなってきた乳首を唾液で汚し、舐めて、吸って、舐めて、吸ってを繰り返す。同時にもう一方の乳首を親指と人差し指で刺激することを怠らない。  
「あ、あぁっ…んっ…くぅ、いっきー…」  
「れろ……ちゅる…んん………っはあ、おいしいですよ。ちゅぷっ」  
ぼくって実は胸フェチだったのか、と今更ながら自覚する。  
「あ…んっ…んっ……いっきー。……気持ちいい…よ」  
「乳首、こんなに勃ってますしね」  
「ああっ! そんな噛み噛みしないで!…くぅっ」  
「……さっきから思ってたんですけど」  
一旦行為を中断して、春日井さんを見つめる。その顔は火照っていてとても色っぽい。  
「ん。何かな?」  
「春日井さんっていい声してますよね。頭にじわじわ浸透するというか…」  
「えろー」  
と言う春日井さんの表情には少しばかり、照れが見えた。  
「否定はしませんよ。ちゅぷ…」  
乳首を犬のようにぺろぺろと舐める。そして変わらず、ぴくぴくっと反応する春日井さん。  
「んんっ…いっきー」  
突然、春日井さんはぼくの頭を抱くようにして――咄嗟のことで多少驚いたけれど――ぼくの顔をその豊かな胸に押しつけてきた。  
むにゅう、ぎゅううっ――双乳が容赦なくぼくの目と鼻、口を塞ぐ。  
「――っ、んっ…」  
ていうかこのままだと息が、ちょっ、春日井さん!  
声にならず、焦るぼくだがすぐに解放された。  
「ぷはっ!」  
酸素を取り入れ、一安心する。  
「ふうっ。もう、驚きましたよ」  
春日井さんはふふっと笑い、少しためらうように言った。  
「いっきー。そろそろ下の方お願いできるかな?」  
 
「………」  
その言葉の意味を解して、ぼくは頷いた。  
それでは――。  
終焉――クライマックスが近いことを確信したぼくは無言で春日井さんのひらひらしたスカートを脱がし――ってあれ?  
「これ、どうやって脱がせばいいんですか?」  
ぼくはスカートの端を持って訊いた。  
「んー? ああ。ほらここスリットになってるからこのホック外せばすぐに……」  
春日井さんの指導通り、スカートを撤去する。手つきがたどたどしいが、まあ脱がすのは慣れてないしな。  
そして、下着一枚の春日井さんと裸のぼくの出来上がり。  
「――じゃないでしょ。いっきーTシャツ着てるよ」  
「あ」  
そうだった。薄い素材のTシャツなので着ていることを意識していなかった。思えば、下は春日井さんが手際よく脱がしてくれたんだっけ。  
「いっきー。ばんざいして」  
と春日井さんは『ばんざい』のジェスチャーをした。  
「ばんざーい」  
言われた通りに両腕を上げるぼく。  
「うん。よしよしいい子だね」  
春日井さんはぼくのTシャツに手を掛け、手早く脱がしてくれた。こういう、何気に面倒見がよいところがツボなんだよなあ、と思った。  
「さ。いっきー来なさい」  
春日井さんはおいでおいでをするように手を遣り、ぼくを秘部へと誘った。その誘惑を断る気はもちろん、ない。顔をぐぐっと近づける。  
「――うわぁ」  
つい、声を出してしまった。  
春日井さんの下着はぐしょぐしょに濡れていた。尋常じゃない濡れ具合だった。いつからこうだったのかは知らないが、随分我慢していたのではないだろうか。  
「春日井さん。すっごく濡れてますよ」  
と、透けて見えるラインを人差し指でなぞってみた。  
「つうっ!?…っく……んっ」  
身悶えするその様は何ともいじらしい。  
ぼくは新しい玩具を手に入れた子供のように、ショーツの上をなぞったり弄ったり円を描いたりと、色々やってみた。  
「ふあぁっ!…いっきー。もうっ……あっ…」  
「あーあ。こんなに濡らしちゃって…春日井さんはいけないひとですね。これ以上濡らさないためにも脱がしましょうか。ちょっと身体、ぼくに預けてください。いいですか」  
春日井さんを自分の太ももの上に乗せて、ショーツに指を入れてゆっくりと下ろした。  
「あんっ………」  
脱がしただけなのに、この反応。ほんと感じやすいなあ。  
「大丈夫ですか」  
「…うん。ひんやりする」  
と言って、ぼくの目の前にぺたんと座った。  
 
「さてと…」  
ぼくは露わになった秘部に目を遣った。  
……うん。この前見た姫ちゃんのはつるつるだったから比べるわけにはいかないが、春日井さんのはさすが大人の女性、生えそろっていて――そして今は見事に濡れて光っている。  
「いっきー?」  
「いや、綺麗だなと思って」  
「お世辞はいいから早くして」  
オーケイと心の中で返事をして、ぼくは改めて春日井さんの中へと顔を近づけた。  
いい匂いがする。なんとも芳しい。これが春日井さんの匂いか。  
「いっきー。あまりくんくんしないで」  
と春日井さんはぼくのほっぺたに手を添えた。冷たくて心地いい。  
「じゃ、いきます」  
「うん」  
まずは一本、指を挿れてみる。  
「――きゃうっ!?」  
嬌声が上がった。  
「い、痛かったですか!? ごめんなさい」  
ぼくはそっと指を抜いた。それにしてもこんな簡単に入るなんて……。  
「いいよ。続けて」  
そう言う春日井さんの目は潤んでいた。  
再び、挿入。  
くぽぽっ。  
「っくぅ! ふっ、んん…」  
そしてぼくはゆっくりと指を動かし始めた。  
 
ぴちゃぴちゃと、淫靡な音が部屋にこだまする。  
世界が、ぼくと春日井さんで切り取られたような感覚。  
「はぅ、ううっ……ん、ああっ!…そこぉ、いい、いっきー……」  
「ここですか」  
ぬるぬるした突起に触れたぼくの指は加速する。  
「あ、あぁっ…んぐっ……っくぅう、ふっ…あんっ……」  
「あ…」  
なんか、たくさん出てきた。  
「びしょびしょですね。洪水みたい」  
「んっ……いっきーのいじわる…」  
と、ぼくのほっぺたをふにふにする春日井さん。……喜んでる?  
「いっきー舐めてよ」  
「はい?」  
今、なんて?  
「最初…いっきーの舐めてあげたでしょ。今度はいっきーがお姉さんの舐めてよ」  
「了解しましたお姉さま」  
ぺこりと頭を下げ、ぼくはすでに淫汁たっぷりのそこに口をつけた。  
「ひゃうっ…つ、ううっ……ん…」  
くちゅっ。ぴちゃっ。強弱をつけて刺激を与える。  
「ふぁ……いっきー…そこが、いいのっ…」  
言って春日井さんは足をぱたぱたさせる。それを見てぼくの興奮も高まっていく。  
「ちゅる…ぺろ、………じゅるっ」  
「やあぁっ!…ん、あ……っ」  
春日井さんは小刻みに震え続ける。一方、一向に行為を止めようとしないぼく。  
「いっきー…んぁ、だめ、…つうっ、くっ…ううっ……」  
言われてさらに行為を加速。  
「ふあ、ん、やぁ……もうっ……っ」  
絶頂が近い。  
「――っやああぁああああぁああぁぁぁあっっ!!」  
瞬間、春日井さんの叫びとともに堰を切ったように汁が溢れ出した!  
 
「わわっ」  
慌て驚くぼく。けれどそれを口で抑え、飲み込む余裕はあった。  
「ん、ごくっ……こくこくっ…………ふうっ」  
春日井さんは――放出を終えたというのに、目を瞑ってまだ痙攣していた。  
びくっ。びくんっ。  
「あの、大丈夫ですか」  
おそるおそる尋ねる。  
返事はない。  
「春日井さん…?」  
春日井さんはゆっくりと目を開け、ぼくに焦点を合わせて言った。  
「ばか。えっち……」  
涙、だった。初めて見る、春日井さんの涙。  
「うっく……」  
涙が一筋、頬を伝っていく。――ていうか、ぼく泣かしちゃった? ちょっと調子に乗りすぎたかな、と反省する。  
「いっきー」  
「はい」  
「こっち見て」  
顔を上げると、そこにはいつもの春日井さんがいた。  
そして――  
「お姉さんをこんなに濡らしたのはいっきーである。だからいっきーが責任を取るのである。いっきーのちんちんをお姉さんに挿れるのである」  
と、火照った表情で一気にまくしたてた。  
ぼくはほっとして笑う。  
「それ、あのときの言い回しですね」  
あのとき――春日井さんが理澄ちゃんを拾ってきたときの博士口調。  
「いっきーだってもう我慢できないんでしょう? ほらここさっきよりおっきいよ?」  
ぼくのペニスをつんつんする春日井さん。ていうかあんた、さっきまで泣いてたじゃねえかよ。復活早すぎ。  
「ふふっ。びくびくしちゃってかわいいなあ」  
「や、刺激しないでくださいよ。出ちゃいますって」  
「それはだめだよ。ちゃんとお姉さんの中で出してくれないと」  
「……………」  
このひと、マジで最高だよ。  
 
「さ。いっきー。どんな体位でも応じてあげるけど?」  
「そうですね……」  
刹那の逡巡。  
「いっきー?」  
春日井さんは胸の谷間を強調してぼくの顔を覗いてきた。そういうポーズは反則だ。  
「――決めました。春日井さん、こっち来てください」  
ぼくは正座するように少し座り直して、ショーツを脱がしたときと同様に自分の太ももの上に春日井さんを乗せた。…あ、お尻柔らかい。  
「………」  
「………」  
向かい合うぼくと春日井さん。その距離は限りなく零に近い。  
「……あは」  
春日井さんも察してくれたようだ。  
ぼくは春日井さんの背中に腕を回し、抱き締める。春日井さんもぼくにしがみつくように抱きついてきた。  
そしてぼくは、挿入を開始する。  
「んっ……」  
「ふ、ううぅうっ、いっきー…んっ……っ」  
先端がにゅるん、と入った。粘ついた感触がぼくを包み込む。  
 
ずぶずぶ。じゅぷっ。くちゅっ。  
「ぐっ…んんっ…」  
「我慢しないで言ってくださいね」  
と言うぼくもそれほど余裕はない。  
「ん、っく、…いっきーの…熱い……」  
「か、春日井さんの中も、すごく熱いです…」  
焼ける、というより内側から温められるような感じ――だが、それ以上に気持ちいい。  
「……ぁああああっ!」  
びくっと一際大きく跳ねる春日井さん。  
「入った、の? …いっきー」  
「全部、入りましたよ…」  
ふうっと息を吐く。  
「すごい。いっきーの…ちんちん」  
春日井さんが小刻みに震えるたびに、ぼくの目の前で胸がぷるんと揺れる。  
ぼくは抱き締め、その弾力を我がものにする。  
「ん! 春日井さんの、締めつけが…」  
「いっきー。まだ出しちゃだめだよっ」  
言って腰を動かし始める春日井さん。  
「んんっ…」  
 
「うわっ。春日井さん、ぼくも、動きますから、そんな急にっ…」  
「いいから。この体勢ならこうやって上下した方が気持ちいいよ、んっ…んっ……くぅ、あはは、くちゅくちゅ鳴ってるね…いっきー」  
「あ、うあ…」  
あまりの快感に倒れそうな自分に気づく。これは…やばい。意識をしっかり保て、ぼく!  
「んっ、いっきーの、中で…んんっ、ふぁあ、当たってるよう……あうっ…」  
ちゅっぽ。ちゅっぽ。じゅる。ぴちゃぴちゃ。じゅぽじゅぽっ。くちゅっ。  
「えろい音…出てるね。ぁあんっ、…聴こえるいっきー?」  
ピストンを続けながら、春日井さんは訊いてくる。  
「んっぐ、春日井さんっ、ぼく…ううっ…」  
呻くぼく。それを聞いたのか、春日井さんはさらに勢いをつけて加速する。  
「んっ、んっ…はっ、んんっ、いっきー!…気持ち、いいよっ、いっきーっ…はぅっ…」  
「あ、ううっ…」  
ぼくは俯き、目の前でぷるんと揺れる二つの膨らみに顔をうずめることしかできない。  
「くっ、んふふっ…いっきー、かわいいっ、んっ…はぁんっ……っ」  
上下するのはぼくか春日井さんか。あるいは世界そのものが――。  
「くっ…」  
ぼくのペニスが悲鳴を上げているのがわかる。限界が近い。  
「んっ…んっ、いいよ、いっきー、お姉さんもっ……もう、イっちゃう、イっちゃうよう…一緒にイこっ? ねっ?」  
「はいっ、春日井さんっ」  
じゅぽっ。ずぷっ。くぽっ。にゅるっ。ちゅっぽ。じゅるっ。  
「いっきー、んんっ…ふっ、も、もう、だめぇ、イっちゃう、っうう……」  
瞬間――ぼくの中で、弾けた!!  
「―――――――っ!!」  
 
「いやっ、はっ、やああああぁああああああああああぁあああああぁぁあぁああああああああああああぁあああああああああっっっっ!!!」  
どどっ。どくっ。どくっ。どっぴゅ。どぽぽっ。容赦なく春日井さんの中で暴れるぼく。  
「んっ…いっきーのっ、くぅ、熱いよ、精液……」  
春日井さんは震えながらもぼくを抱き締め続けた。  
ようやく、放出が終わり、ぼくのペニスはおとなしくなっていく。ゆっくりと引き抜く。  
「んっ…」  
春日井さんはぼくの太ももに乗っかったまま余韻に浸っている。  
「いっきー。すごかったね。お姉さんイっちゃったよ」  
と、春日井さんは真っ赤な舌を小さく、ちょろっと出した。  
「最後にキスしよっか」  
「はい」  
そして甘い口づけをするぼくと春日井さん。  
 
こうして。  
運命や物語や生死をどうでもいいと思えるようになって、運命や物語や生死を受け流すまでもなくひらりとかわし、当たり前の日常へと――ぼくは埋没していく。  
春日井さんがそこにいてくれるだけでぼくは満足だ。  
春日井さんの隣にずっといようと、ぼくは思った。  
 
≪que sera sera≫is The End.  
 
 
 

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